#201 ストーリーとしての競争戦略
持続可能な利益をもたらすと一言に言っても現実的には実に難しいわけであるが、その難しさゆえに参入障壁が築き上げられる。簡単なことではなく、より深い物事への理解と、一見して非合理な戦略こそが、長期的には継続する利益になる二次的な思考をどれくらいの速さと深さでできるかが勝敗を決するのだと思う。本書の考え方はビジネスの面ではもちろん有効になるが、投資をビジネスという側面から考えても示唆が多く得られるないようになっている。
・優れた戦略は全体の動きと流れがいきいきと浮かび上がってくる、ストーリーがあるもの。
・また優れた戦略というのはそれ自体が効いていてワクワクし、モチベートされるものである。
・戦略の一つの本質は、違い、もう一つは、繋がりである。二つ以上の構成要素間の因果関係論理を意味しています。違いも、構造的な差異を作るというのと、非合理の合理によって達成されるものがある。
・ストーリーとは、アクションリストではない、法則ではない、テンプレートではない、ベストプラクティスではない、シミュレーションではない。
・画期的な新製品や、新興市場を狙うだけではない、持続的な差異をどのようにして作っていくのかという問題。
・数字に現れるうらの部分をどのように取りにいくのか、見えるかよりも話せるか、関連要素がどのように絡み合い一つのストーリーへ昇華していくかを見せられることが大切。
・競争戦略の基本論理としては、市場に背を向けたとしても、利益を追求することだが、参入をする業界を決めることがまず何よりも大切。
・JTが医薬品業界に入れたのは潤沢なキャッシュがあったからこそ、長く続く投資期間も持ち堪えることができた。
・利益の第一の源泉は業界構造、その次が戦略によるもの。どちらも必要なのは、儲かりやすい業界にはより多くの参加者が参入してくるため。逆に業界構造が厳しくても、そこで戦略がワークすることがあれば、持続的な利益をあげることができる。
・儲かりそうな業界が見つかったとしても、注目をされないのは、参入障壁の高さ。大きなコストだとか、投資回収をするまでの期間の長さが壁を築くことになる。
・マブチモーターは標準化されたモーターのみを作るという戦略をたてており、低コスト化とユーザーがさらに買うことで累乗で購買頻度が上がっていく。
・業界の競争構造、ポジショニング、差異の構築が相まって、持続的な利益が得られるのである。
・Willingness To Pay - Cost = Profitという非常にシンプルな方程式によって戦略のフォーカスポイントは決定される。
・ストーリーの強さ(構成要素間におけるリンクの多さ)と太さがものをいう
・標準化の手順においても、マブチはまず特殊仕様なものを開発し、そのあとで標準的なものを作成するという道を選んだ。これは強さ
・標準化によって、ジャストインタイムな納品、部品の内製化ができるようになっていった。
・ストーリーの長さは、これが再起的にしょうじ、更なる戦略的優位へと押し上げてくれる状態のことをいう。
・ベネッセを中心としたコミュニティは関係性の束としてのコミュニティを醸成することにある。
・複雑な状況について、どうやってそれをシンプル化するか、そしてそれを面白く語ることができるか。そこがリーダーの腕の見せ所である。
・サウスウェスト航空は、業界としてはコスト構造の非常に厳しい業界にいた。
・サービスの差別化をコスト構造で行うために、短距離便に特化し、機内食を出さない、座席指定をしない、といったSP.
チーム単位の評価報酬、フライトごとのターンチームによるオペレーションを織り交ぜていった。ターンチームにより、生産性が上がり、結果として人件費も下がっていった。
・用意周到な戦略ばかりではなく、場当たり的だとしても、ハプニングからの調整をもとに戦略が強化されることも多くある。その際には、ストーリー全体からしてどのような意義があるのかを考える。
・スターバックスは、あえて時間のかかる組み立てラインをしている。第三の場所を提供するために必要な時間であるから。このコンセプトのもとで、直営店経営も始まった。またクラスタリングというのは、空間を作るという上でも優位に働く。
・一見大きなコストのかかること、一等地への出店、提供スピードの鈍化(忙しい人が来なくなる)、も第3の空間に行くというストーリーへのクリティカルコアになっている。
・コンセプトは人間の本性を見つめるものである必要がある。
・そのためにもコンセプトは自分でじっくり考えなければいけない。骨太のコンセプトを作るためには、自分でやってみて、なぜ喜び、なぜ満足を感じるのかをみないといけない。
・一見して非合理なものこそ、簡単に真似できないし、真似をしようとしないがために、持続的な競争優位の源泉になる
・ただ非合理なだけではダメで、この要素が有機的につながってきて始めて機能し始めるのであるし、ストーリー全体の文脈においては強力な合理性を持他なければいけない。
・アメゾン創業当初は在庫は持たない方が良いという考えであったが、創業後すぐに倉庫こそアマゾン最大の資産という考えに切り替えたのであった。
・バカなと思わせる非合理の要素がありながらも、成功してみると人々がなるほどと頷く。
・優れた戦略を徹底的に分析し、それを構成している要素を手に入れようとすること自体が、追いかけてくる競合他社の側で構成要素の過剰を引き起こし、結果的に戦略不全に陥ります。
・成長戦略は内向きに。これからの機会よりも、これまでの自社戦略とのフィットを優先すること
・キラーパス、一見して非合理であることを行う勇気とそういった風土をもたらすこと
・なぜを突き詰める
・切実なものがあるかどうかが、長く続く戦略になるかどうかを決定づけるのである。