町屋の格子でその家の職業がわかる⁉ 京町屋にみられる建築的特徴とは
みなさんは、京町屋をじっくり観察したことはありますか?ほとんどの人は、立ち並ぶ町屋を眺めたり、写真を撮るくらいだと思います。
その京町屋には、いくつかの建築的特徴がありますが、ほとんどの町屋に共通して”格子”といわれる特徴がみられます。今回は、格子の違いを観察して、その歴史を紐解いてていきましょう。
格子は、中から外は見えるが外から中は見えにくいため、プライバシー保護ができ、同時に、通風も確保できるため、多くの町屋に採用された建築技術です。
格子を構造で分けると2種類あります。外壁から突出しておらず、玄関の建具の入っている部分と一直線に格子がある、言い換えると格子の下に空間がないものを平格子(ひらごうし)、逆に格子が、外壁から突出していて、足元が、浮いている状態のものをいい、ある意味で出窓のようなものを出格子(でごうし)といいます。
また、形状としては親子格子、切子格子、板子格子、細目格子、目板格子があり、基本形態だけでも様々な種類があります。
(写真)平格子
(写真)出格子
これらの基本形態を踏まえ、京町家の特徴として、第一に挙げられるのは、それぞれの格子は、その形や様式によってその店の職業を表現していたということなんです。
なぜ、こういった表現が生まれたかというと、京都では、通りごとにほぼ同じ職業が集まっていた時代があり、その時代には、機能性によってデザインされた格子が、商売ごとに統一された町並みのリズムを作っていたといわれています。
例えば、糸屋格子といわれるものは、切子(立子の上部が一定の長さで切られているもの)の本数で、その家の職業がわかります。切子が2本で呉服屋格子、3本で糸屋(紐屋)格子、4本で織屋格子といわれています。これは、色ものを扱う商売をする中で、商売に応じて採光率の調整をするため、採光に適した構造を利用したためです。
(写真)呉服屋格子
(写真)糸屋(紐屋)格子
その他にも、酒屋格子は酒樽を当てても壊れない頑丈さを持ち、かつ材料も選び抜かれた角材ものを使用していたり、炭屋格子は炭粉が舞うため近隣への配慮として、格子の開きを狭くした板子格子となっています。
このように、京町屋の格子だけでも、それぞれに特徴があり、その特徴も、ただデザインされたものではなく、機能性と統一性を意識したデザインから生まれています。
現在、寺社仏閣や町屋が、ただ歴史ある建築物として捉えられ、若い建築学生が学びの中心として、近代建築に目が行きがちな傾向にある中、京都で建築を学ぶ僕のような学生には、格子という一見、小さな要素であるものからもデザインや建築を学べるチャンスがあると感じます。
この小さな要素は、観光客にとっては楽しみを増やすチャンスにもなりえます。京都を歩くとき、少しでも知ってることがあると、また違った景色や楽しみ方が見つかるのではないでしょうか。小さな疑問が生まれる旅も楽しいかもしれませんね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?