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できない文系院生の悲惨な末路(4)

研究者になろうと考える人の場合,他人が何をしようと気にせず自分の求める道を進むことができないといけない.「できない文系院生の悲惨な末路(3)」で見事,研究室内で「ニワトリ」くんに堕ちたMくんだが,彼はまた常に人と比較し自分を評価する,相対評価しかできない人間だった.これがまたMくんの後々の院生生活を地獄した.彼が常に意識していたのは,飛び級で入学してきた同じ学年のKくん.まぁKくんも飛び級とは言えまだまだこれからというレベルあったけれど,「ニワトリM」くんがいたため,何だか凄く優秀に見えた気がする.
 それほどMくんの報告はツッコミどころ満載だった.Mくんが研究会で発表のときはいつも同じパターンで轟沈する.論文を読んで全然進まない.簡単な数学の計算を間違える,論文の英語を変な訳し方をしてフロアに理解不能な説明をする,通常,学術論文は既存研究のサーベイがあり,そこから新たな要素を考慮して考えると構成が決まっているのだが,Mくんが他人の論文を報告するとき,まず既存研究でどのような研究がなされてきたのかを整合的に説明できない.そこでフロアから質問されて,あたふた,しどろもどろになり,結局,既存研究の紹介が終わらずその論文の何が新しいのかが分からないままタイムアップとなることが,少なくとも僕が大学院に在籍していたときには繰り返された.

 まさにこのときに「ニワトリMくん」の本領発揮である.「できない文系院生の悲惨な末路(3)」でも述べたが,たまに落ちてくる私募のために,院生たちは常に指導教員に,「僕が一番できますよ」.「私募の話があれば僕に回してくださいね」的な懇願の意を込めたアピ合戦が始まる.そうすると一緒に研究会に参加している大学院生もつぎからつぎへとMくんに質問を浴びせる.既に頭が真っ白になった状態のMくんは何とか取り繕うためにリプライするのだが,理解していないのでそれがまた頓珍漢な答えとなり,指導教員を怒らせ,フロアからの「つつき」はより激しさを増すことになる.そのようなプロセスを繰り返しているうちに,なんとなしにゼミ内で「できる・できない」のヒエラルキーのようなものが構成される.この「できる・できない」ヒエラルキーというか学力カーストで最下層に入ってしまうともう大学院を辞めるまでこの層から抜け出すことが不可能なのである.

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