
できない文系院生の悲惨な末路(12)
さて,出だしから致命的なイージーミスをしでかしたMくん.こんな奴の報告のために遠くから登校してきた院生もいた.みんなが心の中で「てめぇ,ふざけんじゃねぇぞ」と思いつつ,みんなイライラしながらMくんの対応を待っていた.そして僕らのゼミの間では伝説となる発言をするのしたのである.
「Bさんがこれでいいと言いました」
と.なんと自分の誤りを同じ研究室の博士課程の先輩であるBさんに責任をなすりつけたのである.まわりにいた院生たちはみんな
「え~,それはないだろう?」
という顔をした.さすがに指導教員もMくんの対応に怒りを覚えたのか,
「Bくんがそんなことをいう訳ないでしょう?」
と半ばあきれ顔で言った.場のシラケた雰囲気だけが蔓延し,みんな黙ってしまった.かといって,今すぐ修正できるような話でもないので気まずい雰囲気が蔓延してしまった.この雰囲気に耐え切れなくなったのか,Mくんは半ば強引にプレゼンテーションを進めだした.間違って設定のまま,話を展開し,厚かましくも命題や補題まで説明しだした.そんな間違った設定のもとで導出された命題や補題などまったく意味がないのだが,それでもこんな命題を導出しましたしたとか言い出したのである.あまりの惨劇に業を煮やしたのか,別の院生のDくんが,
「あのね,Mくん.前提が間違っているんだから,どんな命題出しても意味ないし,この後どんな説明も間違っているので聞くだけ時間がもったいないんだけど」
と身もふたもないことを言い出した.身もふたもない言い方なのだが正しいものの見方である.指導教員も,「それもそうだ」と言わんばかりの顔をしている.結局,これ以上議論してもみんなの時間が無駄であるということになり,Mくんの修士論文発表会は20分たらずで終わってしまった.発表会が20分で終わったことよりもMくんの人間性が露呈した研究会であり,このあとMくんは,人間性が酷いというレッテルを貼られることになってしまった.学力でも院生カースト最下層であるのに,人間性部門でも院生カーストの最下層の称号を得たのである.それまで以上に,周りの院生はMくんのことを小ばかにするようになっていったし,「つつき」はより激しいものになっていた.研究が出来なくても一生懸命やっている子に誰もつついたりしないが,むやみやたらに自分を大きく見せようとか自分のミスを人の,しかもゼミの先輩のせいにしようとするMくんは,みんなの憂さ晴らしの的となっていったのである.