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その時にはわからなかったりするんだよね
『17才 -at seventeen-』
1994年4月28日から同年9月1日まで、フジテレビ系列で放送されていた日本のテレビドラマ。主演は女優の内田有紀で、『ボクたちのドラマシリーズ』からの派生作品。放送時間は、毎週木曜20:00 - 20:54(JST)。
<あらすじ>
羊が原に住む翠はセントウェルトン高等学院に通う高校生。同級生の恭一や玲奈、雄司、浩介、稔らと共に平穏な高校生活を過ごしていたが、そこに幼なじみの巧美が突然現れる。
「17才」
と聞いて真っ先に思い浮かんだのは、昔夢中になったドラマだった。
当時、録画したこのドラマのビデオを
文字通り食い入るように、擦り切れるほどに繰り返し見ていた。
今でもタイトル曲やエンディングテーマを耳にするとあの頃に戻ったような気がして強烈にワクワクする。
部活に汗を流す姿が描かれるわけでもなく
切ない悲劇に襲われたりしないし
大好きな誰かと一発逆転両想い!的な恋愛が展開されるわけでもない
いわゆる王道のストーリーは展開されない。
それなのになぜ、私はそんなにもこの物語に惹かれていたのだろうか。
今振り返るに、この一見するとわかりやすい大事件が起こらないことがとても私を惹きつけたのだろうと気づく。
なんの変哲もない日常のなかに隠れていた(隠していた)
今まで直視しようとしなかったことが
ある出来事がきっかけで次第に浮き彫りになっていく。
ふと見渡した周りの変化に気付いた時の焦燥や
昔はあんなに楽しかった冒険やいたずらも
もうあの頃のように楽しめない自分自身に気付く
大人のような物分かりの良さげな理屈で
自分の本心に蓋をしていることに気付く
その過程のそれぞれの葛藤が、身に染みてわかりすぎるほどわかるのだ。
この物語は、幼馴染の一人が帰ってきたことで久しぶりに集まって過ごすようになった男女7人の高校生最後の夏を描いている。
太陽のように、子供のころから変わらないような無邪気さで自由に生きる彼女が巻き起こすトラブルに巻き込まれながらも
それぞれが抱える葛藤や淡く苦い恋心、将来への漠然とした不安に向き合うきっかけや勇気をもらったりする。
大人ぶって見せても
気持ちがまだついて行かなかったり、割り切れなかったり。
現実に向き合うのが怖くて、逃げてしまったり
今までのようにそれで何とかなるんじゃないかと
都合の良い期待をしてしまったり。
妙に物分かりが良い自分、殻が破れない自分にもどかしさを覚えたり
自由に振舞っている仲間と一緒にいることで一瞬自分もまだ子供でいられるんじゃないか、と淡い夢を見たりする。
でも、時間は待ってくれない。
いつまでもこのままではいられないことを、誰もが解っているから
変わってしまう自分が怖くて不安で
自分が自分でなくなってしまうようで
どうしようもなく心細い
そんな現実に直面せざるを得なくなっていく。
あれから30年以上経ち、私はすっかり大人という時間に慣れてしまった。
だからあの時の漠然とした将来への不安も、違うものへと変化してしまった。
私自身の17才だったころのことは、実はぼんやりとしか思い出せない。
それが大人になったということなのだろうか。
「17才って、一番良い季節かもしれない。
でも一番いい季節って、その時にはわからなかったりするんだよね。」
というセリフが妙に頭に残った。
17才だったあの頃
世界はまだまだ広くて
でも自分が何者なのかも、何がしたいのか、どうしたいのかもわからなくて
ずっとこのまま大好きな友達と一緒にいられたらいいのにと本気で思っていた。
進路をどうするのか
自分は何になりたいのか
そんなことを言われてもわからない
そう思って逃げていた時期もある
だんだん自分の中に覚悟が決まって
目の前のことに向き合えるようになったころ
私の17才という季節は自然に、そっとその幕を下ろした。
TVの中の彼らがそうだったように。
私はその葛藤こそが
あの頃のきらめきの根源であり
宝なのだと信じている。