読書記録16:「天幕のジャードゥーガル」
演奏会と仕事の繁忙期の8月、読書記録を全然つけておりませんでした。
いろいろ区切りの8月末日、「今日書いたら8か月連続ってことにしてあげるよ!」ってNoteが言うので久々の更新。
本はこの間も読んでいたのですが、記録をまとめる暇がありませんでした。
で、久しぶりに選んだのはまさかのマンガ。
同僚から勧められてなぜか1巻から4巻まで一気読みしたのですが、これがまたすごいんだ。この時代にモンゴル帝国をマンガにしようという意図もそもそも良い意味でアクセルベタ踏みの行動ながら、着眼点が「ペルシアから連れてこられた奴隷を主人公とする」にあるところ。
定住農耕文明なら、その文明の歴史を総覧すれば事足りる。しかし遊牧民史の場合、広範囲の交易・戦争・文化交流と人々の交通を背景にしているため、「その民族の歴史をみるだけでは説明にならない」というのが特徴としてある。
モンゴルに加えてペルシア、チベット、ホラズムなどなど、日本語の資料なんてどれだけあるだろうか、という部分の資料を広く網羅しながら、それぞれの習俗に造詣を深めていかないと描けない。そればかりか、「モンゴルに支配された側」に主役を置くのだから、これはもう野心の塊のような作品。
しかも、歴史オタクがマニアックな知識を詰め込んだ、というような体裁ではなく、物語として魅力的に取捨選択されていて、それでいて比較的新しい歴史学の成果も反映し、詳しく触れたい人の知識欲まで満たしている。
歴史を知っているとネタバレの色は濃いが、普通に行くと凄惨なエンドになるところをどう持っていくのか、気になってしまった。