令和の中世編 オクト・ア・ライブのこと
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LIVE A LIVE 30周年大感謝祭ー蒲田編ーの開催が週末に迫ってきた。ライブアライブの熱狂的ファンである私もチケットを取った。
リメイク以降、LALはさまざまに展開している。『オクトパストラベラー 大陸の覇者』とのコラボイベントもその一つだ。
実装当時にプレイして感想を絶対書こうと思っていたのにいつの間にか時が過ぎていた。早すぎる。時が。
オクトパストラベラーは、リメイク版LALを製作した浅野チームの作品だ。そのおかげか、ソシャゲ版である大陸の覇者とのコラボイベントのシナリオには時田さんご自身の監修が入っている。それって実質新作では?
LAL中世編は鬱シナリオの金字塔として名高く、非常に人気がある。中世編を翻案した舞台『魔王降臨』も上演されている(残念ながら未見)。そんな中世編が新展開。やるっきゃない。そうだろ、松ッ! 私はすぐにオクトラ大陸の覇者をインストールした(そしてゲーム自体にハマってだいぶ課金することになった。好きなキャラはサザントスさんとティツィアーノ)。
オクト・ア・ライブの注目ポイント
コラボイベントは前後編だった。前編のタイトルは「勇者」。LALの中世編冒頭、武闘大会の決勝戦から始まる。そこで謎の力が働いてオルステッド、ストレイボウ、アリシアの三人はオクトラの世界「オルステラ」に転移させられてしまう。
3人はオクトラ大陸の覇者の主人公たちの力を借りて、ルクレチアへ帰る方法を探す。
そう、3人。オルステッド、ストレイボウ、アリシアの3人なのだ。
旅にアリシアが同行する、これはもうとんでもないことである。LAL本編ではさらわれるだけだったアリシアが、オルステッド・ストレイボウの2人と行動を共にしたらどうなるか、というifが、このコラボイベントで書かれている。
そしてもうひとつ。なんとこのイベント、
オルステッドにセリフがたくさんある。
ストレイボウやアリシアと話すオルステッドが、神の視点から見られる――これはもう前代未聞の大事件である。
オルステッドーッ!!! とボイスつきで叫ぶストレイボウも見られる!
ここまで読んで興味を持ってくれたLALのファンは今すぐオクトラ大陸の覇者をインストールしてほしい。インストールしろ!
コラボイベントは常設されているのでいつでもプレイできる。LAL関連のガチャは期間限定だが、すでに数回復刻されているので、また入手する機会もあると思う。
以下ネタバレあり
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オクト・ア・ライブでは、これまで触れられてこなかったアリシアの心情が語られる。これがLAL本編と一線を画す点だ。時田さんの監修が入っているのだから、本編のアリシアもおそらく同じことを思っていたのだろう。これがあったおかげで中世編でストレイボウの後を追うアリシアの解像度がかなり上がったし、オクトラ大陸の覇者をインストールしてよかったと思った。
アリシアの絶望
アリシアは武闘大会の優勝者と結婚しなければならない。そこに彼女の意志はない。オルステッドが勝とうがストレイボウが勝とうが、自分の未来を自分で選択できない。自分はトロフィーワイフにしかなれない……そうアリシアが思った瞬間に、オルステッド・ストレイボウもろとも、オクトラ特有の謎の力(黒呪炎)によってオクトラ世界(オルステラ)に飛ばされてしまう。黒呪炎はアリシアの絶望につけ込んだ。
アリシアは黙っていただけで、自分の扱いに不満がないわけではなかったのだ。そうなると、バルコニーで誰よりもオルステッドを愛すると言ったのも、自分に言い聞かせるためだったのかもしれない。オルステッドは実際いい人で強くてイケメンで中村悠一なので最高なのだが、アリシアが自分で選んだ伴侶ではない。
ということを前提に考えると、誰よりも早く自分のもとに駆けつけ、自分を求めてくれたストレイボウになびくのも道理かなと思える。
アリシアは、ストレイボウを自分で選んだ。
自分で選んだわけではないオルステッドと、自分で選んだ(つもりの)ストレイボウだったら、ストレイボウのほうがいいという思いがあったなら、中世編ラストの「ずっと一緒にいてあげる」に繋がるのは自然だ。ストレイボウを選ぶと言うことが、アリシアにとっては自分の存在意義の肯定だった。
オルステッドから見たら絶望以外のなにものでもないアリシアの行動だが、アリシアの側から見たらどうなのか……というのが、このコラボで垣間見えた。オルステッドから見たら絶望以外のなにものでもないが……大事なことなので2回……
アリシアはオルステッドを裏切った最悪の女、スクウェア三大悪女のひとりと言われていた。しかし、個人の意志を完全に無視され、ただ「王女」という価値だけで測られていることに絶望しており、後追い自殺は彼女の初めての自己決定だった――となると、複雑な気持ちになる。まあ、オルステッドを裏切りはしたのだけど。
女性の側の自己決定について語られるようになったのも、平成初期から令和へ、時代も社会も変わったからかなあと思ったりもした。
ここがオクト・ア・ライブの一番の肝だとは思う。しかし、他にもびっくりするところはあった。
ストレイボウの本心と、オルステッドの傲慢
ストレイボウはアリシアじゃなくてオルステッドが好きすぎるだけだろ、って思っていたんですけど、やはりそうだった。
大好きな親友だからこそムカつくポイントがある。それが、「私のほうがストレイボウより強い」とオルステッドが思っているという点だった。オルステッドはそのことに無自覚だったが、見下されている側のストレイボウは気づいてしまっていた。
「オルステッドは勇者になりたかった」というのも、本編ではよくわかっていなかったところだ。魔王を倒した勇者ハッシュの逸話が語られるルクレチアに生まれたなら、勇者に憧れるのは自然なのでそうだろうとは思っていたのだが、今回はっきりと示された。
「私は強い」という自負が、前述の最悪コンボに繋がってしまう。試合直前にストレイボウに「手加減などしたら許さんからな!」と言われたのに、勝ちが見えると一瞬手を抜いてしまったオルステッド。手加減したら許さんと言ったストレイボウは、言葉通り、オルステッドを許さなかった。
ストレイボウの望みは、ただオルステッドと対等でありたいということ。本人たち以外にははっきりわかるらしく、アリシアにまで看破されている。
そんなわけで、対等でありたいのに相手が対等に見てくれない、というストレイボウの悔しさと劣等感にも、黒呪炎はつけ込んだのだった。タイミングこそ違うが、本編の魔王山で感情爆発状態になったときと同じだろう。
ちなみに、オルステラの旅に同行しているアリシアはオルステッドを罠にはめるためにストレイボウが作り出した幻影ということだったが、『黒呪炎を使って作った完コピ』であって、ストレイボウが操っているわけではないと思われる。幻影でなくアリシア本人だったとしても同じ行動を取ったのではないかと思う。最後に登場するアリシア本人も、幻影を通じて様々なことを理解したと言っており、その上で「二人を助けて」と言えるようになっている。これはすごいことですよ……自分のことしか考えられなかったアリシアが、自分を巡って殺し合っている二人を助けてほしいと……これが……令和……令和の中世編……! 男同士の友情のもつれを語るのに、もはや女は不可欠ではない……
感想
ソシャゲをたくさんやるほうではないのだが、このコラボは完成度が高すぎて震えた。コラボとは言うがもはや実質新作、オルステッドとストレイボウが仲違いしないですむかもしれない世界の可能性が見られた衝撃は大きかった。ドット絵もオクトラサイズにリデザインされているし、中村さんと程嶋さんの新規収録ボイスは大量にあるし、そもそもリメイク版の異常な完成度・満足感でお腹いっぱいになっていたのに、まだデザートがあるぞって皿が三段あるアフタヌーンティーに招かれたような気分。LALという作品が現代で再評価、再解釈されて新たに楽しめたので本当に最高だった。
中世編は地獄だからこそ美しいと思うのだけど、地獄過ぎてつらいので、こういうふうに本編が蔑ろにされないifを語ってもらえて、なんてありがたいことだろうか……
オクトパストラベラー 大陸の覇者さん、こんな豪華なコラボをありがとうございました。
メインストーリーにもしんどい男男感情のシナリオがあるので、中世編がお好きな方は楽しめると思います。
🔻ライブ・ア・ライブの大ファン(私)が書いた小説🔻
ハイファンタジー&少年バディ青春ものです。
男同士の厚い友情ゆえの仲違いの物語、ではありませんが、そういうストーリーラインも今後出てくる予定です。