やるせない……気持ちが鐘を打ち鳴らす(C-013 2018.07.31)
逃げることを拒む人を説得できるか。これらの質問に答えはありません。そして答えることが目的でもありません。願いはみんなが助かること。一人ひとりが気づいて備えること。そこに課題があるだけです。その課題の根深さに気づきました。今日の気づきは、「鐘を打ち続ける」「届くまで、響くまで、動くまで」です。
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(2018年7月31日配信)の転載です。
「たいしたことなかったね」と笑い合えるなら
週末は台風12号に翻弄されました。
私は、地元の市民まつり「元気ッス!へきなん」の実行委員をやっています。今年は7月28日に実施を予定していました。台風の上陸が確定的となった7月26日の夜、元気ッスの中止を決定し、公表しました。
楽しみにしていた多くの参加者。
1年をかけて準備してきた多くの催し。
過去に一度も中止したことがない実績。
苦渋の決断でした。
27日夕方の準備から28日深夜の片付けまでの、いずれかの時間に必ず暴風にさらされる。中止決定に西日本豪雨の被害が大きく影響しました。
早めの決断。
早めの備え。
結果として何事もなく「たいしたことなかったね」と笑い合えるなら、それはそれでいい。「残念だったね」と声をかけてくれ、中止を受け入れてくれた皆さんに感謝です。
今日のコンテンツは、そんな備えの意識について。答えのない話です。
鐘を打ち続ける
テレビやラジオに取り上げられ注目を集めています。現地では仮設ポンプの設置が予定を前倒して進み、今日にも一部世帯で水が出る可能性ありとのこと。被災者にも、支援者にとっても、嬉しい知らせです。
その報告を代表の中原祐美さんから聞いた電話で、今回の「避難」のことが話題になりました。同時通話で福山の伊勢本茂美さんも一緒に話しました。
2人から聞いた話です。
● 「私が避難所へ行くと迷惑をかけるから」と遠慮して、避難を拒む高齢者が、特に女性に多かった
● 亭主関白な夫婦関係が根強い地域性。夫が逃げないと決めたら妻は必ず従う
● 「避難所に行くとトイレに困る」と言って、避難を拒む高齢者もいた
● 土砂崩れで集落ごと流された地区。自治会長が一軒ずつ回って避難を呼び掛けたが、避難所に来たのはたった1人。慌てて再度一軒ずつ避難を呼び掛けてまわった。住民の多くが避難した直後に被災。それでも3人が逃げ遅れて亡くなった。
● 3m近く浸水した地区。驚くほどの急勾配な坂の上に家が一軒あった。「なんでこんな坂の上に」と以前から思っていた。まわり家が軒並み水没する中、その家は無傷。家主は古くからの住民だった。水害に遭い、そこに家を建てた理由がわかった。
逃げることを拒む人を説得できるか。
「こうあるべき」という無意識の決めごとに影響された「逃げない」という選択は変えられるか。
低い場所に家を建てた人は知らなかったのか。
高台の住民は警告したのか、しなかったのか。
これらの質問に答えはありません。
そして答えることが目的でもありません。
願いはみんなが助かること。
一人ひとりが気づいて備えること。
そこに課題があるだけです。
その課題の根深さに気づきました。
被災者の言う「風化させたくない」という言葉の意味が、ようやく理解できるようになりました。過去の被災者たちが「和歌」や「地名」や「文章」で、未来の私たちに向けて「これでもか」と鳴らした警鐘。撞木(しゅもく)で半鐘(はんしょう)を打ち続ける、彼らのやるせない気持ちが、ようやくわかるようになりました。
「地震、必ず来ます。その時にトイレ、必ず困ります。今、絶対練習しておいた方がいい」
携帯トイレトレーニングへの参加呼び掛けに、想いが強く入る私がいます。私にも変化が起きています。
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◇今回の宣言
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鐘を打ち続ける
届くまで、響くまで、動くまで
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この記事は、メールマガジン【前進の軌跡】(vol.013 2018年7月31日配信)のコンテンツ部の転載です。(タイトルの"C"は、"Content"の頭文字)
あきらかな誤字・脱字を除き、当時の文章をそのまま「軌跡」として残します。
この日の「編集後記」はこちら。
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