【レポ】BPL Vol.75 地下室の会ライブ@築地BLUE MOOD
2022年9月28日に築地BLUE MOODで行われた、75回目の地下室の会ライブへ行ってきました。
地下室の会はプロベーシスト集団。
つまり、ベーシストが主役のライブということになります。
まずは副会長の依知川伸一さんが登場して、軽い「ベーシストあるある」ネタを組み込みながら地下室の会の歴史を紹介。
そして1組目のバンド「西北寺」を紹介…するのですが、このトークが伏線となって終演後の挨拶で回収されることになるとは…!
依知川さんの話した内容をざっくり書くとこんな感じ。
地下室の会も24年目になると、親子二世代で会員というメンバーが出てくる。
ジミー前田さんと前田竜希さんに続いて、寺沢功一さんと今回加入した寺沢リョータさんが二組目。
さらにギターの遊太さんは幼少期から知っていて、お父さんとはバンドを組んでいた。
…というような。
これ、後から効いてきますので覚えておいてくださいね。
さて、1組目は「西北寺」。
今年結成したばかりのバンドで、ライブも2回目と。
だからまだオリジナル曲がなくてカバーばかりですみません…みたいなMCもあったんですね。
で、セットリストがこちら。
・Born to mack - Stevie Salas
・春よこい - はっぴいえんど
・かくれんぼ - はっぴいえんど
・Electric feel - MGMT (Richie Kotzen cover ver.)
・One foot in the grave - Philip Sayce
・塀までひとっとび - サディスティック・ミカ・バンド
誓って褒めてるんですけど、どの曲も西北寺のオリジナル曲に聴こえました!
はっぴいえんど曲なんて普通に知ってるし聴いているのに、しばらく気づかなかったほど。
ライブ2回目で、ここまで自分たちの色が出せるって凄いんじゃないでしょうか。
そして、寺沢リョータさん。
依知川さんがMCで「お父さんとピッキングがそっくりで手のアップだけなら見間違える」と仰っていましたが、そこだけはベース好きとして心の中で「見間違えないよ~!寺沢功一さんの指はもっと太いし動きも違うよ~!」などとこっそり反論していました(笑)。
リョータさんの右手の方が紳士的というか都会的というか。
ただ、今回は左手に釘付けでした。
こう…スルッと動くというか動いてないみたいというか、横の動きが少なくて何もしてないように見えるのにラインが動いているという。
それもあって、爆音なのにどこかクールで余裕が感じられるんです。
楽しそうにステージを移動するし、弾きながら照明さんにまでアピールしたり、こんな大御所たちに見られているのにすごい強心臓だなぁ…と感心していました。
演奏で特に好きだったのが「塀までひとっとび」のイントロ。
スラップを数回した後、ネックの半分でキュッと止めるような短いグリスの流れがカッコよくて~!!
終演後に原曲のフレーズなのかお訊きしたら「あの時パッと思いついてやった」と仰って、やっぱり余裕だな~!と。
使用ベースはG&L。
ディストーションが効いていたように聴こえたけど、アンプ直でした。
2組目は「THE PIGEONZ」。
同じように、まずは依知川さんがバンドを紹介するMCから。
この時に依知川さんが、客席に向かって「ブロックポジションかっこいいよね~!」と楽しそうに仰って、思わず笑ってしまいました。
もう嬉しくて嬉しくて…!
この面白さと嬉しさ、伝わるでしょうか?
説明すると、普通のライブのMCでベースの仕様に言及することなんてまず無いんですよ。
それがサラッとできてしまうのが、地下室の会ライブの素晴らしいところなんです!
ベース好きが集まっている空間ですからね。
幸せ…。
そして、酒井太さん。
ジャズベースの5弦(フェンダー※特注)で、低音でもよく通ってラインがハッキリ追えました。
音色を言葉で表現するのって難しいんですけど…「辛口」みたいな。
なんというか、無駄のなさを突き詰めた「厳しさ」みたいな。
そしてベースラインは、リズムも(このコードでどの音を使うかという意味の)音選びもお洒落で、ものすご~く計算された感じで、ちょっと怖いぐらい(本当に!)。
きっとストイックで自分の理想がハッキリ見えているんだろうなぁ…と感じる流石のプレイでした。
そんな怖い()太さんがMCで「依知川さんから依頼されたけど正直プレッシャーで」とか、さらに太さんの師匠であるレイニー加藤さんが観にいらっしゃっていることもあり「緊張した」と仰っていたのも印象的でしたねぇ…。
ボスの先にはラスボスが居るみたいな。
演奏曲はこちら(聴き取れた範囲の書き起こし)。
・ハーバーライト
・If you were mine
・Stay with me
・パラレル
・カメラロール
前述したように全編素晴らしかったんですが、特に特に「Stay with me」のAメロで、ロッコみたいな短い音からロングトーンになるところがものすご~く好みでした。
終演後にお訊きしたら、短い音は(ロッコの左手ミュートじゃなく)右手で調節されていると教えてくださいました(ありがとうございます!)。
トリを飾るベーシストは長谷川淳さん。
ESPの5弦。
依知川さんがさっき太さんを紹介したMCで「5弦なのに軽い(4.4kg)」という話をした流れをついで、淳さんが「これも軽いんですよ」と。
で、淳さんが「でも重さは分からない」と言ったら、依知川さんがベースを持って「4.8kg」と。
ここでお客さんが「いや分かるかい!」てきに笑ったんですけど、ベーシストの皆さん(と私)は笑っていなかったはず。
だってベーシストはベースについて冗談言わないから、マジのガチの予想だなと思ったんですよね。
案の定、依知川さんご本人が「え!本当だよ!さっきのより重いけど僕のよりは軽いから4.8kgぐらいだよ!」とガチの予想であることを主張していらっしゃいました。
あぁ…なんて平和でステキな空間…(拝む)。
セットリストはこちら。
・Next Stage
・No more underdog
・Blues(inA)~Rock'n'roll forever
・Shout at the horizon
・Scatterbrain
・Sunset
・Battle hero
・電光石火
ギターの(そして依知川さんと同じく61年会のメンバーでもある)西山毅さんのソロアルバム3枚目からの曲が中心で、カバーが少しというラインナップ。
淳さんのプレイは動画で拝見していた通り!
「Battle hero」でギターの速弾きをユニゾンでやっちゃったり、「電光石火」ではギターとの速弾きバトルがあったり、ドヤ!感あるテクニック推し。
でも曲が終わったら「すいません(汗)」って感じのジェスチャーをする塩梅がまたイイっていう。
もちろんその速弾きもすごかったんですけど、私はむしろ「Next Stage」や「hout at the horizon」での、同じフレーズが延々と続く恒常性に惹かれました。
終演後にお訊きしたら「実は普通のことを普通に弾くのが好きなんですよ~」と仰っていたのが興味深かったです。
いやぁ~、本当に三者三様!
キャスティングした依知川さんのセンスも素晴らしいと唸りました。
そして最後の挨拶ですよ。
ベーシストお三方と依知川さんがステージに立って。
依知川さんがこう仰ったわけです。
「僕は61歳ですけど、まだ中堅です。僕より15歳ぐらい年上の先輩方がまだまだ現役で弾いていらっしゃる。だから太くんは若手だし、リョータくんはもっと若手だね」と。
最初の「地下室の会には親子二世代のメンバーがいる」という話も。
太さんの演奏をレイニー加藤さんが聴きにいらしていることも。
客席には(若手の地下室の会メンバーである)柏原輝さんや高野清宗さんがいたことも。
音楽って、ベースって、弾き継がれていくんだなぁ…と。
私は「伝承」というのがとても好きで尊いと思っているのですが、今回の地下室の会ライブでまさにそれを目の当たりにして感動しました。
特にエレキベースは普及してからまだ50年ほどしか経っていない楽器ですから、私たちはその歴史をぜんぶ体感することができるんですよね。
そんな時間の流れを改めて感じられるライブを観ることができて、本当に幸せでした。
同じときを過ごした皆さん、ありがとうございました!
【出演者】
▼THE 西北寺
寺沢リョータ(B,Vo) 北川遊太(G,Vo) 西田“DRAGON”竜一(Drs)
▼THE PIGEONZ
酒井太(B) KOTETSU(Vo) 竹田麻里絵(Key) 大津惇(Drs)
▼西山毅・長谷川淳・藤本健一・盛山こういち
長谷川淳(B) 西山毅 (G) 藤本健一(Drs) 盛山こういち(Key)
撮影:梛野 浩昭 / 文章:東城薫
記:2022年10月1日
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