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なぜ接待するのか?
今日の国会は、NTT社長が招致された。総務省の接待問題の一環だ。
接待問題はさまざまなメディアで取り上げられ、いろんな識者、ジャーナリストが意見を出しているが、最も的を射ているのことを言っているのは「ビデオニュース・ドットコム」の神保哲夫さんだろう。
神保さんはさまざまな場所で繰り返し言っているが、接待そのものも問題で、あってはならないことだが、では何故接待をするのかということに疑問を感じなければ、この問題は改善されないということだ。
構造そのものを見ないと、また起きるというのだ。何故東北新社やNTTが総務省を接待する必要があったのかということをまったく触れずに、ただ接待が悪いと言っても仕方がないと言う。首を傾げなければならない。何故接待する必要があったんだ? と……。
それはたしかにそのとおりだ。接待した方だって、まぁひとつ有力者と繋っとこうか、などと安直にやったわけではないだろう。接待した強い「動機」があるわけだ。
神保さんのお話では、この問題では、総務省が放送免許を付与しているというシステムがあるから接待が起きるという。政府が直接放送免許を付与している国は、OECD加盟の37ヶ国で日本とトルコとポーランドだけだという。異常なカタチだということだ。とっても俗な言い方をすると、日本とトルコとポーランドは政府が政権批判する放送局に、「おたくの報道はドが過ぎるから、次回の交付はどうすっかなぁ」と言えるわけだ。他の先進国は、「そんな権限ないだろ!」と突っぱねられる。
たしかに、ただやった行為が悪い悪いと騒ぎ立てるだけでなく、どうしてその悪い行為をするに及んだのかということを考えるのは再発防止の最善策だと思う。神保さんは当たり前のことを言っているにすぎない。他のメディア、ジャーナリストからこの意見が出てこない方が不思議だ。それともぼくが聞き逃しているのだろうか?
ぼくは放送事業には疎いので、神保さんの解説を聞くまでそのことに気付かなかった。しかしこれ、自分の知っている分野に置き換えるとよく分かる。
総務省の問題のちょっと前に、農水省でも接待問題があった。こちらは接待だけでなく、現金受領の罪にも問われている。より生々しいですね。
たしかに接待や収賄は悪い。それ自体を問題視するのは重要だ。しかし、こちらも、なぜそんなことをやったのかということを見なければならない。
大手の業者が、単に与党の政治家だから、大臣だからと金をバラまくということなど、通常はしない。商売人は最も活きるカタチで金をバラまくものだ。
もちろん推測で語るしかない。しかし鶏卵業社が農水大臣にお願いするものとしてパッと思いつくのは、ケージに対するお目こぼしだ。
こう言っても、畜産に意識がない人にはなんのことを言っているのか分からないだろう。ぼくが放送事業の件で癒着構造にパッと考えが及ばなかったように。
日本は飽食の国で、食べ物で不自由することがない。安価で24時間、食材や食品を手に入れることができる。このコロナ渦においてさえ、選り好みしなければ、コンビニや牛丼屋で深夜でもなに不自由なく入手できる。
この人間の天国をカタチ作っている原因の一つが、家畜をエンエン泣かせていることだ。
日本の家畜の環境は世界の中でかなり悪い。劣悪を通り越して、地獄と言ってもいい環境下に置かれた家畜もたくさんいる。
そのひとつが、卵を産ませる「採卵鶏」だ。
スーパーに行けば、卵はとっても安い値段で大量に並んでいる。卵が品切れのスーパーがあったとしたら、話題になるだろう。それくらい、卵はたくさん出回っている。もちろん、捌けるからスーパーも置くのだ。日本は世界有数の卵消費国だ。
その卵を狭い国土で生産するためには、狭いケージが必須となる。売り値が安いのだから、広いスペースも、いい環境も整えられない。劣悪な環境で鶏が参ったら、次のに交換すればいいのだ。
日本に生まれた鶏の多くは、自分の身体の幅以下、というくらい狭いケージで一生を過ごす。このサイズは、他の先進国では使用していないし、禁止している国もある。問題はサイズだけでない。ケージの下が金網になっているのだ。そのギザギザの鉄の格子が、運動不足で弱りに弱った鶏の脚にどれほどの負担をかけていることか。もちろん羽を広げることなどできない。
とても酷い環境だ。先進国では家畜に対しても動物愛護の精神を取り入れているが、日本はその点で遅れている。欧米との取引がしやすくなるSQF(Safe Quality Food)という国際認証規格があるが、それにも動物愛護の項目がある。以前屠場でこれの取得をどうするかという会議に出たとき、その項目に多くの業者が反発した。
これは、でも、その環境を改めない業者を責めるだけでは解決しないと思う。悪しき慣習で平然と続けている業者だっているだろうが、この卵価格に苦しめられてこうせざるを得ないところも多いのだ。コンビニの件でも何度か触れたが、買い手の意識が変わらない限り、提供する側の状況は変われない。買い手が適正価格に納得すれば、しぜん、淘汰の動きに進んでいく。
正直、これは自分の推測だ。しかし、業者が大臣にお願いしたのはこのことではないのか。今、先進国の基準に合わせるような基準でも通されてしまったら、大損失を食らうのだ。ケージを作り替え、そして生産力も落ちるとなる。それも単価据え置きで。廃業に追い込まれる業者もあるだろう。
もしこの推測が当たっていたとしたら、単に今回の収賄を罰しただけでは解決しないはずだ。また次も、メンツを変えて同じ問題が発生する。
総務省の問題もそうだ。この問題ある構造がある限り、同じようなことが起こってしまうことだろう。
でも、コロナでさえ無策の現政権が、こういった構造の是正をするなどできるのだろうか?
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