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物々交換でMacBookを手に入れた時の話
ここまで時間の余白を拡げるためには、コミュニティを持つことと情報やテクノロジーを活用することが効果的という話をしてきたけれど、「クリエイティビティを高めること」も意識したいポイントのひとつだ。
クリエイティブとは、別に0から1を生み出すことだけではなく、数ある情報や前例の組み合わせによって新しいものを生み出す「編集」もこの類に入ると僕は思っている。
むしろ、今や世の中に溢れている目新しいものは組み合わせによって生まれているものがほとんどと言って過言ではない。
様々な情報を自分の中に数多く取り込んでいくことで、ある時ふとそれらの組み合わせによって時間の余白を拡げるためのアイデアを閃くことがある。音声入力によって効率的に文字入力の方法を見つけたのもこのパターンだ。
クリエイティビティは、先に述べた“What do I want?”と“How can I do? ”を強く意識することと、日々の情報収集を繰り返すことによって培われていくのではないかと思う。
僕は過去(2014年1月)に、どうしてもMacBookが欲しくなり、購入を考えたことがあった。
デスクトップのパソコンは持っていたけれど、場所の縛りを解き、好きな場所でパソコンを扱えるようになりたいという思いからだった。
新品だと10万円以上、中古でも安くて6〜7万円はする。
バイトしてお金を貯めて買えないことはないけど、そこに注ぐ時間と労力が惜しいと感じた僕は、「欲しいものはお金で買う」という慣習を疑い、何か他の手立てがないかと考え始めた。
その結果、行き着いたのが「わらしべ長者」。
ある一人の貧乏人が、最初に持っていた藁(わら)を物々交換していって、最後には大金持ちになるという、あのおとぎ話である。
僕はわらしべ長者にならい、物々交換でMacBookを手に入れることを企てた。
欲しいものを得るためのわらしべ長者的物々交換の手法は、その物語を知っていたこともあるし、過去に知人がやっているのを見ていたということもあり、既に自分の中にはインストールされていた。
物々交換とSNSの相性は抜群に良い。便利な時代だ。
だけど、その2つの要素だけでMacBookを入手するというのはきっと困難だと思った。
MacBookとマクドナルドがいずれも「マック」と称されていることに気付いた時、全てのピースがはまり、パズルが完成したような実感があった。
正直、「これはもらったな」という気持ちがあり、スタート前から成功を確信した。
自分の掲げる目標に、皆が熱狂できるエンターテイメント性を孕ませること、話題にしたくなる「余白」を作ることが最も大事であると僕は思っている。
この場合、それが「マックがマックに変わる」というポイントだった。
そしてすぐに、物々交換によってMacBook入手を企てている旨を明かした上で、「マクドナルドのハンバーガーを奢る代わりに、誰か、何かと交換してくれませんか?」とFacebookに投稿した。「#マックがMacに変わるまで」というハッシュタグをつけて。
すると交換希望者が続々とコメントを寄せてくれて、あっという間に交換が決まった。いいねも沢山ついたし、シェアもされた。(あの時からtwitterもちゃんと活用できてたら、という後悔は若干ある…)
最初にハンバーガーと交換された品物は「大根とおから」だった。
そこからは、大根とおから →本3冊 →ダウンジャケット →居酒屋食事券1万円分 →原木椎茸1年分 →バイキングチケット15枚 →竹灯篭(6万円相当) →一眼レフ
といった具合に交換が進んでいった。
品物がだんだん高価なものになるほど、交換の速度は落ちていった。
交換が行われる度にFacebookには投稿をしていたけれど、数ヶ月も交換が進まないと、いつしか誰からもこの挑戦の存在を忘れ去られていった。(自分すらも忘れていた)
そんなある日、数年前に関東から宮崎に移住してきた友人から
「俺、使ってないMacbook持ってるよ。宮崎で農業をやりたくて、今田んぼを探してるんだけど、“田んぼを1年間借りられる権利”とだったら交換してもいいよ」
という話をもらった。
すぐさま「田んぼ探してます」とFacebookに投稿をした。
すると、あれよあれよと多くの情報が集まり、その中に友人の希望条件にピッタリ合う田んぼが見つかった。
情報提供者の方に一眼レフを渡し、友人への田んぼの借用権引き渡しにも立会い、その結果、僕は計10回の交換を通して約1年越しにMacBookを無事入手することに成功した。
その交換の課程では、沢山の人との出会いがあり、様々なドラマも生まれ、地元の新聞社、そしてTBSの朝の報道番組からの取材も入り、SNSのフォロワーも増えた。
念願だったMacBookを手にすると同時に、いくつものプライスレスな価値を得ることができた。
時間の余白と思考の余白、そして知識の余白によって叶えられた成功体験だった。
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