#64 グローバリゼーション・パラドックス
グローバル化が叫ばれる中で、金融のグローバル化、及び貿易の自由化が果たしていついかなる時も絶対善なのかという問いを与えてくれる本書。自由化の度合いには灰色があってもよく、つまりは各国の発達状況に応じて臨機応変に政策を変えていくべきであると主張する筆者。強い政府のもと、自国にとって有利な政策を選ぶ知恵と勇気が必要不可欠なのだろう。
・アジア通貨危機は、結局のところ金融資本が国の内外を自由に移動する場合、政府が通貨価値を維持しようとすることは非常に危険であることを示ししている。このように、グローバリゼーションを頑なに良いものとすることは非常に危険な発想であることを本書論じている。従来の、バブル化、規制なきレバレッジがシステミックリスクを伴うことの裏には、グローバリゼーションのパラドックスが存在していることを本書は明らかにしている。
・ブレトンウッズ体制は、各国が独自の経済政策を実行し、自らの望む形の福祉国家を自由に築くことができた。さらには、発展途上国でも、国外からの制約をあまり受けることなく独自の成長戦略を描くことができた。現在のグローバル化した世界においては、単一のスタンダードを作ることは非常に危険であり、各国が自主性を持った上でルールや制約を取り決めること、そしてバックストップとしての一国一国の中央政府の力を充実させることが重要なのである。
・市場と政府は代替的なものではなく、補完的なものであるべき。市場経済は、ルールを履行させることのできる国家があってこそ成り立つものである。また、資本主義は唯一無二のモデルに従って形作られるものではなく、労働市場、金融、企業統治、社会福祉などさまざまな領域におけるバランスによって作られていることを理解すべき。
・グローバリゼーションの歴史として、初期の例では、チャールズ2世がハドソン湾会社に与えた勅令、河川、海峡等での交易や商業を認めるとし、権力を別途与えたのである。勅許会社は、独自の旗、軍隊、裁判所、そして通貨を持っていた。貿易と支配の結びつきが非常に高かったことがわかる。
・取引費用は、市場、バザール、青空市、電子取引、などにおいて取引が成立することを担保するための費用である。
・先進国の公共部門は、第二次世界大戦後の数十年で、急拡大している。たとえば、1920年までで公共部門の支出はやく20%、1960年には30%ほどと増加をし続けていることがわかる。
・17世紀から18世紀にかけて世界貿易は年1%ずつの増加率であったが、19世紀の前半から一気に増えて、19世紀は年間4%の増加率で増えていた。
・金本位制が受け入れられたことで、通貨価値の恣意的な変更や、金融が癇癪を起こすことがなくなり自由貿易が進んだという説明がある。盲目的に自由貿易が進歩をもたらすという考えは盲目的であり、正しくは進歩的でもあり、反動的でもあるということ。1970年代から大きく成長を遂げた韓国、中国も、開放する部分を選びながら政策を進めた訳ではない。
・金本位制では、赤字国では通貨切り下げと、金利上昇によって自然に均衡状態へと向かうことになる。
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