男性の相談者を占うこと
占いをやっているというと、よく聞かれることの1つが「相談者は、女性が多いですか?」というもの。これはもう、圧倒的に女性が多いです。私が占いを披露しているのは普通のバーの片隅で、普段は男女半々か、むしろ男性の方がちょっと多いような客層ですが、私がいる時は圧倒的に女性客が多く、他の曜日で入っているスタッフに、あなたの日は女性が多くてにぎやかでいいねえ、とか言われています。
そんな偏った客層の中でも、少ないながらも男性の相談者はいらっしゃいます。ほとんどは女性に紹介されていらっしゃる方で、その多くが占いが初めてか、どこかでちょろっと占いしてもらったことはあるが、こうして対面でじっくり時間をとって占いするのは初めて、という方です。私の個人的感想ですが、男性の方が女性よりビビりな感じですね。みなさん、ものすごく当たると、やや過剰気味に宣伝されて来店されるので、ドキドキしながら占いに臨まれます。リラックスして相談に来る方は、あまりいらっしゃらない気がしますね。
ここ数年で男性の相談者様を、少ないながらも見てきて思うのは、女性とはずいぶん違う相談状況、違う反応だなと。
ものすごく極端にざっくりくくると、
・女性は自分の中に答えを持っていて、その答え合わせに来る
・男性は自分の中に問題意識を抱えていて、それを確認しに来る
といった感じです。
女性の相談者さんの多くは、これからやろうと思っていること、決断しようとしていることの答えを抱えていて、それを後押ししてほしくて来ている感じ。今の相手と別れて違う相手に行きたいが、それを肯定してほしい、といった感じの内容です(いろんなパターンがあります)。まあ、背中を押すときもありますが、割りと止める時の方が多いように思います。逆説的ですが、本当に行きたかったら、占いになんか相談に来ないで、とっとと進めてしまう、というのが女性の特徴なんじゃないかなと。逆にそうせず、タイミングを見計らったり、危機感を悟って、その危機感の理由を探る(その手段の一つが占い)といった慎重で冷静な人ほど、しっかりと自分の人生を歩んでいらっしゃるようにも思います。
一方、男性の場合は、占いに不慣れなこともあって、具体的にテーマを絞って聞くというより、全般的に観てほしいと言われることが多いです。仕事と恋愛は聞かれることの二大テーマですが、そういう絞り込みをしないで、ざっくりとと。まずはどんな感じで「視られるのか」を確認されているする感じなのかなと思いますが。
私の場合はタロットのケルト十字をベースに視ているので、過去から現在、未来につながるルートを見つつ、その流れをご案内したり、向かうべきでない未来なら修正の方法を考えたりというのが王道の流れです。ざっくりした占いでも、そうした大きな流れは現れます。具体的な相談内容の場合は、進んだほうがいいとか、止めたほうがいいとか出るのですが、ざっくりの場合は、こうした流れをお話する中で相談者が今抱えている問題点が浮き上がってくることがあります。
人は様々な問題を抱えています。抱えている問題が大きすぎたり、その時の自分には荷が重すぎたりといったことは、よくあることです。処理できないレベルにヘビーな問題を、その時その時、ぱっぱと解決させて進められる人はいません(たまに居るのかもしれませんが・・)。そういう時、人はその問題をいったん封印して、扉の向こう側にしまいます。時が来て、それに対応できるほど元気になったら対処し、抱えた問題を解決させて未来に向かうのですが、その問題を封印したことを忘れてしまう人が意外に多いのです。
抱えている問題が未解決のままで、そこは「視てはいけないもの」と自分の深層心理が理解していると、自分の思考が歪んでしまうことが多くあります。なぜ自分は一歩踏み出せないのか、なぜ自分は進むべき道を絞り込めないのか、その理由が、閉じてしまった「問題」にあることは多いものです。
心理学だったかで読んだ逸話で「扉の向こうのお化け」という話があります。子供のころ、扉の向こうにお化けがいた。その扉を開けるとお化けが入ってきてしまうので、怖くて開けられない。その扉は開けてはいけない扉になってしまった。でも、それは子供の時の話。子供の背丈では見上げるほど大きく恐ろしかったお化けも、大人の今見れば、実は自分の半分くらいの背丈で、たいして怖くないかもしれない。それは開けてみなければわからない。開けるまでは、大きく、恐ろしいお化けのままで、その扉は使われない扉としてそこにあり続ける。その扉を開けることで、楽しい未来に行けるかもしれないが、お化けを怖がっている限り開けることはできない。そんな話です。
扉を開ける、つまり自分が無意識に封印した問題に気づき、それに対処することで、今まで何かをしようと思っていても足をとられ、先に進めなかったことが、すんなり進めるようになる。その問題と向き合いたくないがために、視線をそらせていたが、結局そこを越えなければ先に進めない。男性の相談者さんの多くが、そういった問題点を発見し、自分の整理をすることで身軽になって先に進み始められます。
ある男性は、こんな感じで分析してくださいました。
「男性は、自分が抱えている問題をうっすら意識していても、それを見てしまったら対処しなくてはならないと知っているので、ピントを合わせないようにしていることがある。男性は『あいまい』を好むところがあって、人との関係にせよ、自分の人生にせよ、あいまいでぬるま湯な状況が心地よい。でも、そこに長くいると、停滞している自分が息苦しくなってくる。出れば、問題に対処するという大仕事が待っているが、留まることも苦しい。そんな状況で、なんで自分は苦しいんだろう、と思い悩みながらぬるま湯につかり続けている状態だった。占いで、問題点にフォーカスがあってしまい、視えてしまったので、あとは対処するだけとわかりました。苦しい理由がわかれば、あとは動くだけです」と。
こんな感じですっきりはするらしいのですが、抱えている問題が見えてしまった衝撃は大きいらしく、多くの男性が占いの後、追加のお酒を飲みながら頭を抱えていらっしゃいます。上記の感想をいただいた方は、少し遠くにお住まいで、電車の中でじっくり考えますと言って帰られましたが、考え込みすぎて危うく電車を乗り過ごしそうになったと、後で聞きました。別の方は、私の占いに、いちいち「うおおおお」と唸り声を発せられ、その後、バーのソファーで頭を抱えていらっしゃいましたが、その姿はロダンの「考える人」そのまま。ほんとうに彫像のように動かないので「大丈夫ですか?」と声をかけたのですが、「ちょっと一人にさせてください」と言われてしまいました。心配したのに・・・
問題は、これって占いなの?という話なのですが、まあ「その問題、五年前で止まってますよね?」みたいなピンポイントで怖いこと言ったりもしますので占いの要素もあるにはあるのですが、基本的には聞き上手のバーのマスターとかに聞いてもらっても似たような場所に着地するような気もするのです・・・