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ついつい”書けてるつもり”な論点~司法試験・予備試験~

こんにちは、あるいはこんばんは。とげぬき法律事務所弁護士の寺岡です。

さて、標題のとおり。

受験生時代の経験及び講師としての経験を踏まえて。

「よくわかんないけど論証張って事実写しときゃいいんでしょ」
という感覚は特に初学者にはあるかもしれない。私もそうだった。

厳密に言えば、これでもOKな問題もある。
・何の論点か、気が付きにくい(にもかかわらず気が付けた)
・マイナー論点ゆえに周りが覚えていない(にもかかわらず書けた)

というケース。あくまで相対評価なわけだからこれでもおつりがくる。

しかし、これは合否を決める問題ではなく、上位になるための問題である。合否を決めるのは頻出の典型論点。であるからにして、合否を決める頻出の典型論点を「相対的に上位に浮くように書ける」ようになっておかなければならない。

さて、話を戻そう。書けてるつもり、つまり、それっぽい論証とそれっぽい当てはめはあるものの、「それじゃあ点数はあまり上げられないねえ」というものがある。視点としては例えば以下のとおり。

①論証パートにつき、理由付けがないor理由付けが不適切
②論証パートにつき、規範がないor不正確
③当てはめにつき、事実の引用が不正確
④当てはめにつき、当該要件充足性検討のために必要な事実の引用がない
or使うべきでない事実を引用してしまう
⑤当てはめにつき、事実の引用が足りない
⑥当てはめにつき、法的評価がないor足りない
⑦当てはめにつき、規範と対応していない
⑧論証パートと当てはめのバランスが悪い

概ねこんなところだろうか。
①② 事前準備、(理解を前提とした)記憶・暗記。
③ 法曹の作法。意味の変わらないレベルでのコピペ癖をつける。
④ 規範の意味を理解していない証。論理的思考力の問題。行政法は注意。
⑤ 1個引けばいいやと満足するパターン。点が伸びない。
⑥ 規範と事実を近づけるのが評価。ここを聞きたい問題は多い。ここの評価ワードを事前に準備すべきところ。
⑦ 面倒でも常日頃から意識。書かないと身につかない。
⑧ 初学者が陥りがち。論証が長く、当てはめが薄い頭でっかち答案。それが適切なケースもあるから悩ましい。

さて、以上を踏まえて標題。主観だけれども。③、⑦は個々の論点の話とは離れるので割愛。

1 強制/任意処分


① 理由付けは必要かつちゃんと求められている(H30趣旨実感)。現場では妥協も必要だけれども。
② 判例の規範と学説の規範のどちらを意識しているのか不明確なものも多い。
④~⑥ 強制処分性が類型的判断であることの意識がない。
    どう意思の制圧があるのかがわからない
    何の権利侵害を意識しているのかがわからない
    その権利がどの程度重要だと考えたのかわからない
    なぜその捜査をする必要があったのかわからない
   (何で音声が必要?何で顔が必要?何で保存が必要?)
    なぜ相当といえるのか比較がされていない
⑧ たまに論証がいくらなんでも薄すぎるというのは見かけるものの、当てはめが大事という意識がある人は多い。ただ、それでもまだまだ足りない。論証:当てはめ=2:8くらいの心づもりで。

2 原告適格


①② そもそもちゃんと覚えていない。でも覚えてる人もけっこういる。
④~⑥ 処分の名宛人以外の者であることの認定がない。
   (9条2項はいかなる場合でも使うものではない)
    処分の根拠法令の文言が出てこない
    引用すべき個別法が足りない
    個別法の仕組みを自分の言葉で解釈していない
    被侵害利益へ着目した当てはめがない←多い
    「著しい被害を直接的に受けるおそれのある者」が出てこない
   ※書きだしたらキリがないので止めておく

3 その他

とりあえず2つにとどめておこう。他にも
・刑法における共謀共同正犯(例えば、どんな共同遂行の合意が成立したのかの具体的な認定がない)
・会社法における任務懈怠責任(例えば、どの法令遵守義務違反なのかがよくわからない、善管注意義務違反として構成した場合当該取締役が当該会社からどんな任務を委任され、結果、どんな義務に違反したのかがわからない)
などなどいろいろとある。

4 おわりに


こうした論点は、間違え、指摘されてやっと誤りに気が付けるのかもしれない。ゆえに、添削を受け、さらに可能であれば「お墨付き」をもらっておいてほしい(”お墨付き講座”とかないのかな、ないか)。やりっぱなしでは身につかないし、何より「じゃあ本番も大丈夫だな」と前向きな気持ちになれる。
そして、こうした典型論点のお墨付きをひとつ、またひとつと増やしていくと、感覚がつかめてくる。すると、その他の論点についても誰かのお墨付きを得ずとも、自分で自分にお墨付きを与えることができるようになる。ここまできたら合格は近い。

頑張れ受験生。

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