#234 ビットコインスタンダード

ビットコインという自分がこれからの人生を一番使うことになるであろう価値保存手段が生まれた背景が堅牢な経済学的視点から書かれている本書。読了は三回目程。社会実験として見ていた人もいるが、コロナを通じて政府主導の通貨政策に関して疑念が多く出てきており、インフレ政策に左右されずに価値貯蔵を行いたいという個人にとって現実的な選択肢となりうる日が一歩ずつだが近づいているのかもしれない。価値を守るのは自分自身の責任になった先に、産業革命、ルネサンスのような繁栄の時代が訪れるきっかけをビットコインが人類に与えてくれるという期待を持つことができる本書から抜粋。

・Fiat CurrencyのFiatは法令、権威を意味する。法定通貨は政府が金を保有することを前提に貨幣として受容されている。

・金本位制では財源を確保することは恐ろしく大変だが、紙幣増刷ができる環境では、財源を自由に調達することができてしまう。これが戦争への資源調達の一助になった事は否めない。

・歴史にもしもはないが、もしヨーロッパ諸国が金本位制を維持していたら。もし個人が金の管理を国に委ねず個人で行っていたら、国は戦費をインフレでなく税金で賄わねばならず、歴史は違ったかもしれない。

・アメリカはドル供給を拡大することで、経常収支の赤字が自動的にファイナンスされるというシニョリッジを得る。ブレトンウッズ体制のもとでアメリカは特別な地位を得た。アメリカはドルを増刷して債務を無限にマネタイズできることになる。

・ハイパーインフレーションは国民に大きな経済損失を与えるだけではない。より深刻な影響は社会が数百年、数千年かけて築いた経済生産構造の破壊である。

・1ヶ月で物価が1.5倍になるハイパーインフレーションと定義すると、第一次世界大戦以降ハイパーインフレーションは57回もあった。

・健全な貨幣は政府が停止できず、市場性に基づき自由市場で選択され、価値を長時間保持し、物理的な距離を問わず効率的に価値移転できるもの。また健全な貨幣の供給は権力による操作とは無縁だ。

・価値が長期間保持されれば、時間選考が下がり、将来について考え備えるように促す。(起業のチャレンジは直近はコストがかかり一日の生活費を賄うために時間選考が上がってしまう中で、時間選考を下げ、創発的な取り組みに集中しなければいけないからかもしれない。)

・個人が独裁政治や抑圧的支配から自由である為にも健全な貨幣は必要不可欠である。

・金本位制を採用していた1700 ~ 1914年にかけては購買力は比較的安定していた。この時代に人々は時間選考が下がり、産業発明を経て様々な発明がなされた事を忘れてはならない。(電気、自動車、飛行機、エレベーター、心臓手術、石油系化学物質、電話)

・通貨膨張が実態のない富を作り出すことで資源配分を謝らせる。

・1920年の不況は第一次世界大戦の戦費調達を得てマネタリーストックが大幅に増えたことが要因。その後の不況回復は、減税と財政支出をしたが、政府が賃金統制をせず、価格発見機能に委ねた。結果として、この不況は1年以来で完全雇用に戻り、最速の生産収斂と、最速の回復をした。

・失業者の急増は資本主義のせいではなく、企業による良貨生産を認めない政府のせいである。

・市場の価格発見機能に委ねることが、資源と財の配分問題の解決策につながる。

・サトシ・ナカモトはデジタル希少性の発明に成功し、データの複製による移転でないデジタルデータの移動を発明した。

・ハッシュ化とは、任意の長さのビット列を入力とし、それを不可逆関数を用いてハッシュと呼ばれる固定サイズのデータに変換するプロセスで、この要約からは元データの特定はできない。

・技術自体は非排除性(誰かが何かを発明すると他の人も発明を模倣して利便性を享受できること)と非競合性(発明が提供する利便性は発明の利用者が増えても減らないということ)を有する。

・ビットコインのネットワークをフォークさせるインセンティブのあるソフトウェアエンジニアとマイナーのインセンティブは排反的

・銀行が準備金をビットコインで保有し、ビットコイン兌換を保証した独自デジタル通貨を発行することは意義がある。貨幣国有化以前の銀行の役割を担うことができるようになる。独自デジタル通貨を発行する銀行の準備通貨として機能する強い貨幣がビットコインの使命なのではないか。

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