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ネーミングといえばこの企業! 小林製薬 名付けの流儀【名付けお屋-001】

「糸ようじ」「のどぬ~るスプレー」「キズアワワ」「オイルデル」「トイレその後に」…etc.
ユニークなネーミング、と聞いてまず浮かぶのは、小林製薬の製品たちではないでしょうか。

ということで、「名付けお屋」記念すべき第一回は小林製薬の名付けの流儀と題してお送りします。

…などと意気込んではみましたが、小林製薬のネーミングの話は有名でして、既にいろんなところで紹介されていますね。僕もずいぶん昔にテレビで取り上げられているのを見た記憶があります。
そこで、調べた中で改めて面白かったポイントを、引用も交えながらお話ししようかと思います。

社員全員がアイデア出し

まずはこちら。朝日新聞WEB版の2023年4月23日の記事から。

全従業員が毎月アイデアを提出し、そこから新製品を生み出している。
総数は年間でおよそ4万件。日常生活で感じる困りごとなどがヒントになる。

朝日新聞WEB版

三人寄らば文殊の知恵とはよく言いますが、コーポレートサイトによれば小林製薬の従業員数は「連結 3,615人 単体 1,665人」。つまり文殊菩薩1205人分の知恵が出されるわけですね。
そりゃユニークになるわけだ。

同じく朝日新聞の記事では、

開発段階で100個以上の候補作をつくり、そこから5個にしぼって社長も出席する会議に提案する。

朝日新聞WEB版

とありますから、ネーミングというものをすごく大切にしているんだ、ということが伝わります。

さらにコーポレートサイトを見ていくと、このネーミングへのこだわりの理由が分かってきます。

キーになるのは「“あったらいいな” をカタチにする」というブランドスローガンと、「小さな池の大きな魚」戦略というビジネスモデル。

小さな池とは誰も見つけていない新市場。そこに最初に参入することによって、大きな魚=大きな利益を得る、という戦略。巷でいう“ニッチ戦略”というやつですね。

では、そんな新市場をどうやって見つければいいのか? ここで、小林製薬のアイデンティティともいえるスローガン「“あったらいいな” をカタチにする」が登場します。

“あったらいいな” とは、即ち「ニーズ」ですよね。つまり、みんながなんとなく“あったらいいな” と思っているものを、カタチにする=製品化することで、ニッチな池に漕ぎ出していけるわけです。

“小さな池の存在を知らしめる” ための命名ルール

ただしニッチ戦略には一つ、大きなハードルがあります。
それは、“今までなかったもの” であるがゆえのわかりにくさ。

小林製薬のコーポレートサイトにはこうあります。

小林製薬の製品は、これまで世の中になかったものが多くあります。何のための製品かがわからなければ購入してもらえません。それが何かひと目でつたえられるように「わかりやすさ」に徹底的にこだわっています。

小林製薬コーポレートサイト

小林製薬の製品たちは、徹底的にわかりやすさを求めてプロモーション設計されます。パッケージはもちろん、CM、店頭POP、そして製品名。

つまりあの「そのまんま」なネーミングたちはすべて、ニッチ戦略のハードルを越えるための“当然の帰結” だったのです。

最後に朝日新聞の記事に戻って社長の言葉を見てみましょう。

 小林社長は「選考基準はわかりやすく、覚えやすいこと。名前だけで商品の特徴が伝わるように意識している」と話す。

朝日新聞WEB版

なるほど。聞くとカンタンな言葉ではありますが、その背後にはすぐれた戦略が隠されていたんですね。

ところで、小林製薬の製品名で僕が一番好きなのは、「オドイーター」です。靴のニオイを取り除いてくれる中敷きみたいなやつですね。

幼いころから音の響きだけでなんとなく頭の中に残っていたのですが、英語を習ってあらびっくり! 
「Odor(ニオイ)をEater(食べる者)」なんてカッコよ過ぎません?
英語覚えたての中学生には、厨二病風味のこの名前が大変ブッ刺さったのでありました。

しかし小林製薬の製品サイト、「製品名・ブランドから探す」のページ見てるだけで面白いですな。オススメ。


「名付けお屋」とは

元コピーライターでもある【樋田矢はにわ】が、「名前」をテーマに書くコラムや記事のシリーズタイトルです。一度覗いてみて!


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