見出し画像

できない文系院生の悲惨な末路(108)

学長に支給された売れ残りの焼きそばとお茶を受領し,研究室に戻った.研究室の椅子には今日のオーキャンのぬいぐるみの仕事で取りかえた汗だくのTシャツが数枚かかっていた.8月という季節,しかも不在中はセンサーでエアコンが停止する設定になっているため研究室は高校の部室のようなにおいが立ち込めている.これから自宅に在来線で帰宅しても到着は21時過ぎ,悔しく,情けない思いはあるが配給された冷めた焼きそばに箸をつける.
 本当に情けなくなる思いだ.以前,自分よりも先に就職が決まった後輩の送別会の幹事をやらされた時以上に情けない気持ちになった.

「このままこの大学に勤めていてよいのか」

通常であれば,このような劣悪な職場環境であれば転職一択なのではあるが,それがアカデミックポストへの転職となると容易ではない.さらにただでもMくんは能力的に劣っており,さらにそれを補う勉強時間も足りていない.到底論文など書けやしないため移籍は難しい.このZ大学にしがみつくほかないのである.
 本当に大学院は能力がある人しか来てはいけない箇所なのかもしれない.特に文科系の学問領域では就職が非常に困難であるため進学前にしっかりと考えなければならないとMくんは感じた.
 明日はまた同じ県内ではあるが運転距離が150kmを超える山間の高校に高校訪問に行かなければならない.焼きそばと割り箸を外のゴミ箱に捨て,夏とはいえすっかり真っ暗になった田んぼの横を歩き自学にもどるMくんであった.

いいなと思ったら応援しよう!