ドイツ人がバウムクーヘン知らなかった
ドイツから遊びに来た知人のお子さんに、バウムクーヘンをご馳走したら「おいしいですね、これなんて言うお菓子ですか?」って聞かれました。
言ってる意味が分かりません。最初に思ったのは
「あ、この子ドイツ人じゃなかったのか、思い込みって怖いな」
でした。お母さんは日本人だし、お父さんはドイツ人でドイツに住んでるけどドイツ人じゃないんだ…って、そんなわけありません。
「バウムクーヘン知らないの?」と尋ねると「これがバウムクーヘンなんだ、名前は知ってるけど初めて食べました」という回答でした。
旧東ドイツの郷土菓子なのです
なんでもバウムクーヘンは旧東ドイツの郷土菓子なので、西側の人は名前だけは知ってるけどほとんど食べたことがないんだそうです。
特に東西ドイツ統一後に生まれた若い世代の子は、一部の地域の人以外は、食べたことが無いどころかほとんど知らないということでした。
そしてお祝いごとのときにたまに食べる高級菓子なので、もともとポピュラーなお菓子では無いとのこと。
これは意外でした。勝手なイメージで、日本人が大福や羊羹を食べる感覚で毎日食べまくってるもんだと思っておりました。
思い返すとドイツで見た記憶がありません
そういえばドイツでバウムクーヘン見たことがありませんでした。ビール飲みまくって、ソーセージとザワークラウト食べまくって、ゲロルシュタイナー飲みまくって、デザートもいろいろ食べましたけど、バウムクーヘンは食べませんでした。
走ってる車はフォルクス・ワーゲンとBMWとメルセデスばかりで、タクシーは全部ベンツで、路上ミュージシャンがバンドネオン弾いてて、アウトバーンを走るバスの中ではネーナが流れてた、というこれぞドイツという環境の中でもバウムクーヘンは一度も見ませんでした。
意識して探せば普通にあるのかも知れませんが、無意識だとお目にかかれませんでした。
じゃ、なんで日本では普及してるのでしょう
世界で一番バウムクーヘン食べてるのは日本人だそうです。近隣のハンガリー、ポルトガル、オーストリアなんかにも違う名前のバウムクーヘン、もしくはバウムクーヘンらしきお菓子は存在するのですが、こんなに好まれて作られて食べられているのは、日本だけだそうです。
理由は簡単です。同盟国になる前、第一次世界大戦の頃ドイツ兵を捕虜として連れてきて、このとき料理などの文化が日本に紹介されたんですね。
千葉県の習志野市で初めてソーセージが作られ、徳島県の坂東でベートーヴェンの交響曲第9番が初めて演奏され、そして瀬戸内海に浮かぶ広島県の似島で初めてバウムクーヘンが作られたのです。
明治維新から、政治や経済、医学などでドイツの影響を受けまくって国家を作って来たのに、この辺の身近な文化が入ってきたのは意外と遅いのでした。
技術も必要で専用のオーブンまで必要なひじょうに手間のかかるお菓子なのが、逆に日本人に合っていたのかも知れません。
ラーメンやカレーや多くの洋食にみられるように、本場を超えて普及して独自に進化して、日本のモノにまで昇華している食べ物って本当に多いですね。