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【コラム】豊かな暮らしに似合う服。

いつも考えること。

繰り返し繰り返し、自問自答し続けていることがあります。そもそも、洋服とは何なのか。ファッションとは何か。豊かさの意味するものは何か。

そういう正解のないことを考え、自分なりの決着をつけて初めて生産に向き合う。これは、服飾に関わる上で、かなり大切なことだと考えています。

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ニットは、贅沢なもの。

様々なテキスタイルが開発され、防寒だけではなく、防水や速乾に優れた素材がある現代。

しかも、生活様式も50年前とは、比べ物にならない程に向上した都市型生活をおくる私たちにとって、ニットとは、寒さを凌ぐだけのためだけではなく、肌に触れる感覚、目に映る色合い、立体的な編み地に光が差したときに生まれる陰影。

それら、言語化できない感覚を満たす服飾と言えます。つまりは、とても贅沢なものだと考えています。

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大前提として、ニットは、高価でありながら、繊細なものです。一般的な洋服は、主に「織り物」か「編み物」の2種類のテキスタイル(生地)から構成されます。「織り物」は、経糸(タテ糸)と緯糸(ヨコ糸)の2本の糸を交差させて作り、「編み物」は、一本の糸でループを作りながら編んでいきます。

織り物は「Yシャツ」や「ジーンズ」などに使われています。伸びにくく、破れにくい。ガシガシ洗えて、伸び縮みも少ないと言った特徴があります。

一方、編み物は「ニット」に代表される洋服の生地で、立体的な編み地があり、伸縮性もあるが、弱い素材です。引っ掛けただけで「ビヨーン」っと糸が飛び出したり、洗濯に失敗すると簡単に縮んでしまいます。

織り物(=布帛|ふはく)

・縦横方向に伸縮性があまりない
・型崩れしにくい(洗濯しやすい)
・通気性が低い
・シワになり易い
・素材が平面的

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つまり、丈夫でガッシガシ使える。洗濯もしやすい。これらの特性から、織り物(=布帛)は、アウターやパンツなどハードに使いたいアイテムに使われることが多い素材。一方、ニットは繊細な素材なので使うシーンが限定されてしまいます。

編み物(ニット)

・縦横方向に伸縮性がある
・型崩れしやすい(洗濯しにくい)
・通気性が高い
・シワになりにくい
・素材が立体的

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ニットは、編み地が「立体的」で、かつ、「伸縮性がある」ので、身体にフィットして、着心地の良いものになりますが、一方で、ものづくりの工程は難しくなります。

伸び縮みする素材なので、洗いをかけた後のことを計算し、もしくは、あらかじめ、洗いを掛けてから縫い上げるなどの手間がかかり、また、縫製にも熟練した技術が必要になります。一人前の職人になるまでの長い年月を要します。

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そういったことから、一般的に、国産のニットは高価になる宿命を背負っています。しかし、安くはない分、時間を掛けて検討し、いざ購入しても、大切に、丁寧に着る。本来、それがファッションではないでしょうか。

過剰にものに溢れ、流行も、瞬く間に消費されていく。本来、ファッションとは、流行でも、消耗品でもなく「心」を、「暮らし」を、「日々」を、それらを循環させるようにして、豊かにしてくれるもの。幸せを感じるための方法。

toiroは、そんな風に考えています。今、現在としては。

常に「豊かさの意味」を考え続けて、それに見合う「洋服」について、今年も来年も、その先も。ずっと丁寧に、四季を感じるニットを作り続けたいと考えています。

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