「内か外か、それが問題」
「先週の重賞を回顧してみた」
編集部Kによる重賞回顧。レースをあらゆる角度から読み、
独自の視点で語ってみる。次走狙いたい馬、危険な馬を指摘しつつ、
なんとなく役に立ちそうなコーナー。ときに自らの馬券の悔恨と反省も。
基本、競馬が終わった、ちょっと寂しい月曜日に掲載。
【第73回セントライト記念】回顧
2019年9月16日(月)3歳、GⅡ、中山芝2200m
馬場読みのヨコテン、横山典弘騎手が冴えまくっている。
超高速馬場、今の中山は月曜日こそ雨の影響が出て、やや鈍ったものの、尋常ではない時計が出る馬場コンディション。コーナーが少なく、直線が長い競馬場とは違い、小回りの中山で上がり34秒台、33秒台が計時されるのは珍しい現象だ。
こういった特殊な状況で異彩を放つ男、横山典弘騎手の快進撃が止まらない。セントライト記念をリオンリオンで制し、これでこの開催の重賞2連勝とした。
開催初日の木更津特別をジョーアラビカで制したあたりで典弘騎手はなにかを掴んだにちがいない。ジョーアラビカは1枠1番、絶好すぎる馬場状態は外を回せば、時計的に絶対間に合わない、そこで1番枠を最大に活かし、インからレースを進め、直線だけ先行馬の外に持ち出して差し切った。イン有利は先行有利でもあるから他の騎手が先へ先へ進出するなか、同じように動くには4角を外から攻めなければいけない。そこで外に行かず、一旦ひと息入れ、順位を下げてから直線で先に動いたライバルを交わしてみせた。
単に先行有利ではない。インに拘り、コーナーリングのロスを消すことこそが肝要。セントライト記念のリオンリオンは8番枠。スタートを決め、インに飛び込む姿は今回も逃げ戦法を選択したのかと思わせたが、どうもそうではない。逃げではなく、ラチ沿いのポジションを奪いに行っただけだった。外からアトミックフォースが来れば、あっさり譲り、1角でナイママが番手に来ても動じない。この前半の戦略がすべてであり、これこそが中山の異常な馬場を攻略する手順なのだろう。
レースはスタートからゴールまで11秒台後半から12秒前半のラップを繰り返す持久力勝負になり、リオンリオンには絶好の流れとなった。おそらく、外からどの馬も競りかけに来なければ、その時点でハナに行くオプションも用意があっただろう。快勝した青葉賞もそうだが、とにかく緩急がない流れに強いのがリオンリオン。セントライト記念はこれ以上ないレース展開になった。
そして、最後は直線を向いてからタイミングを計って外に出す。インのポケットにいる以上、最後は真っ直ぐは抜けられない。どこかで外に出さなければいけない。安全策をとり、勝負どころで外に出すのか、待ってロスを最小限に押さえ、ここしかないタイミングで進路を取るのか。リスクとリターン、最大の結果を得るにはリスクを背負わねばならない。それを消すだけの技術がある。それが横山典弘騎手。ちょっとふたりの子どもがジョッキーになり、それを支えるようなポジショニングをとり始めていたが、いやいやまだまだ、類まれない閃きは健在だ。
対照的に外を回った組はこのレースではほぼアウト。勢いよく進出したルヴォルグは坂をあがって脚色が前と同じになり、大外を回したニシノデイジーは不発に終わった。ニシノデイジーは春は枠順に恵まれなかったからか、常にインを突く競馬をしていただけにこの馬場で大外進出は残念。日本ダービーもインからしぶとく伸びて5着だったが、これは戦略ではなく、不本意な競馬だったのだろうか。外枠に入った今回は終始外を回り続けた。ニシノデイジーにとって立ち回りの器用さも武器のひとつではなかろうか。菊花賞は乗り替わりが
早くも発表されたが、いま一度、2歳秋までの快進撃を思い出してほしい。
先述したが、リオンリオンは持久力戦でこその馬。菊花賞の3000mはドンと来いだと考えがちだが、菊花賞こそ緩急をフルに用いなければいけないレースで、持久力戦にはなりにくい舞台、さあ横山典弘騎手、どう攻略するのか。お手並み拝見というところだ。個人的にはセイウンスカイがチラついてしまうのだが。
編集部K