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成長する準結晶(菱形30面体) - Growing rhombic triacontahedron

要約

 菱形30面体は、4面体1種類と8面体1種類の2種類のモジュールで成長できることが分かった。このモジュールもまた空間充填可能なモジュールである。
※菱形の対角線2本は黄金比の関係でペンローズタイルは今回も登場しません。

前回の記事について

 1つ前に書いた記事では、成長する準結晶として書いたのですが、例に出した黄鉄鉱は5角形12面体で、5回対称性のない不十分な内容でした。
※お詫びに真の成長する準結晶(正12面体)をアップ予定です

 あれから黄鉄鉱の5角形12面体の結晶を入手したのですが、5回対称性がないとはいえ、5角形を持つ結晶が出来るなんて自然は面白いですね。観察した結果、長さの違う辺は、予想通りの配置でした。お値段はお求めやすい550円也。リンク貼っておきます。

菱形30面体

 今回は菱形30面体です。菱形が30枚集まってできており、5回対称性を持ちます。

菱形30面体のモジュール

 成長に必要なモジュールは4面体1種類と8面体1種類の2種類で、オクテット・トラス構造を中心から放射状に構成することで成長することができます。辺の種類は4種類で、2種類は辺が短く、2種類は辺が長い特徴を持っています。菱形30面体の表面に出る辺は2種類の短い辺になっています。

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4面体1種類と8面体1種類(左からモジュールA, B)

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別角度(左からモジュールA, B)

 結晶格子として表現する場合は、次のようになります。

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結晶格子

2f菱形30面体

 菱形30面体を成長させた模型を作ってみました。2,3,5の対称性が現れます。5回対称性のある立体の成長について集中的に考えて思ったのですが、5回対称性は神聖視する必要なく、4面体と8面体で成長可能な多面体の1種類に過ぎないようです。ただし、そこには黄金比が隠れているようです。

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2f菱形30面体(5回対称性)

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2f菱形30面体(3回対称性)

菱形30面体の気になる箇所

 短い辺と長い辺でモジュールはできていますが、こんなことが可能であるのか? ということがあると思います。条件は「同じ面では大きい粒子は隣り合わないこと」です。
 結論から言うと可能で、大きい粒子と小さい粒子は、下の図のように菱形30面体の一部を取り出して表現すると、大きい粒子が「X - Y ≡ 0 (mod 3)」となるように配置することで破綻なく敷き詰めることができます。これは、分割数0の時(0f菱形30面体)も成り立っていて、大きい粒子が核として中心点に位置していることを表しています。小さい粒子の種類数は調べていません。
 なお、ここで粒子と書きましたが、金属原子かもしれないし、金属原子が集まってできたナノ粒子かもしれません。

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大きな粒子(黄色い丸)の配置

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2f菱形30面体での大きな粒子の配置

振り返り

 5回対称性を持つ菱形30面体であっても、4面体1種類と8面体1種類の2種類のモジュールで構成できることが分かりました。前回の正12面体では「5角形の1つの辺が違う場合も網羅する」という条件を暗黙的に入れる失態のため、4面体2種類と8面体2種類の4種類のモジュールが必要であるという間違った結論になってしまいました。準結晶としては適切ではなかったですが、黄鉄鉱5角形12面体の結晶モデルとしては説明ができたのではないでしょうか。

今後について

 「菱形30面体でできることは正12面体でできないわけがない」という謎の信念の元、次回は、正12面体を4面体1種類と8面体1種類の2種類のモジュールで構成して、成長できるようにする方法を考えていきたいと思います。

公開にあたって

 時間節約のためzometoolを使い模型を作成したのですが、この模型を作るのに試行錯誤した結果、控えめに言って数万円使うことになりました。ちょっと想定外の出費だったので、余裕がありましたらサポートをお願いいたします。別アングルの模型を見たいなど、リクエストがあればできる限り対応したいと思っています。zometoolを日本で買う場合はジャパン・ゾム・クラブの会員(無料)になると20%引きになってお得(でも高い)です。
それでは楽しい研究生活を!

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