#5「超」入門 失敗の本質
日本が経験した大東亜戦争時の日本軍の組織を分析した名著失敗の本質をわかりやすく現代語訳した本書。日本軍が当初優勢であったにも関わらず最終的には逆転されて敗北を喫したわけだが、敗因を物量の差や一部のリーダーによる誤判断に求めるのではなく、組織としての差異に注目した名著から、現代でも生かされる視点の数々をわかりやすく紹介してくれている本。
・戦略の失敗は戦術では補えない
曖昧な戦略しか持っていなければ、転換点にあってどのように行動すれば良いかわからない。目標につながる勝利を重ねなければ目標達成はされないし、目標に繋がらない勝利をいくら重ねても目標は達成されない。
・戦略とは追いかける指標のこと
石原は国力、生産補給力を追いかける指標として持っていた、日本軍は決戦戦争をして勝つことを指標として持っていた。どのような指標を追えば良いのか、新技術や新たな局面で鍵となる新規指標を捉えることができるか。
・体験的学習で一時的に勝利しても、成功要因を把握できないと、長期的には必ず敗北する。指標を理解していない勝利は継続できない。
・既存の枠組みを超えて「達人の努力を無効にする」革新型の組織は、「人」「技術」「技術の運用」の三つの創造的破壊により、ゲームのルールを根底から変えてしまう。
・「シングルループ学習」は目標と問題構造を所与ないし一定とした上での最適化を行う。「ダブル・ループ学習は」設定した目標と問題構造自体が違っているのではないかという疑問を含めた学習スタイルであり、柔軟な変化をしていくためには後者の学習スタイルが必要。
・映画業界のコンテンツメーカーであるフィルム会社を経験し、流通と上映を押さえている企業の永続性やビジネスモデルの強固さを体験的に知ることで、ジョブズはiPodとiTunesの構造を思いついたと考えることもできます。
・日本海軍も電探を装備して戦いに臨むチャンスがあった。しかしながら、海軍軍人たちは、自分たちの知らなかった技術、兵器であるレーダーの重要性を、ほとんど理解することができなかった。技術的イノベーションは個人でも担うことができる。しかしながらイノベーションの芽を育てるのは組織の意識構造による。
・現場の体験、情報を確実に中央にフィードバックし、目標達成の精度と速度をさらに高めていく仕組みを作ることが重要である。現場最前線での戦闘、そして組織内の隠れた優秀者を引き上げることで生まれる新しい発想を意思決定者に引き上げる組織づくりを。