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解答案と解説の作成の指針

 私が東大現代文の入試問題の解答案と解説を著すにあたり、指針としていることについて述べる。

 まずは解答案について。

1.基本的に本文に基づいて解釈し、解答にはなるべく本文中の言葉を反映させること。
 主観を折りこまないことは国語という教科の基本である。また、本文中の言葉を使うことは単純で簡単なようだが、本文の論理の筋道を精確に読解できていることを要し、そのアピールでもある。ただし、あまりに著者の独特の言葉遣いと思われるものは適宜言いかえることもある。

2.「なぜか/なぜそう言えるのか」と問う設問に対しては「から」で締めくくり、「どういうことか」という問いに対しては「ということ」で終えること。
 「どういうことか」に対して文の言い切りで終えてもよいとする論者もいるが、私はその立場をとらない。
 なお、「なぜ」「どういうことか」以外の問い方もときどき見られるが、その場合はそれに合った答え方をする。

3.なるべくシンプルで平易な表現とすること。
 一読して意味が理解できなければ良い文といえない。良い文でなければ良い答案といえないと思う。
 なるべく多くの要素を制約された字数内に盛りこもうとすれば、つい修飾関係が複雑な読みにくい文をつくってしまいがちだが、戒めるべきことだ。

4.二行問題の字数は65字±3字を目安とすること。
 客観的な根拠はないが、解答用紙のスペースを考えると、これくらいが読みとりやすい字を書ける限度かと考える。
 もっとも、一般的に漢字よりも仮名の方が、仮名よりも句読点の方が場所をとらないので、一概に字数によって限度を決めるのは実態に即していないが、どこかで線引をしないといけないため、この字数とする。

5.なるべく解答だけを読んで意味がわかる文にすること。
 問題文もあわせて読まなければ理解できない文は独立した文といえない。ただし、字数の制限から、限界もあり、やむを得ず問題文中の独特の言葉を使用し、その意味では問題文に依存する解答になることもあるかもしれない。

6.「どういうことか」という説明問題については、言いかえではなく、文脈に即して論理関係を明白にすることを重視すること。
 「傍線部はどういうことか説明せよ」という設問に対しては、その文を要素に分解し、それぞれの要素を文中の別の言葉で言いかえれば足りるとする解説もあるようだが、私はその立場をとらない。
 必要なことは、その傍線部が、問題文全体の文脈のなかでどのような位置づけにあるのかを意識し、その文で述べられていることの根拠や、問題文中の他の文や言葉との論理関係をなるべく具体的に浮かび上がらせることだと考える。(もっとも、そうしてつくった解答例がたまたま傍線部の各要素の言いかえと変わらないものになっていることもありうる)

 次に解説について

1.根拠となる部分と理由を明確に示すこと。
 一から解き方を説明するというよりは、私のつくった解答案の根拠を示すものといった方が的確かもしれない。
 結局のところ、現代文の解法は、読解とひらめきに始まり、問題文との照合による修正と確認で終わるものと思う。

追記
 東大は入試問題の解答をほとんど公開していない。したがって、上記に述べたことは私の仮説にすぎない。異論も多々あろうかと思う。さまざまな方向からご意見を賜れれば幸甚である。
 また、私が公開している解答例が、ここで述べた指針から外れているというご指摘や、解説が不十分というご指摘も承れれば幸いである。

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