1度しか怒らなかった父の話

亡き父は50歳を目前に結婚をし子をもうけたせいか、非常に温厚で、私達三姉妹がどんなに悪さをしても滅多に怒らなかった

先日、母の誕生日祝いで久しぶりに家族が揃ったとき、自然と母と2日違いの誕生日の父の話になった

次女が言う
「私、お父さんに1回しか怒られた記憶がないのだけどあんた達どうだった?」

私はちょっとした不注意で窓ガラスを割ってしまい、珍しく機嫌の悪かった父に「馬鹿」と一喝されたことがあるだけ

初めて怒られたので、鳩が豆鉄砲を喰らった時よろしくビックリしたのを覚えている

怖くはなかった
ただただ意外だった

末妹も記憶に残っているのは1回だけで、自営業で自宅に隣接していた仕事場で作業中の父の肩に無理やり飛び乗っては危ないからと降ろされ、それでも何度も何度も飛び乗ってとうとう堪忍袋の切れた父に怒られたそうだ

その時の父の口調を末妹が真似たが、やはり怖くはなかった

しかし、末妹は
「それまでお父さんのこと大好きだったけど、あれごきっかけでキライになった」のだという

毎日のようにプリプリと怒っていた母と違って、たった1回怒っただけなのに

しかも、どう考えても父が怒るのはもっともな話だし、怒り方もかなりソフトだったようなのに

それでも末の娘に嫌われた父

ちょっとだけ可哀想だなと思った

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