祭りの消えた年
今年はコロナの影響で、各地のお祭りが開催されなかった。大きいものも、小さいものも。
正直、ぼくの商売のやめ時としてはとてもタイミングがよかっただろう。おそらく今年に関しては、大きく赤字になっていたはずだからだ。
超零細個人商店のぼくの業態は、催事業者と言ってもいいようなものだった。通常の配達で毎月の利益を上げていたが、儲けはかなりの部分を祭りなどイレギュラーな仕事で賄っていたからだ。
それが今年はなかったのだから、売り上げが大きく落ち込んだと思う。
お祭りはとにかく大量注文だ。100キロや150キロといった注文が来る。食品会社であればなんてことない量だろうが、個人商店としては大きな注文だ。普段の配達では500グラムや1キロなんていうのが当たり前なのだ。
そういった一つの祭りの注文では3万から5万くらいの利益になる。週末に3件入ると約10万。それが例えば7月後半から8月まで5週続けば50万。通常の売り上げの他にそれが上乗せされるのだ。それもひとり業者なので、総取りとくる。
祭りはそれこそ1年中だった。春の桜祭り、ゴールデンウィークのバザーやフェス、夏祭り、花火大会、秋の産業祭、暮や年末年始の屋台出店。他にも、その地域独特の祭りがいくつもあった。企業や施設のものまであった。
もちろんこちらが稼げるわけだから、出店している者も相当稼げたはずだ。今、お祭りの出店は実店舗がやっているカタチが圧倒的だ。売り上げににプラスして彼らは、実店舗の宣伝も兼ねられる特典がある。お祭りで店主と話して常連になった客というのも、案外多い。新宿ゴールデン街などは、それを目的として祭りを開いている感もある。
今年そういった接点の場がなかったのは、飲食店としてはつらいところだっただろう。今、飲食店は目に見えない部分でも大打撃を受けている。これもその一つだ。
この調子では、来年もお祭りは期待できない感じだ。余禄や宣伝といった羽をもぎ取られてもがいている個人飲食店を思うと、とても心が痛む。