麻雀はいすくーる・手役派学級(5)

第5局 ルールとマナー

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今回の主な登場人物
・対馬和馬(つしま かずま) 元気。野球部。
・三日音刻子(みつひね ときこ) 情熱的。陸上部。
・七条奈々子(しちじょう ななこ) 冷静。雀聖。
・盃一香(さかずき いちか) 病弱。ブラコン。
・タンヤオ(タン ヤオ) 俊敏。防御力△。
・箱下潜(はこした もぐる) 〇八先生大好き。雀士。

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東一局 南家 10巡目 上家から(🀞6p)が河に打たれたところ

対馬『ポン!ポン!ポン!』
担任『対馬、さすが野球部の次期エースだなぁ。ちゃんと相手に伝わるお手本のような発声だ。ただな、返事は「ポン」じゃなくて「はい」だぞ。』
対馬『ポン!』
担任『・・・うん、まぁいいや。卒業までには直せるといいな。とりあえず、対馬はポンに一票、と。』

三日音『この巡目では、まだ鳴きたくないわね。』
対馬『三日音さん!僕はポンして(🀠🀡89p)落とし、トイトイを目指したい!君だって、やればできる!!』
三日音『鳴こうと思えば鳴けるけど。サンアンコーがつけば鳴いても満貫になるし。でも、それにはあと2枚も自力でツモらなければならないの。同じく2枚引きに期待するなら、スーアンコーテンパイまで夢見るメンゼン進行にするわ。』
七条『メンゼンには賛成。でも、私はもっと現実を見る。(🀞6p)が一枚減ったことだし。縦重なりに優秀な牌を引いてきたら、(🀟7p)を打ってチートイツに決め打つ。』
盃一香『七条さんの意見も分かるけど、何もチートイに決め打たなくてもいいとおもうな。せっかくイーペーコーの種が二つもあるんだから。(きっと、お兄ちゃんも・・・)』

担任『も鳴かない、か。「鳴く」は対馬くらいで、「鳴かない」が多数派ってとこだにゃ。』
対馬『ポン!!』
(生徒一同)(にゃ??)
担任『この手牌、実は今日の午前4時半頃の手牌にゃんだけど。』
七条『先生、雀魂始めた?』
担任『なんでわかった?七条、すごいにゃ!!』
七条『うん。なんとなくそんな気がしただけ。』
担任『それにしてもネット麻雀って便利だなぁ!点数計算できなくてもいいし、鳴ける牌が出ると待っててくれるし、チョンボになることがないし!でも、みんな強すぎるにゃ!!』
三日音『先生、ゲームはほどほどにしないと、大人に叱られますよ。』
担任『はいぃ。実は先ほど、教頭先生にこっぴどく・・・(しゅん)』
(生徒一同)(ため息)

盃一香『寝不足の状態で麻雀を打つのは、ミスも増えるのでオススメしません。』
担任『そうなんだよなぁ。この手も鳴こうとしたらミスしちゃって。しかもバグか何かで牌が切れなくなっちゃってさぁ。』
七条『回線落ちじゃなくて、バグ??』
担任『そうなんだよぉ。俺も対馬と同じようにポンしようとしたら、間違えてチーのボタン押しちゃってさぁ・・・』
盃一香『寝不足は、絶対ダメ。』
担任『でも、なんとかしようと思って。まだタンヤオでいける!って気付いて(🀡9P)を切ろうとしたんだけどさ、(🀡9P)が切れなくて。それで仕方なく(🀅發)を切ったんだよなぁ。』
タンヤオ『それ、バグじゃないっす。「喰い替えなし」っていうルールっす。あと、そこからはオイラでもタンヤオじゃ粘んないっす。』
担任『「喰い替えなし」?聞いたことある気がするな・・・』
【 キーンコーン加槓コーン 】
担任『お、時間だ。後で誰か「喰い替えなし」を教えてくれよ。じゃぁ、授業頑張ってな。居眠りするなよぉ。』
(生徒一同)『お前こそな!』

【 放課後 】

【 部活終わりの対馬が河原で佇んでいる。そこに偶然通りかかった箱下。 】
担任『おぉ、対馬どうしたぁ?』
対馬『ポン!』
担任『なんか、放課後の河原に教師と生徒がいると、青春ドラマみたいでいいなぁ。せっかくのシチュエーションだし、対馬は相談したい事とか無いのか?』
対馬『あります!』
担任『おぉ、本当か!何でも言ってくれ。こういうのに憧れてたんだぁ!』
対馬『僕、今日の「鳴き判断」でも一人だけ違っていたし、気持ちが昂ると「はい」が言えないし。自分だけがダメなヤツなんじゃないかと、少し怖いんです。』

担任『そんなことで悩んでたのか?』
対馬『ポ、はい。』
担任『俺は、対馬のことをダメなヤツなんて思った事は一度も無いぞ。それはクラスのみんなも同じだと思うし、今まで対馬が出会ってきた人も、みんなそうじゃないかな。ただ、「変なヤツ」だとは思う。』
対馬『・・・』
担任『でもな、「ダメなヤツ」と「変なヤツ」は全然違う。誰だって自分以外の人間は「変なヤツ」なんだ。考え方が違うのは当然のこと。うちのクラスにはなぜか双子・三つ子・四つ子といるけど、あいつらだって全然違う。今日の問題だって「鳴かない」派の連中も、それぞれ違う構想をしていたじゃないか。』
対馬『!!』

担任『人は違って当たり前。その「違い」によって生まれてしまうギャップを埋めるのが、「優しさ」や「思いやり」だ。』
対馬『素敵な言葉ですね。』
担任『だろ?麻雀を教えてくれた婆ちゃんが、よく俺に言ってくれてたんだ。「だから、色々と違いがある人が集まっている場所には、たくさんの優しさが生まれる」って。』
対馬『素敵なお婆さんですね。』

担任『な!だから、「変なヤツ」がいっぱい集まってるウチのクラスが好きだし、対馬の事も、俺は好きなんだよなぁ。頼むからさ、自分の事を「ダメなヤツ」なんて言わないでくれよ。』
対馬『ポン!』
担任『良かった。対馬のおかげで教師としての夢が一つ叶ったよ。あと、たまにはチーもしろよな。』
対馬『ポン!!』

(終)

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