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Photo by
ayakonishihara
美しく着るということは
喫茶店の窓から午後の街並みを
ながめていたときです。
交差点をゆく、
お洒落上手なひとを見かけました。
白いシャツに重ねているのは、
エメラルドグリーンのたっぷりしたセーター。
シャツの襟元には
ネイビーと緑と白のチェック柄スカーフが、
ちょうど
セーラー服の三角タイのように
結んであります。
バッグは黒のショルダー。
ボトムは濃いデニムの長いタイトスカート。
真っ白の靴下と
黒く艷めくバレエシューズの組み合わせが、
茶目っ気ある清潔感を生んでいます。
髪先をぱつんと切った栗色のボブで
縁の丸い眼鏡をかけている女のひと。
はっと目を引きました。
スポーティな配色のチェック柄が
遊び心ある見事なアクセントになって
秋色に色づきはじめた街に、
さわやかに映えていました。
*
「服を着る」「装う」ということって
とても社会的なことだと思うのです。
自分が今どんな気分か、
どんなふうに生きているかを
一瞬で周りに伝えられる。
そして、忘れがちだけれど、
その姿を自分自身で見ることは、
鏡や写真を通してしか不可能なのです。
当たり前だけれど、つまり、
ファッションってほとんど、
それを見る人のためのものだな、と
思っているのです。
お洒落は、自分が楽しむためにするもの
とばかり思っていましたけれど
たしかに
お洒落は、見てくれる人に向けたもの
でもあります。
「私のことを、あなたに知ってほしい」
「あなたに、少しでも良く見てほしい」
「これを着ると、あなたはどう思うだろう」
という
キュートな欲望とステキな緊張感が
お洒落心を育てます。
美しく服を着ること、
美しく服を着たいと願うこと、
それは、相手への
きよらかな心配りだと思うのです。
*
お洒落上手なひとを見て
私まで心なしか軽やかな気持ちです。
カップのミルクコーヒーを飲み終えて、
時計はまだ3時半を差しています。
秋の昼下がり。
私もさっそく
新しいスカーフを一枚、
探しに出かけようと思います。
*
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