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できない文系院生の悲惨な末路(17)

さて,進学試験をブービー,間違っている修士論文を提出後差し替えるという荒業を駆使して,念願の博士課程に進学したMくん.もちろん,指導教員は内心ではここまで出来ない(もはや学部レベルにもない)Mくんにはさっさとお引き取り願いたいところだったろうに.

さて博士課程に進学すると,早いというかできる子は学会デビューする.うちの研究室ではできる院生,しっかりとした修士論文が書けた院生は博士課程1年の春に行われる全国規模の学会で報告をしていた.Mくんと同期のKくんも指導教員に修士論文を加筆修正して学会報告をするように言われ,Mくんが学会の雑務を喜んでやっている間にもくもくと学会報告の準備をしてた.博士課程の1年時に学会報告ができるとその後の研究計画が比較的立てやすい.博士課程の1年で報告した論文を報告後修正して,とうこうすることができるからだ.Kくんは学会報告&投稿の準備をすると同時に,次の論文の作成に取り掛かっていた.Mくんとの格差は広がるばかりである.

M君以外の博士課程の院生たちもそれぞれの分野で学会報告をしていた.それをみていたMくんも,何だか学会報告をしたくなったのだ.学会報告というのは本来,自分の研究成果を少しでも公表し,コメントを貰いより高めるものである.しかし,Mくんが学会報告をしたいというモチベーションはそのようなものからほど遠いのである.彼は学会報告をするということがかっこいいからと思っているのだ.大学院の中では院生カースト最下層のMくんも学部の同期にとっては一番の出世頭なのである.大学院の研究室ではみんなにバカにされ,相手にされていなかったが,学部の卒業生の友人たちと酒を飲むときには,自分がハイソサイエティの中にいることをさりげなくアピール.既に就職した同期から,

Mはすげぇな.毎日,怒鳴られて憂さをビールで流し込んでいる俺たちは違うね.

なんて言われるともう有頂天.

いやいや,未だ学生をしてい俺なんかより,社会人として頑張っている君の方がすごいよ

なんて,これっぽっちも思っていないことくせに言うのである.このような性格も同じ研究室の仲間から嫌われ,バカにされる要因なのであるが,院生の間ではバカ扱いの彼にとって,今のMくんの現状を知らない人との飲み会ほど蜜の味なものはないのである.

さて,話をもとに戻すと,Kくんが報告したような全国レベルの学会ではなく,地方の小さな,申し込めば誰でも報告できるような学会があった.こういうところはMくんのすごいところで,見つけてくる.報告できる論文もないので学会報告を申し込むというとんでもないことをやらかしたのである.

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