団体対抗戦

~秋~
物語は、我鷹が風王位に返り咲くシーンから始まる。

~祝賀パーティーの後。我鷹と波溜が二人きりに~
我「勝ったり負けたり。俺たちの決着はいつつくんだろうな?」
波「いきなり、どうしたんだ?」
我「昔みたいにヒリついた勝負がしたいんだよ」
波「・・・」
我「JMPを脱けて、新しい団体を作る」
波「団体対抗戦か」
我「ああ。来年の夏に決着をつけるぞ」
波「JMPはお前のモノだろ。俺が出ていくよ」
我「麻雀しかできないヤツが、なにを偉そうに。お前に団体を育てる政治力は無い」
波「ぐっ・・・」
我「フン。せめて麻雀ではいい勝負をしてくれ」


~朝の公園。馬杉寧香のジョギングコース。そこに元風王位の富良が現れ、馬杉に話しかける~
富「我鷹さんの件、聞いていますか?」
馬「ええ」
富「馬杉さんは、一緒にいくんですか?」
馬「そのつもりよ」
富「俺も連れて行って下さい!」
馬「私が決める事じゃないわ」
富「俺にも、ケリをつけなければいけない奴がいるんです」
馬「積倉君ね」
富「はい」
馬「今晩、我鷹さんと食事をするわ。そこでお願いしてみれば?」
富「ありがとうございます!!」


~「多口熱」発売記念トークショー会場。
多口万棒のサイン会が進行中~
多(この女、かなりのオーラだ!)
~豊満なバストが視界に入る~
多「鷹宮っ?」
~顔を上げる多口~
多「あれ?」
女「『先輩へ』ってお願いします」
多「はい・・・」
女「ありがとうございます!先輩もきっと喜びます」
多「・・・うん」
~女は小さい男の元へ、サイン本を持って駆け寄る~
男「めろん畑、ありがとう!」
め「さだめだ先輩、サイン貰ってきました」
さ「めろん畑にお願いして良かったよ。僕だと抽選に当たらない気がして」
~多口は意外な組み合わせのカップルに目を奪われ、サインを書く手が止まる~


~夜。ホテルにある高級レストラン。我鷹・馬杉・富良の3人がテーブルに座る~
我「俺の祝勝会じゃなかったのか?」
馬「祝勝会よ」
我「なんでコイツがいる?」
~そう言って、同席している富良を指差す我鷹~
富「俺が馬杉さんに無理を言ったんです。新団体に俺も連れて行ってください」
我「『俺も』って、他に誰がいるんだ?」
馬「私よ」
我「お前はJMPの看板女流だぞ」
馬「ミーコちゃんがいるし、他にもたくさん看板はいるわ」
我「ふん。じゃあ、今日こそ上の部屋に行くんだな」
馬「いかないわ」
富「えっと、俺は・・・」


~満強位決定戦決勝会場~
~ホテルのラウンジで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる岩田。そこに鉄壁が通りかかる~
岩「鉄壁」
鉄「おはようございます」
岩「見たか?」
鉄「JMPの記事ですよね」
岩「ああ。来年の団体対抗戦、ライバル団体が分裂してくれるのは、正直助かるな」
鉄「そうですね」
岩「で、今日はどうだ。勝てそうか?」
鉄「解りません。すぐ後ろにいるのが、あの二人ですから」
~そう言いながら、別席の八崎と、会場入りしてきた茶柱に視線を送る~
岩「決勝で三人同卓するのは、鉄壁の初優勝の時以来になるのか」
鉄「・・・」
岩「対抗戦、爆岡がいないのは痛いな」


~JML道場~
羊飼「ウチのメンバーで勝負になると思うか?」
柊(ひいらぎ)「麻雀ですからね。何とかなるんじゃないですか?」
羊「団体の存亡にも関わる闘いだぞ?」
柊「移籍してきた天才少女もいるし」
羊「メリーちゃんもいるしな」
柊「いや、トリプル役満男の方が・・・」
羊「なんとか5人揃うか」
柊「いや、1コマ足らない気もしますが」
羊「柊、出場しないつもりなのか?」
柊「いや、メリ・・・」


~居酒屋のカウンター~
月見「ウシュー!おかしいだろ!!」
薄影「こんなこともあるよ」
月「なんで参加団体が増えたからって、ウチが合同チームで参加しなきゃいけないんだよ!」
薄「主催者のウラメ&ドラポンズの社長を、シルルがボコボコにしたからじゃない?」
月「そんなことしたっけ?」
薄「はぁ」
月「だったら、数合わせのアマチュア連合チームの分を削ればいいじゃん」
薄「アマチュアを参加させることで、『何百チームの頂点』って謳えるからね」
月「某出版社の大会と同じ戦略か!」
薄「まぁ、雀賢者の彼とかが仲間になるのは心強いよ」
月「あんな奴、運だけの麻雀じゃないか」
薄「キミが言うな!」


~豊臣のアパート~
織田「とおし!とおし!とおし!ツモォ!」
徳川「あんだあ?また豊臣のトビだあよ」
明智「練習にならないぜ」
豊「づがん」
織「対抗戦のアマチュア予選は3人1チームなんだろ?」
明「ああ。上位2チームが合同で本大会参加だ」
織「2位のチームは一人補欠にまわるんだったな」
徳「豊臣は別チームで参加するだあよ」
豊「じゃあ、なんでウチで打つんだよ」
織「お前と打たないと、調子が上がらん」
徳「朝まで打つだあよ」
豊「ちょっと買い物に行ってくる」
明「逃げるな」


~シャインリバーの勉強会会場~
梨積「昨日の鉄壁の対局は見たか?」
夏月「見ましたよ」
梨「19回戦の南2局で親番を放棄した選択、君はどう思った?」
夏「茶柱さんのダマ聴5200の当たり牌を掴んで、降りた局ですね。満強位戦ならではじゃないですか」
梨「オカなしルールだとトップにそこまで執着しなくても、というところか」
夏「俺だったら放銃してたでしょうね。その代わりに次局の6400を12000にしてアガってますがね」
梨「ハハ。君らしいな」
夏「団体対抗戦はオカありですから、ウチの方が有利だと思いますよ」
梨「だが、赤ありの競技ルールが未知数なのはウチも同じだ。研究は続けないとな」
夏「メンバー候補に俺は入ってるんですよね?」
梨「2冠王は外せないだろう。よろしく頼むよ」
夏「来週、3冠王になるつもりなんスけど」
梨「悪いな。私も4冠を減らすつもりはないよ」


~富良のスマホに我鷹からの着信~
我「明日から北海道に行ってこい」
富「はあ?急過ぎません?」
我「時間が無いんだよ。年内にはプロ団体の概要をマスコミ公開しなきゃならん」
富「そうなんですか?で、何でまた北海道なんですか?」
我「選手探しに決まってるだろ。実績のある選手が北海道のどこかにいるらしい」
富「あんた、北海道の広さ知ってんのか?」
我「選手プロフィールはLINEしとくから、団体所属のサインだけでも貰ってこい」
富「我鷹さんと馬杉さんは?」
我「俺は名古屋。馬杉は神戸だ」
富「経費とか落ちるんですよね?」
我「・・・」
富「切るな!!」


~RMU(リアル・マージャン・ユナイテッド)入会審査会場~
鸛(こうのとり)「今日は朝から競馬するつもりだったのによー」
多「急に悪いけど手伝ってよ」
鸛「魅力的なおねーちゃんが入会する、っていうなら話は別だけどよー」
~多口の視界に見覚えのあるカップルが入る~
多「あ・・・」
鸛「ん?鷹宮?」
多「違う」
鸛「今日、水着審査ってあったっけ?」
多「あるわけないだろ」
鸛「ちっ!代表になって丸くなりやがったな!」


~雀荘『エルコンドル』。本日は麻雀プロのゲスト大会~
端境「本日のゲストプロは、JMLの大型新人『息の根とどめ』プロと、ミスタースカイこと『空沢』プロです」
客「とどめちゃ~ん!!」
客「ミスタースカイ!トリプル役満動画見ましたよ!」
~歓迎の声が収まった後、従業員・端境のルール説明が始まる。ミスタースカイが小声でつぶやく~
空沢「俺みたいなヤツの麻雀でも、喜んでくれる人がいるんだな」
とどめ「ミスタースカイの麻雀、面白いもん」
空「お前の麻雀の方が、だいぶ変わってると思うがな」
と「へへ。今日は、お客さんに楽しんでもらおうね!」


~名古屋の雀荘『東へ西へ』。個性的な髪型をしている男と年配客がやりあっている~
男「リーチ」
客「ポン!へへ、そいつはドラだぜ。ほらノーチャンスだ」
男「ロン。8000」
客「は?麻雀知ってるのか?」
男「勉強中だ」
客「だったら教えてやるよ。単騎より両面の方がアガり易いんだぜ」
男「そうか。勉強になるよ。リーチ」
客「6sチー!!オラ、9s!」
男「ロン。18000」
客「ラスト!帰る!!」
~卓が割れる~
店員「卓をつなぎますので、少々お待ちください」
~男の上家に座っていた我鷹が口を開く~
我「あんた、爆岡弾十郎さんだよな」
爆「・・・」
我「次の半荘が終わったら、少し付き合ってほしい」
爆「・・・」


~夜の街~
千曲「ウチは愚人だらけの弱小団体だからなぁ。日本プロ麻雀ソサイエティと合同チームなら、チャンス出てきたかもな」
ポッチカリロ「そうだな」
千「ただ、出場枠は5人だぜ?何とか選抜されような」
ポ「そうだな」
千「ポッチは対抗戦のルール解ってる?」
ポ「一発・裏ドラ・赤ドラ・役満の複合あり」
千「あと、役満にはレア度に応じた御祝儀ポイントがもらえる」
ポ「そうなのか」
千「ああ。例えば四暗刻・大三元・国士無双なら+20pt。小四喜・字一色なら+40pt」
ポ「なるほど」
千「派手な大会にしたい、っていう主催者の意向らしいぜ」
ポ「ふむ」
千「『チョンボでポイントが減るなら、役満でポイントが増えてもいいだろ!』ってことらしい」
ポ「なるほど」

千「ところでポッチ。おまえ、うちの団体の名前分かるか?」
ポ「名前?う…む…???」
千「そうなんだよな。だから合同チームにされちゃったのかなぁ」


~雀荘『どら道楽』~
宝燈美「え?大介にも出場資格があるの?」
鉄「うん。満強位戦主催の雀竜王戦を、今年勝ってるからね」
宝「でも戦力にならなくない?」
鉄「普通ならね。でも今回の役満祝儀ルールだと、他のチームも少し嫌かもしれない。補欠に名前だけでも入れとこうかな、って」
宝「そっか~」
~ドアを開けて当大介が入店~
大介「うぃ~す。マスター!アマチュア予選の申込票、持ってきたぜ」


~冬~
~さだめだの部屋~
~さだめだの携帯にめろん畑から着信~
め「先輩!私、合格しました」
さ「おめでとう」
め「先輩はどうでしたか?」
さ「まだ連絡が来ないんだ。不合格かもしれない」
め「大丈夫ですよ!きっと合格です」
さ「面接の時に、多口さんの前で緊張しちゃったんだ。鸛さんも怖かったし・・・」
め「極限堂さんが試験官だったのにはビックリしましたね!」
さ「そうだね!また一緒にやりたいな」
め「大丈夫です!きっと合格です!」
さ「うん。もうちょっと連絡を待つよ。電話切るね」
め「はい。おやすみなさい」
~さだめだが通話をオフにしてすぐに、着信が入る。画面には『芥川』の文字~


~雀荘ミスチョイス~
マスター「ドラ夫ちゃんからの連絡はまだ無いのかい?」
ミエ「うん」
マ「相変わらずの風来坊っぷりだね」
ミ「慣れたわ。待つのには」
マ「でも、アマチュア予選には1人、強い人がいないと厳しいんでしょ?」
ミ「うん。まず、3人で各5回戦ずつ大会形式の予選を闘うの。ポイントを合計して、上位4チームが決勝卓へ。今度はオカ・順位点なしルールで3人が1半荘ずつ。」
マ「ポイントは持ち越し?」
ミ「予選のポイントは決勝卓に進んだときに1/5されるわ。その持ちポイントから、3人リレーで打つの。最終戦はどのチームもエースが出るだろうから」
マ「なるほど。ドラ夫ちゃんいないと大変かもね」
ミ「その場合は決勝卓に残るのも無理よ」
♪『ピンフ!ピンフ!ピンフ!ピンフ!』
~ミエのスマホが鳴る~


~苫小牧の雀荘~
~やつれた富良が麻雀を打っている~
客A「明日の有馬は、ゴールドドトッパーから行きたいんだけど」
客B「理想オーナーブリーダーのとこの馬か」
富(理想オーナーブリーダー?)
客C「あの馬ならやってくれるべさ」
富「有名人なの?」
客A「ああ。キョウワアリシバの肌馬からあれほどの馬が出るとはね。さすが理想オーナーブリーダーだわ」
客B「この辺の牧場に活気を戻してくれたよな」
富「ツモ。3000・6000。ラスト」
客「ぐわぁ!あんちゃん強いなぁ」
富「次、ラス半で」
客C「連勝中なのに、終わるのかい?」
富「はい。やっと東京に帰れそうなんで」


~BUTAR SAXで麻雀ダイジェストを開く二人の女性~

『我鷹・馬杉が抜けても本命はやはりJMPか?』
『波留・積倉の2枚看板に、風呂糸・五条・鯣ら中堅選手。女流も今井・出島・反田・更科と粒揃い』

丘葉「私の名前がなーい」
恭子「揚羽さんの記事ね」
丘「いーなー。恭子ちゃんは女流の先頭に名前があって」
恭「(あえてスルー)寧香さんは私達と闘いたいはずだから、選考会、頑張らないとね」
丘「へ?選考会?」
恭「聞いてないの?アマチュア予選と同じ形式で、JMP内で5名を選出するの」
丘「じゃあ、私も師匠と一緒に闘えるかもしれないの?名前が無くても?」
恭「名前が無くても」
丘「頑張りまふでふ」


~関西弁が飛び交う雀荘~
馬(凡庸な打ち手だわ)
馬(名前も河田だし)
馬(飲み物がメロンソーダじゃないし)
馬(髪型だけだったかしら)
馬「ツモ。4000オール」
河「やるのぉ。惚れたで、ねえさん」
客「寧香さんを知らんの?」
河「有名なんか?」
客「女流プロの頂点やで」
河「こんな美人さんがなぁ」
馬「ツモ1300は1400オール」
客「早っ!!」
河「よっしゃ。そろそろやな」
馬(そろそろ?)
河「メロンソーダくれや」
プロペラが回りだす。


~JML道場~
~年明けの新聞に掲載された、各団体の予想メンバー表がモニターに写し出されている~

JMP
◎波留、積倉
◯風呂糸、今井
▲丘葉、五条、出島

満強位戦
◎鉄壁、茶柱、八崎
◯稲瀬
▲当、海鼠

シャインリバー
◎梨積、朧
◯些渡、無頼堂
▲岬、ルフラン

JML
◎柊、羊飼
◯息ノ根、空沢
▲減田

RMU
◎多口
◯鸛、安部川
▲歩地中、極限堂

合同チーム
◎月見、ポッチカリロ
◯薄影、千曲
▲積乱雲

新団体
◎我鷹、馬杉
◯爆岡、群鷗
▲富良
?(理想雀士)

夜室「まさか、こんなところで田中の名前が出てくるとはな」
羊「有馬記念の勝馬、あいつの持ち馬らしいじゃないか」
夜「あんな名前なのに、何で誰も気付かなかったんだ?」
羊「柊はどうしてる?」
夜「表情はいつも通りだが、視線は定まっていなかった。動揺しているのかもしれない」
羊「あいつはうちのエースだぞ。田中のヤツめ」
~突然、音楽が鳴り響き、道場の扉が開く~
理想雀士「あけましておめでとう!HAPPY NEW YEAR!」
羊&夜「田中!!」
田中「田中って言うなー!理想雀士だ!」


~春~
~アマチュア予選会場入口。二人の男が立ち話をしている~
芥川「アカン。誰とも連絡がつかん」
番寺「お前、実は友達いないのか?」
芥「やかましいわ。宿命田のヤツに合格通知がちゃんと届いてたら、こんなことにはならんかったんや!」
番「あの坊やは、相変わらずツイてないんだな」
芥「ほんまや!直前になって『実は合格してたらしくてアマチュア予選には出られない』とか言い出しやがって」
~2人に近づいてくる見覚えのある3人組~
等々力「あんたらも出るのか?」
芥「等々力。日暮に大泉」
日暮「あと一人は?宿命田くんあたりでしょうか」
芥「うっさい、ボケ。あっち行けや」
等「ああ、行くぞ。番寺さん。あのときの恩返しを、今度こそさせてもらいますよ」


~入口のそばに、頭に箱を被ってる小柄な男性がいる~
豊「つかんぽ」
織「なんだ、豊臣。明菜もミルミルもダメだったのか?」
徳「残念だあよ」
明「悪いが、先に行くぜ」
~一人取り残された豊臣を発見する、番寺と芥川~
番「あんた、メンバーから溢れたのか?」
豊「うん」
番「良かったら、我々と一緒に出場しないか?」
芥「兄さんラッキーやで。俺らと一緒やったら優勝狙えるで」
豊「ほんと??(涙目)」
芥「よっしゃ!行くでぇ!」


~富良が、観客席から双眼鏡で会場を覗き込む。積倉が後ろから話しかける~
積倉「やあ」
富「なんだ、あんたか」
積「何をしているんだい?」
富「我鷹さんの命令で、選手を探しているんだ」
積「頑張っているみたいだね」
富「俺だけ、北海道でのスカウトに失敗してるからな」
積「『スカウトされた選手のみで構成する麻雀団体』。我鷹さんらしい、素晴らしい試みだよね」
富「それにしても選手が多すぎるぜ。あんたは目ぼしい選手とか知らないのか?」
積「持杉さんと番寺さんには特に注目してるね。他だと五十凹さんや新月さん、女性だと深森さんとかかな。あ、瓦さんがこっち見てる。集中できてないみたいだね」
富「詳しいんだな」
積「これだけのお祭りだからね。楽しみで色々と調べたよ」
富「なあ。あんたは以前、『この業界はもっと大きくなる』って言ってたよな」
積「言ったね」
富「こんな、400人も一度に集まる大会もイメージしていたのか?」
積「いや。まだまだ。もっともっと、とんでもなく大きくなるさ」
富「それは楽しみだ。お、第一試合が始まる」


(終)

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