不透明さを”不幸”と考えたとき、それを引き受けるべきはトグルなのではないか
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ロングテール市場での不祥事
数年前に『かぼちゃの馬車事件』というのがありました。このとき、1億1,200万で想定利回り8%、家賃収入84万のように謳われていましたが、全部が嘘。蓋を開けてみると、入居率2割ぐらいで、家賃保証をしていました。シェアハウスを分譲して、個人投資家によって家賃を保証していたのですが、実際の稼働率は15%(約2割)です。結果、倒産しました。入居者を集めることができず、所有者への賃料の支払いができずに経営破綻です。所有者は銀行への返済ができず、自己破産に至るケースも。年収600万ぐらいの人がシェアハウスを買っていて、そうした人が2億円の借金を背負うような状況です。被害者700名、被害総額は1,000億円ともいわれています。
そうした不祥事に悪用されてしまう危険性が実は、まだ、(赤色の枠部分)こんなに残っているんです。不動産証券化では、しっかりとしたデューデリジェンスをしています。さきほど言ったエンジニアリングレポートなどですね。
これが数十万円、数百万円とかかります。これを定期的に取得し続けないといけません。そうなると、大きくないはない規模の物件を証券化しようと考える人は出てこないでしょう。レポート取得のための毎月の出費で、つねに赤字になるからです。赤字になるので、そうした物件のデューデリジェンスは実施されません。つまり、証券化のプロセスで排除されるようなリスクがロングテールの不動産では不明瞭で不透明なまま。不透明なので『1億1,200万で8%、家賃収入84万』のような情報を信じてしまう人が被害者となるケースがあるわけです。そうして悪用されてしまう。この現状を誤解を恐れずに言葉にするなら、不明確で不透明な投資不動産市場における、”不幸”です。不動産と金融の二つの領域に強みを持つ私たちの目から見るなら、不祥事が起こる原因となる場所の放置であるかのようにも映ります。
適正価格、周辺相場を投資家は重視する
これは、国土交通省が実施した投資家向けのアンケート結果です。投資判断で一番重要だと思うものは何か、という問いがあります。これに対して、もっとも多かったのは、家賃やコストなどのキャッシュフローの見通しと、周辺の取引事例であるとする意見です。これはつまり、家賃設定は適切か、物件価格は適切か、という二点を投資家がもっとも気にしていることの現れです。さきほどの不祥事の情報を見てみると、家賃設定も物件価格もデタラメでした。正しい情報は、どこにあるんだとなるわけです。この状況に国が動いています。
2012年に、勉強会や研究会などが開かれます。投資家が重視する不動産取引の情報については赤字で示され、不動産取引価格情報が開示されるようになりました。民間団体も続きます。REINS(レインズ)です。レインズは、不動産流通機構が運営や管理をしているシステムです。
2008年くらいから、不動産取引のデータベース構築に国土交通省は着手するようなことをしています。不動産市場活性化と健全化のための情報整備ということで、その取り組みは進みます。たとえば、NOIという、キャッシュフローのヒストグラム、アンケート調査などです。そのデータベースのページを閲覧しにいくと...
「データベースの運用は中止しました」
不動産業者が情報を扱うという前提になっているレインズのサイトを見てみましょう。
図面をクリックすると、”チラシ”が表示されます。ここに価格の情報、周辺相場などは掲載されていません。そんな状況のまま迎えた2016年4月です。
不動産取引情報の整備をする民間団体として位置づけられたレインズは『データ検索の課金』をスタート。2019年には、CSVダウンロード機能が廃止されました――。
業界を見渡すと、不動産IDの統合という取り組みもありました。これは「価格や周辺相場など、すべてを載せましょう」という構想です。ところがこの取り組みは、物件の位置を把握することだけに話が向かい、物件価格や周辺相場などの”取引情報”という柱が骨抜きに。その事実は、残念ながら日経新聞の記事にもなりました。
こうなると、不動産取引情報の整備に期待が集まるのは、残された『その他民間事業者』です。
零細・小規模・高齢化が進む、その他民間事業者
その他民間事業者を分解してみると、大別して2つあります。不動産業者と不動産テックに代表されるITサービスです。まず、不動産事業者の現状から。その実態ですが、資本金が5,000万円未満の企業が96%であり、10人未満の従業員で構成された組織が95%を占め、62.4歳という経営者の平均年齢は業種別の最高齢となっています。零細・小規模・高齢化が進む民間事業者に、情報整備が委ねられているわけです。
不動産テックに代表されるITサービスに話を移します。これは、IT資本の投入量を産業別に見たときのグラフです。比較対象先を米国とし、その状況を「1」とします。日本の不動産業界が示した値は、全産業のなかでもっとも低い「0.1」です。こうした現状を知り、動き出すベンチャー企業は少なくありません。しかし目立つのは、B to Cの流通改革です。物件価格や周辺相場といった情報の不明確さ、不透明さは令和のいまも残り続けています。
ここで、もう一度、私たちのビジネス哲学を言わせてください。
物件価格や周辺相場といった情報の不明確さ、不透明さを”不動産業界が対峙する課題”だとと考えたとき、それを引き受けるべきは私たちトグルホールディングスなのではないか。そう考えています。私たちは、私たちを取り巻く世界に対して負債があるがゆえに、社会や組織の課題、問題、不幸について、他の人々より多くの責任を引き受けなければならない。ゆえに、いまの私たち(トグル)が存在するからです。