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右上がりの「あー」

ホームスタジアムのネーミングライツは白波で、胸スポンサーはさつま島美人。
知らない人のために念のために説明しておくと、どちらも焼酎の銘柄である。
そんなベタな、と思われるかもしれないけれど、これが鹿児島ユナイテッドFCというチームだ。

チームバス (2)

しかもこの日はさつま島美人スペシャルマッチということで、おみやげに焼酎を2本持ち帰った。
開幕戦ではこぼれ落とした勝点3もちゃんと手に入れられた。

明治安田生命J3リーグ 第2節
2022年3月20日 13時3分キックオフ@白波スタジアム
鹿児島ユナイテッドFC VS ヴァンラーレ八戸
2-1(1-1、1-0)
天気:晴れ 気温:20.5℃
入場者数:4,000人

開幕戦とは違う

冒頭で紹介した焼酎2本のうち、ペットボトルのさつま島美人は来場者プレゼントで、先着2500人が無条件でもらえた。
左の五合瓶の島乙女はJリーグ公式アプリのチェックインキャンペーンで当選したもの。

実は先週の開幕戦では、チェックインをするのを忘れていた。
昨シーズンも毎試合チェックインしていて半ば習慣化していたはずなのに、それを忘れるなんて、開幕戦ということでどこか緊張していたのかもしれない。
ということで、今節はいつも通りバックスタンドの席を確保すると、まずスマホを操作してチェックインを済ませた。

次にしないといけないのはスタグルの確保。
いったん再入場口から出て、スタジアムを南回りに半周する。
場外のステージでは島唄が演奏されていた。

南北に広い鹿児島は本土に住んでいると、島の文化に触れることは少なかったりするのだけれど、スタジアムで聴けるのはいい。
音に合わせて手を動かしているのは島出身の人なんだろうか。
僕も母方のルーツは奄美の方なので、メロディにどこか懐かしさを覚える。
今季のユニフォームが大島紬なのもポイントが高い。
鹿児島をもっとひとつに、というクラブのスローガンはこんなところにもつながっているんだろう。

たぶん期待の方が大きい

スタグルの並ぶエリアの人出は開幕戦よりはちょっと少な目。
でも目当ての品の出店には列ができていて、5分ほど並んだ。

その間、なんとはなしに周りをうかがってみると、まだシーズン序盤の雰囲気。
開幕戦はドローだったけれど、内容は悪くなかったし、新戦力も光る活躍を見せてくれた。
去年はホームで勝てなくて、なんとなく重い空気が流れていたけど、今年は違うぞ、なんて声が聞こえてきそうだった。

スタグル

この日のスタグルはとろとろなんこつチャーシュー丼(600円)。
自分の中では定番メニューで、今回ももちろんおいしかった。

ため息問題

家を出るころは曇っていて少し肌寒かったけれど、キックオフに合わせるかのように陽が射してきた。
上着がいらないどころか、ユニフォームの下のシャツもいらないぐらいの気温の中、試合は始まった。

キックオフ

鹿児島ユナイテッドは、コーナーキックのセカンドボールを拾われて、相手を褒めるしかないミドルシュートでまたも先制を許した。
ただ、流れはこちらにあった。
エース・米澤選手がボールを自ら奪取すると、そのままゴールを奪った。

後半も終始、ユナイテッドペースで試合が進む。
けれど、クロスバーを叩いたり、ポストに嫌われたり、なかなか勝ち越し点が奪えない。

思わずため息が漏れて、気づいた。
今年のため息は去年とは違う。

コロナ下のスタジアムで個人的に一番問題だと思っているのは、ため息。
大声を出すことは禁止されているので、チャンスを逃したあとのため息は余計に響く。
きっとチャントが歌えていればかき消されるはずのため息がスタジアムを覆う。
手拍子で盛り上げようにも、その気力すらなくなってしまう気がしていた。
J3参入以降で最低順位に終わった去年はそれが顕著だった。

ただ、今年のため息は違う。
去年は右下がりの「あー」だったのに、今年は右上がりの「あー」。
同じため息でも、どこかポジティブな感じがする。

きっと積極的なプレーが多くなったからなんだろう。
戦術的なことは詳しい人に任せるけれど、観ていてストレスを感じるプレーが今年は少ない。
消極的なバックパスや横パスをミスして漏れるため息は右下がりで、積極的にシュートを打ったり、クロスを上げたりしてミスして思わず口をつくため息は右上がりになるんだと思う。
この日、スタジアムで聞いたため息は右上がりのものばかりだった。

だから、なのかはわからないけれど、ゴールが遠くてもスタジアムの雰囲気は盛り上がったまま時間が経過していった。
そうして、後半22分。
ついに勝ち越しゴールが生まれて、チームは今シーズン初勝利を飾った。

観ていなくても伝わるらしい

試合後2

僕は白波スタジアムへはいつも車で行っている。
周辺の駐車場は数が限られているので、駐車場まではだいたい5分ちょっと歩くことになる。

負けたりひどい内容の試合で引き分けたりすると、足が重いのだけれど、勝てば当然、足は軽い。
僕に限った話ではなくて、周りにも同じ面持ちの人たちがたくさんいた。

信号待ちをしていても全然イライラしない。
そうして信号が青に変わったのをたしかめて、横断歩道を渡ると、向こうから歩いてきた男性に声をかけられた。

「何対何だったんですか?」
「2対1でした」
「よかったですね」

すれ違う間の会話だからこれだけ。
でも、どちらが2点だったと言わなかったのに、「よかったですね」と返ってきたということは、きっと言葉以上のことが伝わっていた。

次のホームゲームも楽しみにしていよう。


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