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【エッセイ】君の「マニャマ」が愛しくて

我が娘よ。

先日1歳の誕生日を迎えた君。父と母が喋っていると、ニコニコしながらアウアウと喃語で会話に参加しようとしてきてくれていた君。そんな君が喋ることができる単語が日々増えてきているのが、本当に本当に嬉しい。

最初に喋ってくれた単語は、父の涙ぐましい「パパ」覚えさせ刷り込み学習の甲斐もむなしく、やっぱり「ママ」だったけれど。

次こそは「パパ」かと思いきや、猫を指さし「ニャンニャン」と喋った君だったけれど。

さすがにもう「パパ」と喋ってくれてもいいのに、しばらく「パパ」を意味する単語は、何故か「ババ」だったけれども。

そんな君が牛を指さし「モウモウ」と喋り、アヒルを「ガアガア」と呼び、蝶々を「ちょちょ」と言えるようになる度に、父と母は驚きと感動で顔をクシャクシャにしていた。君が寝静まった後などは、しみじみと君の成長、そして人間の成長の神秘について語り合っているぐらいなんだ。

そんな中、君はとんでもなく素敵な言葉を生み出してくれた。

君じゃなければ生み出せなかった言葉だ。

言葉を紡いで文章にすることが大好きな父だけれど、こんなにも可愛らしくて素敵な言葉は今まで聞いたことがない。生み出せたことがない。赤丸急上昇、心のベストテン第一位間違いなしの言葉。

その言葉を耳にする度に、父も母も思わず破顔し、疲れや現実の煩わしいアレやコレやが一気に消し飛ぶんだ。

そんな魔法のような言葉。それは…

君が大好きなバナナを意味する言葉

「マ ニ ャ マ」

なんだ。

キッチンに置いてあるバナナを食べたくて、一生懸命に指さしながら少し困ったような表情で「マニャマ」と言う君。スーパーでの買い物中に果物コーナーでバナナを見つけた途端に「マニャマ」を連呼する君。お出かけに持参したバナナを食べきってしまい、まだ食べ足りなくて、この世の終わりのような表情で泣きながら「マニャマァ~~~~~」と叫ぶ君。

君にしてみれば、一生懸命に自分の意思を、自分のできる範囲で伝えてくれようとしてくれているのに、なぜ「マニャマ」という度に父と母は笑うのだろうと納得がいっていないかもしれない。ひょっとしたら、ちょっと怒っているかもしれない。

許してほしい。君の「マニャマ」には、それだけのチカラがあるんだ。父と母を無条件で笑顔にしてしまうだけのチカラが。だから怒らずに自信をもってほしい。誇りに思ってほしい。君はそれだけキュートでハッピーでラヴリーな言葉を生み出したんだから。

あまりにもカワイイので、もういっそのこと君が大人になるまで、いや、一生ずっとバナナのことは「マニャマ」と言ってほしいぐらいだ…

と、そんなことを書いていて、いつの日か君の口から「マニャマ」を聞くことができなくなる日が訪れる現実に気が付いてしまった。それはそれで嬉しいような、でも哀しいような複雑な気持ちになってしまった父である。

嗚呼、君よ。「マニャマ」の君よ。

だから父は、明日も君のために「マニャマ」を買って帰ってくる。君の「マニャマ」が聞きたくて。君の「マニャマ」が愛しくて。

君、一歳の蒸し暑い日の夜に、残り少なくなった「マニャマ」を眺めながら、この文章を記す。




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