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#接吻代行 -毎週ショートショートnote
キャーーー!
女性は悲鳴を上げると、AND-011の左頬を思い切り平手打ちした。
AND-011は衝撃でズレてしまった人口皮膚を機械腕で器用に元に戻すと、予めセットされた音声を再生する。
「ごめん、俺は生きて帰れなかったようだ。キミは幸せになってくれ」
とたんに女性は声を上げて泣き出してしまう。AND-011はどうすることもできず、その場を立ち去るしかなかった。
◇◇
かれこれ十五年以上も続く星間戦争。この星ではほとんどの男が戦場へと駆り出された。
男がいつ帰還できるかも分からない任務に赴く間、それを待つ女たちの間では、年を取らない冷凍睡眠によって男の帰りを待つことが一般化。中でも受けたのは、解除キーを「愛する男とのキス」に設定するという「眠り姫サービス」だ。
女たちは男の帰還を信じ、永い眠りについた。口づけで目覚める未来を思い描いて。
そして男たちは、万が一を案じて自らの唇の複製を登録するのだった。
プシュー。
進化し過ぎたAIによって思考能力を獲得したAND-011は、目覚めた彼女たちの行く末を思い、ため息にも似た音を発した。
(了)
※本文 473文字
たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」に参加しています。
こちらは裏お題の【接吻代行】。
古めかしい「接吻」を、遠い未来のSFにしてみました。
字余りスミマセン。
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