見出し画像

「好奇心」から生まれる「探究心」 〜探究心を育てる一つの提案〜

こうした様々な自然体験が、君たちの好奇心、探究心、想像力(創造)にどのように繋がっていったのかを具体的に見ていこう。
まず最初は「好奇心」と「探究心」の関係について話す。
「探究心」は「好奇心」の次に生まれるものだとお父さんは考えている。幼少期にたっぷりと「初めての体験」を繰り返して、身の回りのことに興味を持つようになると「好奇心」というバケツが次第に満たされてくる。そして溢れた後に「なぜ?」という感情が生まれてくるのだと思う。「クローバーの花を摘むことはできるのに、花に止まっているチョウをつかまえることはできない、なぜ?」という具合だ。

では、自然体験を通して「好奇心」を一杯にすれば「探究心」は勝手に育つのだろうか?自然豊かな田舎で育った子は皆、探究心旺盛な人になるのだろうか?違うよね。どうすれば好奇心を探究心に繋げていけるのだろう?ここが今回のポイントだ。

一番大切なのは「子どもに対する親の関わり方」だと思う。子育てを経験した親の多くは知っていると思うが、子どもは幼い時ほど、親が興味を持っているものに興味を示す。自然体験を子ども任せにするのではなく、親がこどもと一緒に、身の回りの自然を楽しむ、興味を持つ、ということが、子どもの好奇心に火をつける導火線になるのだと思う。
例えば、スマホで風景写真を撮ったり、植物を手にして花を観察したり、双眼鏡で鳥を眺めたり、昆虫を採集したり、自然に興味を示す親の姿を見せれば、子どもも同じように身の回りの自然に興味を示すのではないだろうか?この時、親が先回りして子どもにいろいろなものを教えないこともポイントなので、これは覚えておいてほしい。親が楽しむことがまずあって、次に子どもが興味を持つというのが最高の順序だ。
言い訳臭く聞こえるかもしれないが、お父さんは休みの日には一眼レフカメラを手に、あなたたちの姿はもちろんだが、それ以上に(失礼!)蝶や草花の写真を撮影していた。そんなお父さんの姿を見て、君たちも一緒に蝶を追いかけてくれた。
「好奇心」が「探究心」に結びついた忘れられない思い出がある。MHがキタテハというすばしっこい蝶を捕まえた時のことだ。「お父さん、チョウチョ捕まえた!」と両手で包み込むようにして、捕まえたキタテハをお父さんに見せてくれたんだ。「ネット(補虫網)も持っていないのにどうやって捕まえたの?」と尋ねたら、君はこう答えた。「飛んでいる時はものすごく早いんだけれど、花に止まっているときはじっとしているから。タンポポの蜜を吸っている時を狙って捕まえたの」と。
親が夢中になって追いかけている蝶に興味を持ち、自分なりに観察して、どうやったら捕まえられるのかを自然に探求していた。センス・オブ・ワンダーが育んだ好奇心が探求心に火をつけ、行動につながった瞬間だった。

公園などでよく目にする残念な光景がある。子どもが何かに興味を持っている時に、スマホの画面に集中している親の姿だ。もったいないなあと思う。せっかく子どもの好奇心を育てるチャンスがあるのだから、そのチャンスを見逃さないようにしたいね。
もしも、君たちが親になった時、自分の子どもが何かに興味を持ったら、すかさず一緒に子どもが見ているもの、夢中になっているものに寄り添ってあげて欲しい。自然観察の専門家である必要はない。むしろ何も知らない方が、子どもと一緒に「なぜ?」を楽しむことができる。

次に大切なのは探究心を育む本の存在だ。親子で一緒に自然を楽しむ際に子どもの年齢に丁度良い「フィールド図鑑」を持ち歩いてほしい。虫好きな子どもには野外ですぐに開くことができるポケット昆虫図鑑を、花が好きな子どもにはコンパクトな植物図鑑を与えてほしい。野外で使うのだから、当然、汚れるけれども、そんなことは気にせず、子どもが興味を示し、「なぜ?」が生まれたら、その場で一緒に調べて見ることが大切だと思う。そうした経験を積み重ねると「好奇心⇨探究心⇨わかる(嬉しい)⇨もっと知りたい⇨わかる(嬉しい)」という好循環が生まれてくる
実はこれ、中学や高校で「自ら学ぶ力」につながる大切な要素ではないかな?「小さい頃はゲームでもなんでも子供の好きなように遊ばせて、小学4年生から中学受験の勉強をさせれば良い」と考える親も多いと思うんだけれど、小さい頃の野遊びにこそ「自ら学ぶ力」の芽が隠されている。

さらにオススメの方法を紹介しておく。野外で「なぜ?⇨調べる、わかる(嬉しい)」とフィールド図鑑で調べる体験をした子どもの中には、もっと知りたいことがあるかもしれない。だから、家には、子どもが好きな分野の図鑑で、もう少し本格的な図鑑を揃えてあげたら良いと思う。図鑑は決して安いものではないけれど、数千円で自ら学ぶ経験を積み重ねることができるのだから、長い目で見れば絶大な効果のある投資だと言える。
中学受験のために勉強を嫌々やるようになってからでは、自ら学ぶ力を育てることは難しいだろう。小学校に上がるまでに図鑑をボロボロになるまで使い倒した子どもは、自ら学ぶ力を手にしていると思って間違いない。
実際に、お父さんの周りには子どもの頃に生き物に夢中になって探究心が育てられ、医者や大学教授になっている同級生がたくさんいる。社会で活躍している人の中には、自然愛好家が多いことも知っていて損はないと思うよ。

ただし、子どもによっては興味のある分野が次々と移っていく子もいる。「せっかく高い図鑑を買ったのに使ってくれない」ということもあると思うが、それはそれで置いておくのが良いだろう。
我が家にも、買ったけれど開かなかった図鑑や良かれと思って買ったシリーズが山ほどある。手に取ってくれなかった時は悲しかったけれど、今はそうは思っていない。そういう本は、何かのきっかけで君たちが社会人、あるいは親になった時に手に取るかもしれないからね。本の量は、お父さんお母さんが君たちに注いだ愛情と比例していると考えて、いずれ読んでほしいと思ったものはすかさず購入してきた。実際に手の届くところに置いておいたことで興味を持つようになった分野は増えていったしね。

繰り返しになるが、幼少期の図鑑、本は、子どもの心を成長させるために欠かせない栄養だ。家計の負担にならない範囲で、さまざまな図鑑を買ってあげてほしいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?