オーストラリア旅37日目完結編(4/9)
目が覚めると辺りは薄暗くなっていた。
コロナの検査結果は出たのだろうか。試しにスタッフに聞いてみたがまだ出ていないようだった。
今晩中か、明日までに出るそうだ。
陽性だと面倒だなと考えながら、お腹を空かせてその時を待つ。
とにかく暇すぎるのでTwitterを開く。
すると信じたくもない情報が目に飛び込んできた!
「島根初コロナ感染者確認」
なんと、ふるさと島根で初めてコロナ感染者が出てしまった!
それまでいわゆる”コロナ疎開”の対象県として、コロナ渦中にも関わらず、観光客が急増していた島根。
このとき47都道府県で”岩手”と”島根”のみが感染者数ゼロ人だったのに、とうとう出てしまった。こんな時期にわざわざ島根にきてコロナウイルスを持ち込む可能性を考慮しなかった人たちに激しい怒りを覚えた。
「ふざけんな!」
でも冷静に考えればいつかはその時が来るわけだし、自分がその初の感染者になっていたかもしれない。そう思えば本当に面倒な時代になったものだ。
そうこうしているうちに外は暗くなり、このフロアの雰囲気も一層苦しくなってきた。不安と不満が充満した気持ちが悪い空間だ。
そんなときスタッフが動き出した。
検査結果が出たようだ。
まずは5人の名前が呼ばれていく。
しかし一人一人に割いている時間が長すぎるため一向に呼ばれない。
それから数時間後、
「細田崇之さまー」
遂に僕の番がやってきた!
心臓の鼓動が力強く脈を打つ。
ドキドキしながら受付まで歩を進める。
大丈夫なのか?
感染していたらどうなるんだ?
重症になったり後遺症が残ったりしたらどうしよう。
あらゆる不安が頭の中を駆け巡る。自分に「落ち着け」と言い聞かせ、自分の名を受付スタッフに名乗る。
「細田崇之さんは、、、」
緊張で全身がこわばる。
「、、、陰性ですね」
一気に全身の力が抜ける。
もっとさらっと言ってくれ。
続けて、今までどこで何をしていたのか、今日から14日間どこで滞在するのかを丁寧に質問された。
とりあえず、横浜の友人宅で滞在するとの旨を伝えると羽田空港からの送迎バスの案内表を渡されて、丁寧に説明をしてくれた。
東京都や神奈川など、羽田空港から近いホテルまでは帰国者専用の無料シャトルバスを運行させているらしい。
その後、またしばらく待たされてからバスに乗る時間がやってきた。
ようやくこのフロアから外に出られる!
空港の玄関口まで誘導され、横浜の友人宅に一番近い場所まで行けるバスに乗る。
そして夜の11時過ぎ、バスは川崎まで停車してようやく解放される時が来た!
バスよ、ありがとう!!!
なんという解放感!!!
久々に日本の地上を踏みしめる!
「おれは自由だ!!!」
もの凄い解放感だ!
なんだか、感動で涙が出そうになった。
目の前に広がる、日本の当たり前の街並みを見るだけで心が震えた。
変に思われないよう声を押し殺して「帰ってきたぞーーー!!」と何度も叫ぶ。
今にもスキップをしたくなるような高揚感。
こんなにも日本を愛おしく感じるとは!
それにしてもなんという帰国になったものだ!
朝の5時半に飛行機が空港に到着し、17時間以上も隔離されていた。
お腹もすいたし、心身ともに疲れ果てた。
でも何はともあれ、無事に日本に帰国することができた。
沢山の人に支えられ、いま僕は日本の地を踏みしめている。
不平不満を言いたくなることは何度もあったが、今は感謝の気持ちがこみ上げる。
本当にありがとう。
なかなか気持ちを切り替えられないけど、また新しい旅をこの国で刻もう。
コロナ渦中のオーストラリア旅、ここに完結!
長い間ご拝読頂本当にありがとうございました!”
↑オーストラリアの鬱憤を初めてキャンバスにぶつけた作品。
タイトル「悔恨と憤慨」(2020年4月)