競馬連載サムネテンプレ_のコピー

「試走と結果を出すべき試走」

「先週の重賞を回顧してみた」
編集部Kによる重賞回顧。レースをあらゆる角度から読み、
独自の視点で語ってみる。次走狙いたい馬、危険な馬を指摘しつつ、
なんとなく役に立ちそうなコーナー。ときに自らの馬券の悔恨と反省も。
基本、競馬が終わった、ちょっと寂しい月曜日に掲載。

【第55回札幌記念】回顧
2019年8月18日(日)3歳上、GⅡ、札幌芝2000m

    入場者数前年比140%超と例年以上に北の大地が盛りあがりました。
 ローテーション革命と言われて久しく、いかに使わない、ゆったりとした間隔でレースを使う傾向にあるなか、札幌記念はここ10年以上、有力馬の始動戦としての地位を確立されました。猛暑の本州を避け、滞在でゆったり調教できる北海道、芝2000mの定量戦と、天皇賞(秋)や凱旋門賞を予定している馬にとって好都合なわけです。
 今年も4歳世代のダービー馬、菊花賞馬、有馬記念馬がそれぞれ出走、5歳のGⅠ馬ペルシアンナイト、前年覇者のサングレーザーと揃いました。

 が、しかしです。4歳3頭のうちフィエールマンとブラストワンピースはフランス遠征を予定しており、ここはいわゆる壮行レースというより、試走といった雰囲気。

 秋のステップレースはみんなここが大事。
 アーモンドアイのように前哨戦を使わないならそれでいいんです。使ってくる組のなかで明らかに叩き台という実績馬を見抜けるかどうか、ここがポイントです。

 その視点でみると、フィエールマンとブラストワンピースは仏遠征前の試走なんだから勝ちには来ないんじゃないかとなるわけです。
 フィエールマンは完全な遅れ差しだった1800mのラジオNIKKEI賞からディープインパクト産駒のステイヤーだと踏んでいたので、そもそも札幌2000mは距離不足。無理に流れに乗せて、折り合いでも欠いたら、凱旋門賞に不安が残る。

 結果は予想通り、フィエールマンは後方から4角で外を追いあげる安全運転。どうも春先の騎乗停止からC.ルメール騎手は直線で詰まるシーンが増えている印象があり、勝つときは外を回して勝つ、馬の能力で勝つ競馬が目立ちます。フィエールマンも勝ちには行かない競馬で3着。ワグネリアンには先着したわけですし、試走としては合格でしょう。

 問題はブラストワンピース。これは戦前から認識を改めてるべきでした。仏遠征を控えた同じ立場でしたが、春は狙ったレースを仕留めたフィエールマンに対し、ブラストワンピースは大阪杯6着、目黒記念8着と3歳有馬記念優勝が霞むような成績。ましてオーナーはクラブ馬主のシルクレーシング。ノーザンファームの至上命題である凱旋門賞挑戦を馬主たちに納得させるだけの実績を作らなければいけなかった。騎手を交代させて臨む札幌記念はフィエールマンと肩を並べて仏遠征するためには落とせない一戦でした。
 結果を出すべき試走であるという認識さえあれば、洋芝の鬼ハービンジャー産駒なわけですし、勝つのは納得。

 レースはエイシンティンクルが1000m通過(59秒9)後も息を入れずにペースを引っ張り続けたために洋芝2000mらしい持久力戦。フィエールマンが3着に押しあげたのも流れが味方したものです。安全な試走とは対照的にブラストワンピースは1枠1番から明らかなイン狙い。外を回すと、加速しきれない不器用さを露呈した春を踏まえたとはいえ、結果を出さなければいけない状況でインを抜けてくるのはリーディングジョッキー川田将雅騎手の胆力そのもの。1度でもブレーキを踏めばアウトというブラストワンピースでインをスムーズに抜ける、まして乗り替わりでの一発回答。恐れ入りました。

 2着サングレーザーは対戦相手の状況を読みきった岩田康誠騎手の好プレー。フィエールマンを封じたのはまさにそこです。相手が慎重に後ろから来るのであれば、前に行ってアドバンテージを作る。秋は舞台設定から末脚が足りない可能性が高いので、この競馬はひとつきっかけになるのではないでしょうか。



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