見出し画像

できない文系院生の悲惨な末路(18)

まだ研究者としては駆け出し,しかも博士課程1年では多くの大学院生は指導教員の指導なしに学会で報告する論文など書けはしない.アカデミックな業界にいる方ならわかるであろうが,人の論文を読むことと自分で論文を書くこととは全く別物なのである.しかし,同期のKくんや他の人が学会報告をしているのを見て,自分も彼らと同じような研究者のふりをしてみたかったようだ.

ちなみにMくんが報告を申し込んだ学会,こう言っては失礼であるが,Kくんが報告した春の全国規模の学会と比較すると,某大学の同窓会的な学会であり,査読誌はあるというものの一般で言う査読誌とよりもずっと掲載しやすかった.ゆえに,いろいろなジャーナルに投稿し,リジェクトばかりで行き場のない論文を紀要に載せるぐらいならこちらにでもというレベルのものだった.

さて,指導教員に相談もなしに申し込んだ学会報告であったのでMくんは指導教員からの指導など受けられるわけもなく,不十分な頭で不十分な論文らしきものを作り報告した.当日,学会会場の控室で,何やらハサミを持って後輩と一緒にチョキチョキしているMくんがいた.

いやぁ,昨日の夜中の2時にファイルが全部消えてしまって・・・

とへらへらしながら,修士課程の後輩に報告のスライドを作らせている.当時はパワポではなく,OHPでやっていたものだから,図などを紙に貼ってコピー機にかけるのだが,その資料を学会報告の直前に学会報告の控室でやっていたのである.学究活動をしている人ならわかると思うが,こういった行為がいかに非常機で呆れかえるしかない愚行なのである.そもそも「2時にファイルが・・」って,お前バカじゃねぇのか.学会のレベルがどうであれ報告の前日(正確には当日)に報告資料をそろえていないってどういうことよ?僕ももちろん院生のときに学会報告(Kくんが初めて報告した全国規模の学会)を博士課程の1年のときにしたのだが,言うまでもなく事前に配布資料や論文スライドをすべて用意し,複数回の練習をして臨んだが,それでも,前日にはホテルの鏡の前に何度も何度も報告の練習をし,時間通りに収まるであろうか?,このようなコメントが来たらどのように答えようか?スライドの順番は本当にこれでいいだろうか?と考えたものだ.それがMくんときたら,学会会場で報告の1時間前に後輩にOHPの作成を手伝わせているとは.もちろん,同じ研究室の博士課程の院生はMくんのそんなアホなことに手伝うこともせず,半ば呆れたというは失笑してその様子を見ていた.気の毒なのは,修士課程の後輩である.学力的にははるかに劣ると思われるMくんだが,そこは博士課程と修士課程の違い,Mくんの言われるがままに手伝わされ,まったく気の毒であった.

もちろん,そんな報告が上手くいくはずはない,案の定,報告は内容,プレゼン,リプライともにでたらめでとてもアカデミックな報告とよぶには程遠いものであった.いくらこの学会が全国学会ほどの規模やレベルでないにしろ,失礼極まりないものであった.

いいなと思ったら応援しよう!