死の淵を見た男 著:門田流将
副題:吉田昌郎と福島第一原発
たまたま家にあったので読んで見た本。
東日本大震災後の津波で福島第一原子力発電所の電源喪失、原子炉の水素爆発で放射能汚染という事態に陥ったその時、その前後のドキュメント。映画『フクシマフィフティ』の原作だそう。
東日本大震災での福島第一原子力発電所のことは、津波のため制御を失い、発電所は爆発を起こし、放射性物質が福島県の一部を汚染したという事だけしか知らない。 この事故も頭のいい人たちが想定したこと以上のことが起こったから仕方がないと思っていた。私は自分ができないことを人に求めてはいけないと思っているから。
私の住んでいる地域からは福島遠い。大震災、津波の話が先行して原子力発電所の話は要約で伝わるだけ。そして出てくる話はやることなすこと非難ばかり。放射能汚染によって故郷を追われた人々には申し訳ないけどだんだん私の記憶から薄れていた。
この本を読んで、東京電力の社員、協力会社、消防、自衛隊がどんな思いで爆発しそうな原子力発電所に立ち向かったのか、官邸は批判はされたが公民問わず誰もが一生懸命だった事実。私は知らないところで私の知らない人に守られていたと思うと胸がいっぱいになった。何度となく本を読みながら涙し心揺さぶれた。最近にしては珍しい本に巡り会えたと思っている。
福島第一原子力発電所の爆発事故について情報が少なかった、単に私の興味がなかったからかもしれない。しかし、東京電力の吉田さんについてはなぜか知っていた。一本筋の通った人という印象。事故当時に東京電力本店に対し、歯に衣着せぬ物言いで現場の実態を画面越しで訴えた人。上司にこんな人がいればいいなと素直に思った。志なかばで病に倒れ、現場に戻ること亡くなってしまう訳だが、吉田さんの判断力、統率力がなければ日本は放射能汚染で3つに区分けされたかもしれない。
まだまだ課題山積な福島第一発電所。でもここまでこれたのはこの本で活躍した人々のおかげ。まだ、活躍している人たちかな。
もし彼らの頑張り、思う気持ちがなければここまで回復できなかったし、今幸せに暮らせていない。あったことのないどこかの誰かに感謝を捧げたい。そんな気持ちにさせてくれた一冊だった。