#114分散投資を超えて
2,500億ドルのマルチアセットポートフォリオ運用者であるセバスチャンペイジによる実務家のためのファイナンス読本。伝統的な概念に関するカバーをはじめ、実用上の問題点、留意点も多く組み込まれており、運用者が読んで参考になる点も多くあるのだと思う。ファイナンスはリソース配分という問題における意思決定を助けるための学問である。改めて、ファイナンスの学問の深さに驚きを感じた一冊。
・テクニカルとバリュエーションに関する想定を検証し、どちらも用いて行うことが良い投資になる。
・市場ポートフォリオの期待リターンは金利水準の関数になっている。金利が高い時には参加者はより高い期待リターンを要求する
・トレンドはあなたの友
・因果関係を評価するのは投資家に委ねている。投資家はこうしたマクロデータを相対的なバリュエーションを確認するのに用いることができる。
・CAPM期待リターンがその後の実現リターンと一致しないとしても、期待リターンをリスクに関連づける手法としては優れている。
・結局のところ数理モデルはリターンリスク特性を理解する上では必要な存在であり、それらのみで投資行動をする代物ではないのかもしれない。
・重要なのは、すべての取引を相対的に行い、ほとんどの場合で資産クラスのペアについて議論すること。リスクオンなのかリスクオフなのかに始まり、レラティブバリューの投資機会を探す。さまざまなファクターを考慮した中で、ポジション調整を行なっていく。
・マクロファクターの多くは実際には投資不可能なものが入っている点に注意する必要がある。またファクター投資も、どのファクターが有用なのかを検証することは実は非常に難しい。また毎年多くのファクターが生まれてきていることを考えると、尚の事。
・長期予測において、株式の場合は、予測値がP/Eレシオの逆数+インフレ率から大きく離れていないことを確認。
・リターンをインカムと長期成長率の二つに分解すること。
・短期的な株式予測では、収益や成長よりもバリュエーション変化に焦点を当てる。
・レラティブ投資を行う場合はP/CFに、絶対的な決定をする場合はP/Eに特に注意を払う。
・タクティカルな戦略だと、P/CF及び、6,12ヶ月のモメンタムを用いてバリュエーションベースの取引を良いタイミングで行うことができる。
・ボラティリティバンドを上下に適用して、バンド内に入っている場合はリバランスを行わない。
・相関の推定値にはストレステストを使用したものを行う、シナリオに関しても平常時ではなくて異常時のものを用いるのが方向性としては正しい分析になるだろう。
・より良いリソース配分をし、そして最終的には社会の幸福につながる意思決定を行うことがファイナンスの主目的。