断水の経験は市民をどう変えたか?(C-009 2018.07.03)
2018年。3月に講演し、4月にイベントを行い、7月に市職員の研修会を行う予定の岐阜県美濃加茂市で、その直前の6月末に大雨による断水が発生しました。断水の体験と経験は市民をどう変えたのか。今日の気づきは、「体験者だからわかることがある」「経験者には使命がある」です。
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(2018年7月3日配信)の転載です。
岐阜県美濃加茂市で断水発生
6月29日、岐阜県美濃加茂市で断水が発生しました。原因は、大雨。市の防災安全課から一報を受けたとき、私は状況が理解できませんでした。
「なぜ、大雨で断水?」
聞けば、大量の土砂が水源である飛騨川に流れ込み、水道水をつくる浄水場の処理能力を超えたとのこと。市営森山浄水の運転停止により、市南部の太田、古井(こび)、下米田地区、計約1万900世帯で断水。1日午前6時の解除まで、約2日間水が出ない状況でした。
同市内の県営山之上浄水場も同じ飛騨川が水源。一時運転を休止しました。近隣自治体である坂祝(さかほぎ)町、富加(とみか)町、川辺町の約2万7千世帯にも断水が拡大するおそれがありましたが、県の水道は複数の浄水場がつながっているので、何とか断水は免れました。
水道がつながっている近隣の可児市、多治見市などでは「節水」が呼び掛けられました。
この2日間の「美濃加茂市断水被害」。今日のコンテンツは、ここから何が見えたかという話です。
経験者の使命
メルマガ3号(5月22日)で美濃加茂市を紹介しました。
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美濃加茂市の備えを実現する。全市民が携帯トイレトレーニングを体験する。それをこの美濃加茂で実現する。私は勝手にそう決めました。
伊藤市長がトップの美濃加茂だから、できるイメージしかない。
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と書きました。
その美濃加茂が断水した。
市の担当者から29日午後5時に連絡を受けました。「何かできることはないか」と思い、在庫していた携帯トイレを持って現地に向かいました。翌30日午前9時から午後9時まで携帯トイレを無料配布。場所は4月にトレーニングを行ったアピタさんです。
「美濃加茂市内、断水でお困りの方に、水を使わないトイレを無料で配布しています」
私の呼び掛けに「困ってます」と足を止め、自ら近づき、真剣に説明を聴き、携帯トイレを受け取る人たち。
「これは助かる」
「ありがとう」
「ちょうど浴槽の残り湯がなくなるところだった」
「携帯トイレは知ってたけど、いつものトイレで使うとは考えもしなかった」
約300世帯、1200人分(1人2回分)の携帯トイレが、困っている方のもとに届きました。不便を強いられている市民の皆さんのお役に立てた。それが何より嬉しかった。
4月の携帯トイレトレーニングも多くの方が体験しました。しかしその時は「自ら来る」というよりは、興味を示す人をどうぞと「誘い入れる」感覚でした。
「困っている」。不便である状況はこれほどまでに強く人を動かす。わかってはいたものの、前回との違いで深く実感しました。
地震や川の氾濫、土砂崩れなどの災害がなく、停電もせず、2日間ただ水だけが止まった。珍しい特殊な状況です。命に関わる深刻な被害がなかったことが救いでした。
「水の大切さが身に染みてわかった」
「断水だけでこんなに困るなんて。地震が来たらどうなるのか」
「この経験を忘れないうちに備えに活かしたい」
今回の体験で、多くの市民が気づきました。
7月17日は、美濃加茂市で職員研修。何と言う巡り合わせとタイミング。あらためてもう一度書きます。
美濃加茂市の備えを実現する。全市民が携帯トイレトレーニングを体験する。それをこの美濃加茂で実現する。
もう私が勝手に決めるのではありません。市民の皆さんと一緒に、です。経験者である美濃加茂市民には、使命があるのです。
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◇今回の気づき
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体験者だからわかることがある
経験者には使命がある
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(vol.009 2018年7月3日配信)のコンテンツ部の転載です。(タイトルの"C"は、"Content"の頭文字)
あきらかな誤字・脱字を除き、当時の文章をそのまま「軌跡」として残します。
この日の「編集後記」は告知につき記事化しておりません。
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