R5在学中司法試験不合格体験記


はじめに

令和5年度司法試験を在学中受験してわずかに点が届かず不合格となりました。1年以上前のことなので不正確なところがあるかもしれませんが、当時の試験に対する分析を思い出しながら書いています。

【⚠️注意⚠️】令和5年度司法試験の内容に踏み込んでいるため、これから問題を解く予定がある方はご注意ください。

全体的な敗因

R5司法試験の敗因は大きく分けて4つありました。
①短答の点数が合格者平均と比べて低い
②過去問を起案して第三者にみてもらう機会を設けていなかった
③網羅的な勉強が不十分だった
④他の人と同じことをしていなかった
以下では、それぞれについてみていきます。

①短答の点数が合格者平均と比べて低い

短答の結果は憲法33点、民法43点、刑法38点の計114点でした。確か合格者平均は126点あたりだったと思うので、合格者平均と比べて12点低かったわけです。
正直なところ、自分の短答の点数と合格者平均が分かった時は、そこまで危機感を覚えていませんでした。
「いやいや12点のビハインドなんて論文8科目で割ったらそれぞれ1.5点分だろ?1科目各1.5点多めにとれば捲れるならそこまで悲観する必要ないね。」
今考えると恐ろしいものです。私はこの12点があれば涙をのむことがなかった訳ですから。

短答については、平均程度をとればよいといった考えや、短答で最終結果まで決まるといった考え(140点以上あれば強く合格推定!)など、様々な見解があると思います。個人的な考えとしては、短答はせめて合格者平均以上は取るべき(であって、それ以上を目指すかどうかは自分の論文の勉強の進捗状況次第)という考えです。私のような論文も実際そこまで出来ていなかったボーダー勢にとって、短答の1点は人生を分かつことを身をもって体験したからです。
まぁ令和6年司法試験でも合格者平均にギリギリ届かなかった訳ですが。多分短答苦手なんでしょう。

短答を伸ばすためにはどうすればよいのか。
本記事は不合格体験記なので、この点については令和6年司法試験合格体験記に譲りたいと思います。

②過去問を起案して第三者にみてもらう機会を設けていなかった

振り返ってみると、(多分)令和5年度司法試験を受けるまで定期試験以外で自分の答案の添削を受けたことがありませんでした。過去問を起案しても自己添削して放置していました。ロー入学後早い段階で自主ゼミを組むべきだったんだと思います。
また、そもそもあまり過去問を時間を計ってフル起案してもなかったです。細かめの答案構成をするだけで、2時間使って書き切るといった訓練を怠っていました。


③網羅的な勉強が不十分だった

確かに過去問に触れてはいました。また、演習書で問題演習をしていました。
過去問については直近3年分を除いた数年分しかやってなかったと思います(直近3年の出題論点は出ないという風説を信じていました)。また、演習書も各科目1、2冊ほどしか使っていませんでした。そうなると、必然的に触れた分野・論点が少なかったんだと思います。また、司法試験ではありがちな、未知の問題を既存の判例や条文、制度の趣旨から解くという機会が少なく、その訓練を積めていなかったです。
何も手を広げてマイナーな論点もことごとくやらなかったからダメといいたいわけではありません。ただただ全体に対して浅い勉強しかできていなかったという感じです。

④他の人と同じことをしていなかった

司法試験は相対評価の試験です。他の大多数の人が出来ていなければ自分が出来ていなくても沈みません。ただ、他の大多数の人が出来ているのに自分は出来ていない場合は沈みます。司法試験はこのような事態をまず避けるべき試験と言えるでしょう。このことについて、司法試験受験生は何度も耳にし、当たり前の共通認識となっているかもしれません。「何を今更そんなことを」、そんな感想を多くの人が持つと思います。しかし、個人的には最も重要で、かつ、試験の合否に直結しかねない言説だと思っています。

では、私は何をしていなかったのか。
具体的には、私はTKC模試をはじめ、模試を一切受けていませんでした。その理由については、経済的事情もありますが、模試を受けることの意味をよく理解していなかったことが大きいでしょう。模試は多くの受験生が受けることから、模試と同じ論点が本試験でも出た場合、大きなビハインドとなる可能性が高いです。他の人は本試験と同様の状況で解答し、参考答案等でガッチリ復習してる訳ですからね。
また、演習書について、必ずしもメジャーなものを使っていたわけではありませんでした。やはり他の多くの人が使っている演習書は使っておくべきだったのだと思います。
さらに、予備校の答練も受けていませんでした。多くの人が受けている答練である場合、その答練で出た論点については上記模試と同様に、書き負ける可能性があります。当時何らかの手段で予備校の答練の出題論点を把握しにいくべきであったといえます。

科目別の分析

以下では、科目別にランクとなぜそのランクになったのかをザックリと紹介します。
再現答案は予備校に売ってしまったため、記載できません。
如何せん1年以上前のことなので記憶違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

論文経済法

上位約45%
1問は企業結合の処理手順が曖昧で、当日混乱しました。もう1問は条文選択をミスりました。
企業結合の処理手順は複雑なところがあるのに腰を据えて勉強しなかったこと、また、経済法は論点の頻出度に大きく差がありますが、頻出でない条文・論点まで網羅的に理解していなかったことの2点が主たる敗因でした。

論文憲法

C
生存権と平等権という意外なテーマに面食らい、おぼろげな知識をもとに議事録をペタペタ貼ってました。
議事録が長い場合の情報処理能力やマイナー論点への理解度が足りませんでした。過去問を起案しておくべきだったのだと思います。

論文行政法

A
ロー時代は得意科目でした。
判例を紹介した上で事案との異同を正確に論じ、ほぼ全ての論点に対して的確に答えたため、この評価が付いたのだと思います。

論文民法

B
配偶者居住権の余事記載、受領義務・損害論を詳述していない、物上代位について妥当な理論・結論を導けていない、といった答案でした。論点となるべき事項や当該事案における特殊性について深い議論ができていない、浅い答案になっていました。
ただ、請求→抗弁……と要件事実的に整理して、要件充足性等基本的な部分に関しての記載を充実させていたために一応「耐えた」のだと思います。

論文商法

E
廃棄物を産んでしまいました。
株式の準共有?瑕疵の連鎖?一度も実際に書いた事ねーよ!
条文分からず三段論法すら崩れて作文。
敗因は過去問演習・演習書演習不足と単純な知識不足でした。

論文民訴法

A
違法収集証拠の論点を知らず(使ってた論証集にはバッチリ記載されていました)、刑訴法の違収排の考え方と民訴法の信義則の条文を使って規範をでっち上げ当てはめ大魔神。第2問は不利益変更禁止の原則以外何を問われているかわからず。
そんな感じで成績通知書が来るまではEかなと思っていました。蓋を開けてみればAだったので分からない時は分からないなりに自分の中で使えるものを使って事実を拾いまくるのが「耐える」ための策だと感じました。

論文刑法

C
刑事系は受験生のレベルが高いため、少しのミスで評価がガクッと落ちることを実感。実はあまり覚えていないが、おそらく理論面での記述の正確性が高くなかったのだと思われる。

論文刑訴法

D
実況見分調書について実際に起案したことが少なかったが故に書くべきことを書けなかった。また、時間も足りなかった。
過去問演習で何度も解いていれば、ある程度の頻出論点であれば書き負けなかったであろうし、タイムマネジメントに失敗することもなかったといえる。つまり主たる敗因は司法試験の過去問の演習不足。

おわりに

再現答案を記載できないため、書き終えてみるとあまり参考にならない分析となってしまいました。
強いて共通して言えることを挙げるならば、本試験当日から1年以上経った段階で、何をどのように書いたか思い出せない答案は低い評価になりがちということでしょうか。妄言かもしれませんが、後になって本試験の現場で何を書いたかを思い出すことができ、「このように書くべきだった、この事実はこういう風に使ったが実はこういう風に使うべきだったのかもしれない」などと後悔できる答案はいい評価が貰えるのかもしれません。

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