【民法】基本書シェアリサーチ 結果発表です!【今受験生・合格者に使われている本】

前回の憲法・行政法分野についての記事に引き続き、今回は民法分野の基本書シェアリサーチの結果発表記事を公開します!
公開まで多大なるお時間を頂いてしまい、申し訳ございません……。残りの記事も速やかに公開いたしますので、しばしお待ち下さい!
なお、今回の記事で取り上げる民法については、「一冊本」「総則物権担保物権」「債権法」「家族法」といった形でジャンル分けしております。
今回の投票についての前提や注意事項については前回記事をご参照ください。

◆民法(一冊本)

民法全体投票数=215

多くの民法の基本書は、分野ごとに本が分かれているため、勉強しようとするとどうしても分量が多くなってしまうところを、一冊の本で民法の一通りの分野を説明しようとするものが、これらの一冊本です。

そのような一冊本の中でも、最も人気があったのは、潮見民法(全)でした。民法の一冊本としては定番の基本書です。確かに、民法の一冊本の中ではバランス感が最もよく?、読んでいて安心感があります。短答式試験のための知識確認のみならず、論文式試験にも有用な記述があったりして、使い勝手がよいと私も思います。
ただ、潮見(全)は初学者に向かないとも評されます。かつてこの基本書は、「民法(全)」という書名ではなく「入門民法(全)」という書名でしたが、入門に向くとは言い難いと言われるようになり、入門の二文字がとれたという経緯があります。一冊本は、他の分野ごとに書かれた基本書を全部読むよりも分量としては少ないのですが、読みやすいかどうかは別です。
多くの受験生・合格者は、他の基本書や講義等でインプットをした後の知識を一通り確認するために、潮見(全)を使っています。「民法総則から勉強を始めて、債権総論に入るあたりで民法総則の知識が抜けてしまった……」という人は少なくないと思います。そういう時に一冊本で知識の確認をするとよいのではないでしょうか。

潮見(全)に次いで人気であったのは、平野エッセンシャルでした(この書名の略し方には異論があるでしょうが……なんて呼べばいいのか)。
平野エッセンシャルは、2021年9月に初版が出たばかりの比較的新し目の基本書です。私はもともと平野先生のファンだったので、発売してすぐ買いました。
同じ一冊本でありながら潮見(全)よりも情報量が多く、初学者の方に勧めるとしたら平野エッセンシャルの方を勧めます。論文式試験に使えるかどうかという視点でも、平野エッセンシャルのほうが有用ではないのでしょうか。
平野先生の書かれる文章は少し独特?と言われることもあるので、慣れていない人には読むのが難しいのかもしれません。私は新考える民法シリーズを愛読していたので、どういったことはありませんでした。
なお、平野エッセンシャルには誤植が多いからダメみたいなレビューが散見されますが、出版社のウェブサイトで正誤表が公表されていますので、このあたりは大丈夫ではないのでしょうか。

3番目人気のリーガルベイシスは、上記2冊と異なり、初学者のためにわかりやすく書かれた民法の一冊本です。かつては親族相続法は載っていないのですが、今は親族相続法についても書かれているようです。
これから民法を勉強するけど、何冊も本を買いたくないという人には、リーガルベイシスをおすすめしたいですね。

それにしても、一冊本を使う人の全体的な割合は思ったよりも少ないですね。予備校のテキストや択一六法的な本により、一冊本の役割は代替可能だから、ということなのでしょうか。

◆民法(総則・物権・担保物権)

民法全体投票数=215

さすがの佐久間民法です。佐久間総則佐久間物権がそれぞれ1位2位を獲得しました。
佐久間先生の基本書は、情報量が多く、要件事実への言及もあるため、多くの受験生から定評のある基本書です。
ただ、情報量が多いとはいえ、発展的な内容について書かれた部分は難しく、買ったはいいものの通読できたという方は少ないのではないのでしょうか。もう少しわかりやすく、基本的な部分に絞った薄い教科書を選択する人がいてもいいんじゃないかとも思うところです。
わかりやすさ特化でいうと、最近は少しずつストゥディアがシェアを伸ばしてきていますね。ストゥディアよりも少し堅めな教科書であれば、日評ベーシックシリーズも選択肢に入ってくるのではないでしょうか。
私は、松井先生の物権法担保物権法を愛用していました。ページ数は比較的多いわけではないのに、わかりやすく、適度に応用的な論点への言及もある点に魅力を感じています。
その他にも、私はここまで人気とは知りませんでしたが、安永物権担保物権が受験生・合格者の間でそれなりにシェアがあるそうです。私も軽く読んでみましたが、記述が平易で、なおかつ分量も多くないので、使い勝手がよさそうです。

さて、担保物権法といえば、かつては道垣内担保物権が定番と言われていませいたが、今はそこまで圧倒的シェアというわけではない、という点がびっくりしました。かくいう私も、担保物権法分野は松井先生の本を使っていたので、道垣内先生の本を使っていませんでしたが、記述の信頼性というか、困ったときは道垣内先生の本にあたっていたので、もう少し今の受験生にも使われていいのではないかとも思うところです。

◆民法(債権総論・債権各論)


民法全体投票数=215

やはり潮見先生と中田先生は強い。債権各論分野は潮見イエローⅠ、債権総論分野は中田債権総論がトップシェアですが、債権総論分野の潮見プラクティスや債権各論分野の一部を取り上げる中田契約法も上位に入ってきており、これらの本の中でも何を使うのかについて好みが分かれているようです。私はどちらかというと債権総論も債権各論も中田先生の本が好きですが、潮見先生の本ももちろん持っていて、困ったときは両先生の本の記述を見比べていました。
債権総論分野では、潮見プラクティスは記述が難しいと言われる一方、中田債権総論を理解することも決して簡単ではなく、また、どちらの本も分量がかなり多いので、通読は難しそうです。
債権各論分野だと、潮見イエローは、潮見プラクティスよりも読みやすく、要件事実を強く意識しており、分量も中田契約法より少ないので通読も十分可能です。中田契約法は、潮見イエローよりも情報量が多いのが良いところですが、債権各論分野の中でも法定債権と呼ばれる不当利得・事務管理・不法行為法については触れられていないため、他の本と併用する必要がありそうです。
中田・潮見両先生の基本書よりも気軽に読み進めやすいという点でいうと、前節でも紹介したストゥディア日評ベーシックシリーズは本分野でもおすすめです。

◆民法(親族相続)


民法全体投票数=215

なんと意外も意外。親族相続法分野で最も得票数が多かったのは、リークエではなく窪田家族法でした。

昔から、親族相続法分野は、リークエと窪田家族法の2つがツートップの基本書として知られていました。
リークエ親族相続は、民法分野のリークエの中でも最も人気が高い基本書だと言われております。十分な情報量があり、書かれている文章も堅いものと言われています。
他方、窪田家族法は、リークエとは対照的に、やわらかい文章で書かれた基本書です。リークエと窪田家族法のどちらが良いという話ではなく、どちらのスタイルの文章が好みかという観点で、受験生人気が分かれている印象です。
その他にも、基本書が最新の法改正に対応しているかという視点も大切ですね。試験への影響が大きい平成30年改正はどちらも対応しているようですが、最新の令和4年改正については、(本記事執筆時点で)リークエのみウェブサイトにて補遺が公開されているため、対応しています。

私は、やわらかい文章のほうが好きではありますが、大学でわかりやすい講義を受けたり、レジュメを読んで勉強したりしていたので、これを補完するための基本書として、文章が堅いリークエをメインに使っていました。このように、受験生の方々の環境に合わせて基本書を選択するのもいいですね。
ただ、リークエも窪田家族法もページ数が少なくなく、通読している余裕がないという方もいるんじゃないのでしょうか。通読用であれば、アルマのような情報量が比較的少なめの基本書もおすすめできるかもしれません。

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