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脳内彼女と結婚しちゃった友達がモテなかった人生を満喫してる話


高校のクラスの男子10人くらいで年2で飲んでます。

決して学生時代から仲良しグループだったわけではありません。大人になって開かれた少人数の飲み会の途中、「あいついまなにしてる?」のノリで誘われて集まったのがきっかけです僕も含め。

だから今ではすっかり打ち解けて仲良しになった宮本くん(仮名)も、当時はクラスで一番浮いてて、ひとりでラノベばっか読んでるようなオタクだったのです。

大人になって再会した宮本くんは誰もが立派だねと褒め讃える優良企業に勤めていました。

恋人の有無を聞いてみると「もう同棲してるよっ♪」と答えた時はみんなビックリしたものですが、「脳内でねっ♪」と続いた時はさらにビックリしました。

宮本くんは大学で完全に自分の非モテを受け入れ、諦め、理想の彼女カエデちゃん(一応これも仮名)を脳内で作り出したのです。

お嬢様で、料理が上手で、くだらない冗談にもクスクス笑ってくれて、優しくて、でも時には厳しく叱ってくれる、、、理想の女性を。

そのお陰で仕事が辛くても頑張れるし、ひとりで買い物をしても意見が言い合えて楽しいのだそう。出張も彼女との旅行になるらしい。圧倒的想像力の賜物です。

これがカエデ、と見せられたスマホの待ち受け画面も、絵でした。別に宮本くんは絵が上手いわけじゃないので、「神のみ」というオタク系漫画の杉本四葉みたいなイラストが、手書きの鉛筆絵で描かれていました。

下手ウマ


そりゃまあ、その瞬間はみんな面食らいました。高校の時だったら酷い言葉をぶつけてしまったかもしれません。でももう、僕らは分別ある大人です。時代が進んで、だいぶオタク趣味も理解されてきています。

「それもひとつの幸せだよなあ」なんて、受け入れたのでした。



それから定期的に飲み会で会うたび僕らは宮本くんに、「宮本、最近カエデちゃんとどう?」と、普通の恋愛みたいに近況報告を聞くようになりました。

まず宮本くんはカエデちゃんと、結婚しました。お洒落なフレンチで、笑顔の宮本くんと、向かいに置かれたスマホに映るカエデちゃんと、婚姻届と、指輪と1人分の食事が写った写真を見せてくれました。

カエデちゃんのためのオリジナルラブソングも作ったようです。これは流石に恥ずかしいと聴かせてもらえませんでした。

脳内子供はいつか娘が生まれる予定らしいです。でもまだまだ、ふたりきりの新婚生活を満喫したいそう。

浮気とか、別の脳内彼女は考えられないそうです。生涯一人の脳内彼女を愛したいそう。

ある時カエデちゃんを見せてもらったら、いつもの鉛筆絵ではなく、めちゃくちゃ美麗でキュートで正統派なイラストに変わっていました。

僕もまずまずオタクなので気づきました。

「これって◯◯◯◯◯の表紙描いてた人?」

「そうそう、××××先生。大好きな絵師さんなんだよね〜!」


なんと宮本くんは十何万円の依頼料を払って大人気の売れっ子イラストレーターさんにカエデちゃんを描いてもらっていたのです!!!


「これからAIやVRの技術が進めばさあ、本当に等身大のカエデちゃんと、本当に喋ったり触れ合ったり、本当に色々できるようになると思うんだよねっ。未来が楽しみで仕方ないよ。1秒でも長く生きたい」


そう語る宮本くんの瞳は輝いていて、僕らも、10年後20年後、本当にそのような未来がきてもおかしくないかもな、とテクノロジーの発展を肌で感じるのでした。



ただ僕は、まだまだ修行が足りません。




「キミは彼女と別れてもう数年かぁ。また良いひと見つけなきゃねっ♪」



宮本に励まされた時は「人生の先輩ぶってんじゃね〜〜〜〜〜ッ!」ってつっこみそうになっちゃったよね、、、笑



いやいや宮本は既婚者なんだ妻帯者なんだ旦那様なんだと思い直して、「そうだよなあ」とか答えたけどね、、、笑




宮本、多様性の時代に、器が小さくてごめんよ!!!!!




10年後も相手がいなかったら、僕もお前についてくよ。




その時は色々と、コツを教えておくれ!!!




そして一緒に、ダブルデートしよう!!




未来のダブルデート




おわり



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トゲ(弱者エッセイ)
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