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近年のレーザー治療の臨床応用
レーザーは、高出力にした場合は熱エネルギーによって生体組織を切開、凝固、蒸散する特性をもつが、低出力にした場合は生体組織を破壊することなく、鎮痛効果や創傷治癒促進効果を示す。近年、レーザーの光としての特性に注目が高まり、医療への応用に期待が寄せられている。
レーザー光の基本的原理は、電磁波スペクトラムの単一波長の規則正しい電磁波を取り出し、増幅して用いることである。どのようなタイプのレーザー装置もレーザー発生媒体(気体、液体、個体)、励起装置(高いエネルギーをレーザー発生媒体中に送り込む)、光共振器(2つの平行に置かれたミラー)の3つの機構から構成されており、目的の加工用途で、最適なレーザーが異なる。
また、レーザー光の波長は、発生装置に用いる媒体の種類によって異なった波長のレーザーが発生する。私が臨床で使用している機器で、CO₂レーザーであれば10,6μm、YAGレーザーでは1,064μm、アルゴンレーザーは488~514nm、種類の多いダイオードレーザーは375~2000μmといったように媒体の違いによって規定される。そしてこの波長の違いにより、その特性にも違いをもつようになる。この特性の違いは、臨床に応用するにあたって、非常に重要であり、同じレーザー光といっても波長によってまったく異なった作用や効果を現すことになる。はじめてレーザーを臨床に使用する際には、その特性をよく理解したうえでレーザー器を購入する必要がある。
レーザー光の照射エネルギーは、組織内で熱エネルギーに変換され、治療効果を生み出すが、光が組織に吸収された場合にのみ、光は効果的に熱エネルギーに変換される。その熱的効果の性質と範囲は、3つの基本的な要素から決定される。
・出力密度(エネルギー密度):単位面積あたりのワット数で表示される(W/㎝²)。エネルギー密度(出力密度×時間またJ/㎝²)は組織に与えられた総エネルギー。
・スポットサイズ:レーザー光が照射される面積。
・組織相互作用:レーザー光が組織に照射されると、反射、透過、散乱あるいは吸収現象が起こるが、光が組織に吸収された場合にのみ、光は効果的に熱的エネルギーに変換されるので、硬組織に応用する場合には、レーザー光が歯の表面に反射せず、吸収しやすい条件にする必要がある。
臨床においては、以上の3つの要素をコントロールすることによって必要な効果を得ることができる。
レーザー光用染料を利用することは、健康な組織を傷つけず、臨床的なう蝕の乾燥(desiccation)、除去や、象牙質、エナメル質、歯髄の滅菌等にかなりの効果がある。
光吸収性の染料は、組織のレーザー光線吸収力を劇的に増大させ、エネルギーの浸透量を最小限に抑える。エネルギーの浸透量が抑えられる結果、歯髄を含む周囲組織での温度が低くなって、安全かつ効果的に組織へ作用させることができる。どのような波長をもつレーザー光でも、それに適した染料を使えば、これらの応用に有効な働きが期待できる。さらに、象牙質およびエナメル質のう蝕の除去はもちろん、窩洞形成の実際的な方法として開発されつつある。
~医療用レーザーの開発、応用の歩み~
1916 Einstein、誘導放出現象論をベルギーで発表
1960 Maiman、ルビーレーザー発振に成功
1961 眼科領域でルビーレーザーの応用(網膜の光凝固)
1965 Sognaesらによるルビーレーザーによるエナメル耐酸性の実験
1968 Mesterが難治性皮膚潰瘍にヘリウムネオン、アルゴンレーザー応用
1972 炭酸ガスレーザー手術装置の開発開始(国内)
1973 Plogがレーザーによる神経刺激を提唱
MBB社のKroyがレーザー針を試作
1979 ヘリウムネオン、Nd:YAGレーザーの頭痛に対する治療効果を発表
(国内)
1980 半導体レーザーを疼痛緩解に応用(国内)
国産初の炭酸ガスレーザー手術装置開発
1988 疼痛緩解用の「半導体レーザー治療器」開発
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