出入国管理及び難民認定法の改正
入管法(出入国管理及び難民認定法)の改正案が、衆議院で審議入りしました。2021年の通常国会で、スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件がきっかけで廃案となった入管法改正案が、今国会でも成立を目指して再度議論されることになります。
現行の入管法では、難民認定申請をしている間は祖国への送還が停止される(送還停止効)ことから、送還を免れようとする外国人は、難民認定申請を繰り返して日本に留まることができます。これを阻止することが、改正案の狙いの一つとなっています。
改正案は、送還回避のために難民認定申請を繰り返す者を送還できるようにするため、送還停止効に例外規定を設け、①3回目以降の難民認定申請者、②3年以上の実刑に処せられた者や外国人テロリスト等は、原則として送還停止効の規定を適用しないとしています。
要するに、難民認定申請2回目までは送還が停止されますが、3回目以降は送還されてしまう可能性があることになります。
送還停止中の事件としては、正規に在留中に「強制わいせつ致傷」で実刑判決を受け、出所後、入管施設に収容されたが仮放免が許可され、仮放免中に「強姦致傷」を犯し再び実刑判決を受けたという例もあります。こういった事件があることなどを理由として、難民認定申請を繰り返して送還を回避することが問題視され、入管法の改正が必要だということになっています。
しかし、改正案に対しては、「3回目以上の難民申請者を送還すると、祖国で生命や権利が脅かされる高いリスクがある」などとして、非人道的な改正だとの批判が強く出ています。
問題は、本当に難民として認められるべき外国人と、送還を免れるために難民認定申請を繰り返す外国人との区別が、明確にできないところにあります。そのため、「外国人は送還を免れるために難民認定申請を繰り返しているだけだ。仮放免されて犯罪を起こす者もいて、危険極まりない」という改正賛成派と、「申請を繰り返すのは、難民として認定されるべき外国人が認定されていないからだ。送還するのは見殺しにするようなものだ」という改正反対派の水掛け論に終始している状態です。
法務省は、難民認定を適切に行うために審査を改善しようとしていますが、改正賛成・反対の対立を解消するには到底いたらないようです。今回の改正法案は、与党に押し切られて成立するのか、野党が抵抗して政府が諦めるのか、という力関係で決まるようにも思われます。
どちらにしろ、将来の入管行政に禍根を残すことになる可能性が大いにあります。根本的な解決は、難民認定の精度を上げ、認定されるべき外国人を認定できるようスキルアップを図っていくしかなさそうです。