#247期待リターン

AQRのアンティイルマネンによるファクター運用の教科書と言ってよい期待リターン。ただ期待リターン推定は簡単どころか大変難解な作業である。期待リターンは時間を通じて一定である必要はなく、期待リターンが存在するのは、他の人が負担したくないリスクを負うことでプラスのリターンが得られる、ある程度の非合理性が許されるのであれば、他人のシステマティックな誤りからも期待リターンが得られる(もしくは自分が払う側になる。)という原則からスタートし、Qube上に置かれた、資産クラス、システマティックな戦略に付随するファクター、マクロファクターに付随するファクターのそれぞれからどのような背景でリターンがもたらされる得るのかを最近の論文事例と共に解説している。リターンの源泉を確認し、期待リターン推定という難解であるが先頭に立って行う意義のある作業であることを忘れずに自分自身も取り組み続けていきたい。定期的に立ち返りたい一冊から以下抜粋。

・配当利回りなどのキャリー指標はバリューと重複する情報をもつ

・長期リバーサル指標とは直近の価格が3~5年前の価格と比較して安い資産を買うというものであり、バリュー戦略と実証的に関連を持つのは自然

・バリュー指標に関しては候補なるバリュエーション比率に益回り、純資産株価倍率、配当利回り、キャッシュフロー利回りと様々なな組み合わせ方がある。またそれはリバランスに関しても同様である。

・タイミングに関してオーバーフィッティングのリスクを可能な限り排除するために、モメンタム、事前のバリュースプレッド、季節性、流動性指標は入れるのも良いかもしれない。

・キャリー/ボラティリティ比率で通貨選択をすることでSRが上昇する可能性がある。

・キャリーの収益性は、壊滅的な金融災害に対する保険を売るのにも似た戦略が高いリスクプレミアムに値するという考え方があり、ベータリスクに関連するものである。

・キャリーがあれゆるリスクプレミアムや行動バイアスがうみ過小評価に対する一般的な代替指標となり得る。要求リスクプレミアムに対する我々の感覚と合致することが多い。

・極端なボラティリティ加重方式として、ヒストリカルの参照期間をボラティリティ水準の関数として設定するものもある。(強気相場では長いシグナル、弱気相場では早いシグナルに注目)

・リターンの符号に着目したコンシステンシーも良い指標になり得る

・流動性が低いという特性と、流動性が枯渇する際にアンダーパフォームするという傾向の両方が、高い要求リターンをもたらす。

・長期投資家は非流動性プレミアムを獲得できるという点でおのずと優位な立場にあり、この強みを利用すべきである。このプレミアムが時間と共に変わりうる点には注意すべき。

・流動性指標の代理指標として出来高に対する絶対リターンの比率(リターン/出来高)

・売買回転率や出来高も流動性の代理変数として使われ、過去の売買回転率が高い株式よりも低い株式の方が平均リターンが高いことを示した論文もあるが、継続的な下落局面では売買回転率が低くなる傾向があるため、実行のビッドアスクスプレッドや価格インパクトの推定指標が流動性の代理変数として用いられるようになった。

・流動性ベータが高い株式は低い株式を4ファクターモデル調整後で7.5%のアウトパフォームすることを発見。

・バリュー戦略(モメンタム)と流動性条件との間に明らかな正(負)の関係があることを示している。

・非流動性指標であるILLIQと2状態のレジームスイッチングモデルを用いて高ベータの状態と通常の低ベータの状態の2状態の間で変動することを示した。

・リスクとリターンの正の関係は資産クラス間の長期平均には当てはまるが、資産クラス内では当てはまらない

・上方向のボラティリティが高い株式の将来リターンは著しく低い

・割高なプットオプションは、その後のリターンが低い傾向にある。情報が徐々に伝播するので、完全には株価に織り込まれていない情報がゆっくりと伝わる結果、株価には反映されていなくてもオプション市場で先に反映されている可能性がある。

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