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【日本酒記 番外編】第七回 タカシマヤ日本酒祭 

 二〇一五年から大阪髙島屋ではじまった「タカシマヤ 日本酒祭」が、今年も開催された。八月二八日(水)から九月二日(月)まで、七階催事場で賑わった本祭は、途中、コロナ禍での開催中止を経て、今年で一〇年目を迎えた。
 実は、私が初めて参加したのは昨年であり、コロナ禍で中止されていたこともあってか、その存在をまったく知らなかった。

日本酒祭のチラシ外側
日本酒祭のチラシ内側

 全国からおよそ一二〇蔵が参加、銘柄にして八〇〇以上の日本酒が並んだ祭りだが、台風一〇号の影響で開催が危ぶまれた。
 髙島屋周辺では大きな被害が出ることもなく、無事に日程を消化することができて、安堵した。何より、髙島屋のスタッフや全国から集まる蔵元のみなさまは、私のような一参加者よりも、開催できたことでホッとして、達成感を得たことだろう。

定番となった日本酒祭の提灯

 私が参加したのは二九日の木曜日。この日だけの参加であったが、去年、出店ブースを徘徊するだけで満足だった私は、今年も大して呑んだくれるつもりもなく、ただフロアを散歩気分で歩くだけで、昼食を兼ねてどこかの出店スペースで腹ごしらえができれば良いと思って、昼頃に家を出た。

賑わう酒蔵

 日本酒祭とはいえ、参加しているのは酒蔵だけではない。全国から酒の肴になりそうな飲食店がいつくも出店している。さらに、期間中はトークショーやセミナーも行われ、各酒蔵から杜氏などの関係者を招き、見て聴いて楽しめる祭りとなっている。

 まずは、さらっと蔵元ブースを流し見しつつ、軽い昼食を取るために、私は飲食スペースに向かった。
 日本酒祭では恒例となった、「日本酒うさぎ」の出店によるロングカウンターでの立ち呑みは、既に多くの客で賑わっていた。数年前まで当たり前だった「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」が嘘のように、大人たちが肩を寄せ合い、こちらに背中を向けている。これが本来の立ち呑みのスタイルであり、居酒屋の文化である。そんな光景を、天下の百貨店である髙島屋で見ているのだから、どこかおかしく、面白い。
 本格的に立ち呑むつもりでもない私は、焼き物と揚げ物の匂いがするスペースへ足を向けた。「酒房まつい」「タンポポ」の二つの店名が書かれた看板が目に入った。まついは、京橋で人気の串カツ店で、タンポポは北新地のお好み焼き屋であるとのこと。悩んだ挙句に、私はまついで、串カツセットを注文した。

串カツセット

 久々に食べた串カツは、油がベトベトすることもなく、揚げたてで素材の味が残っていた。これは日本酒だけでなく、ビールも進むはずだ。本店がある京橋は、飲み屋街だけに、虜になる人も多いことは容易に想像できた。機会があったら、お店に伺おう。

 さて、蔵元ブースの散策を再開。いくつもの知らない銘柄がブースに並ぶ。この景色を見て、後に購入を検討する酒も、脳に記憶されそうだ。それは「ジャケ買い」に繋がるきっかけとなる。
 歩いていると、八戸酒造が醸す「陸奥八仙」を見つけた。青森県にはよく足を運ぶ私だが、どういうわけだか、これまでの旅で、陸奥八仙を呑んだことがない。実は、今年の秋に、怪異と歴史を訪ねる旅の一環で青森遠征を計画しているので、八仙をいただくのはそのときのお楽しみにとっている。ここでは、精米歩合や米の種類の異なる銘柄を見比べて、秋の滞在に希望を抱いた。

平日の昼過ぎでも参加者は多い

 続いて、目に留まったのは剣菱酒造。言わずと知れた灘の名酒。実家の親父は、正月になると祝い酒として今でも一升瓶を購入している。私にとって馴染み深い銘柄だ。
 ここで、一つ思い出したことがある。熟成を重ねた剣菱には、「瑞祥」という種類がある。冬季限定製造と聞いているが、そういえば、具体的にいつから出荷されるのか知らないと思ったので、ブースにいた担当の男性に聞いてみた。すると、

「一〇月から始まって瓶詰めするので、酒屋とかに出回って購入できるようになるのは、一一月ぐらいですかね」

とのご説明を受けた。なるほど。そうであるならば、実家の親父に来年の正月に呑む酒として、瑞祥をお薦めしよう。そんな会話をしながら、酒蔵のパンフレットをいただき、また別のブースへ向かった。

人を掻き分け進むのが大変なブース

 知らない酒蔵や銘柄を見ては、気になった名前をスマートフォンのメモ機能にメモして回る。インターネットで知らない日本酒を探すのも良いが、こうして実体験で瓶を眺めて情報を得るのも楽しい。日本酒の香りがプンプンする催事場は興味のない人からすると、「ただの酒臭いフロア」かもしれないが、何ともこれが心地良い。

 一通りブースを徘徊したところで、夕方になった。そろそろお暇しよう。お土産に何を買おうか、既に決めてあったので、出店ブースへ向かう。お目当ては、熊本県で有名な馬刺しの「フジチク」だ。昨年も出店されており、お土産に冷凍の赤身を購入して家で食べてみたのだが、リーズナブルなお値段で本格的な味わいだったのが忘れられず、今年も買って帰ることにした。

解凍した馬刺し

「去年買ってみて美味しかったので、今年も買いに来ました!」

 ブースにいるスタッフの女性に言うと、とても喜んでくださった。日本酒祭だけでなく、いずれかの機会でまた購入したい。この馬刺し、東郷のお薦めです。通販でも購入できるので、ご興味のある方は、是非、検索してみては如何だろうか。

 今年も無事に開催された日本酒祭は、大盛況で幕を閉じた。一年を通して、日本酒関連のイベントは日本各地で開催されているが、みなさまも、お近くのイベントを調べて参加されると良いかもしれない。そこにはきっと、良い酒、良い人との出逢いがある。

 今後の益々の日本酒の発展と、来年も開催されることを願う。


日本酒祭の特集動画とフジチク馬刺しについて、
以下に参考動画とURLを貼っておきます。

廃校で『どぶろく』 やり手“日本酒バイヤー”が惚れ込んだ『秘境の酒蔵』 親子ほど年の離れた後輩に受け継がれる「人脈」と「信頼」〈カンテレNEWS〉 (youtube.com)


フジチク馬刺し
馬刺しと黒毛和牛の通販・お取り寄せなら熊本のフジチク (fujichiku-shop.jp)

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