お父さんが飲み物のオマケを集め出したら変質者になっちゃった話

僕が子どもの頃、スターウォーズのエピソード１が公開されました。その時に流行ったオマケに、ボトルキャップというものがあります。

ボトルキャップとはペプシコーラのオマケで、ペットボトル１本に１つついてきます。

こんな感じで全４０種類あって、

こんな感じの中身がわからない袋に入っていたので完全ランダムの販売形式をとっておりました。

それに一番食いついたのは親父でした。親父は思春期にスターウォーズエピソード４にドハマりしていたのです。

なんせ僕がボトルキャップの広告を見せてあげたら、

「うわー、、、。知りたくなかったな、、、」

と言いましたからね。なんで知りたくないのかよくわからなかったんですけど、その日にペプシコーラ１０本買ってきた親父を見てすぐに悟りました。お父さん全種類集める気だ、と。

それから毎日コーラ生活でした。晩御飯の食卓から麦茶が消え、朝もオヤツもコーラ。家族全員ゲフゲフいってました笑　母親がブチギレ、僕や弟は無理して飲まなくてもよくなりましたが。

親父はあっという間に３ｋｇ太りました笑　それでも集まったのは全４０種類中２５種類くらい。ダブりもちょこちょこ出てきました。ここから親父が狂い始めます。

ある日、僕は親父から、開封済みのボトルキャップの袋を渡されました。

「その中にボトルキャップを１つ入れて、パパに渡してくれ」

言われた通りにすると、親父は真剣な顔で袋の上からボトルキャップを執拗に触り始め、

「これは背丈が小さい。小さいからR2D2かヨーダのどちらか。顔の横に耳のようなものがある。ヨーダに違いない！」

と麻雀を盲牌するように正解してみせたのです。

「右足と左足に隙間がない。ドレスを着たアミダラ女王、ローブを着た年老いたオビワンケノービ、ダースシディアスの可能性。頭に妙な突起。これはアミダラ女王のBタイプだ！」

続けて正解。驚きのあまり、僕は言葉が出ませんでした。

「凄いだろ。ここで触ったことあるやつは、ダブりだから買わない。ここで触ったことのないやつを買っていけば、全種類揃うんだ！！」

狂ってる、、、。

それで親父は母親と毎日寝る前三十分の「ボトルキャップ・盲牌トレーニング」を続けた甲斐あって、とうとう３９種類まで集めることに成功しました。残りは１種、Ｃ３ＰＯです。

あと１種！

これがなかなか見つかりませんでした。親父がコンビニで触ってもスーパーで触ってもこれだ！というのが見つからず、妥協して買っても出てくるのはメイスウィンドウとか、タスケンレイダーとかダブりばっか。

僕の友達がＣ３ＰＯを持ってたので、「ダブりのボトルキャップ１０個とかなら交換してくれると思うよ」と提案すると、「それじゃ意味がない。最後も自分で触って見つけたい」と断られてしまいました。生まれて初めて厄介なキモオタに出会った瞬間でした。

来る日も来る日もスーパーへ。親父ひとりでボトルキャップを触りまくると不審者がられるので、『子どもが欲しがっている』というテイで僕もついてゆきます。

お店にあったペプシコーラ十数本を、血走った目で触りまくるお父さん。

「ちくしょう、ネエーッ！」

もはや暴言も吐くようになっていたお父さん。

そんなお父さんの目に止まったのは、

綺麗めな感じのお母さんと、小学校低学年の男の子。肉や野菜が入っているカートのカゴには、ペプシコーラも突き刺さっておりました。

「すみません、ちょっと欲しいボトルキャップがあって、、、」

声をかけた親父を見て、マジか、と思いました。

「そちらのコーラのオマケ、触らせてもらっていいですか？」

変態ボトルキャップおじさんの誕生です、、、！

驚く綺麗めな感じのお母さん。圧倒されながら、「ど、どうぞ、、、」

「ありがとうございます！」とすぐさま飛びつきベタベタ触り出す親父。ん？　ん？　と、顔つきが変わり始める。

「Ｃ３ＰＯだッッッッッッッッッッ！」

親父はマジで、絶叫しました。

「Ｃ３ＰＯだッッッッッッッッッッ！　これが私の欲しいやつですっ！譲ってくれませんかっ？」

「え、え、あ、、、」ドギマギするお母さんを無視して、

「ボクー？　なんか好きなスターウォーズのキャラいる？」

「ダースモール！」

「ダースモール、あったよ！　確かね、このコーラだったと思う、、、」

なんと親父は盲牌で、既にダースモールを見つけていたのでした。

「はい。これ、９９%ダースモールだから。交換しよ？ねっ？」

「オジサンすごーい！！！！」

こうして見知らぬ親子からペプシコーラを奪い取るように交換した親父は家に帰ってドキドキしながら袋を開け、、、

「Ｃ３ＰＯだッッッッッッッッッッ！」

「俺の力で全種類集めたッッッッッ！ヤッタッッッ！俺のＣ３ＰＯだッッッ！！！！」

と狂乱の舞を踊りまくったのでした。

親父よかったね。

埃はかぶっているけれど、第２弾も含めて２５年経った今もなお、ボトルキャップは飾られています。