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【台本】「アオハル少女の消えた日記帳」(男2女2)

〈時間〉10分.

20年前に消えた少女の日記が、ビジュアル系バンドの歌詞に!?
秘密の黒歴史がそのまま全国放送され 悶え苦しむアラサー女性ひとり…笑

アドリブ大歓迎!
ボーカルの歌は自由にメロディーつけてください♪
(※Vo.と司会者は兼役 可)

〈登場人物〉
♀希美  本条希美(14/34)…中学2年生/弁護士、夢見がちから論理的へ
♀淳子  本条淳子(30代/50代)…希美の母、肝っ玉母ちゃん
♂保   本条保(50代)…希美の父、昭和の酔っ払い父ちゃん
♂司会者 紅白歌合戦の司会者(※Vo.と兼役 可)
♂Vo.   ビジュアル系バンドのボーカル(※司会者と兼役 可)

※商用利用時は、ご連絡お願いします
※台本の無断改変・無断転載などはご遠慮ください

〈本文〉
―――希美の部屋
◯ベッドに寝転がり日記を書く中学2年生の希美(14)

希美(M)「(日記)誰よりも早く登校する彼と挨拶を交わすため、
      朝7時の教室。『おはよう』の君の声を窓際の席で待った。
      大人になったらきっと このありふれた風景を
      思い出すんだろうな…」

淳子  (ドアを開けて)希美!
希美  お母さん!?
    ノックしてっていつも言ってるじゃん!
淳子  明日も朝 早いんでしょ!
    さっさと寝なさい!(部屋を出ていく)

希美(M)中学2年生の私は、毎晩 寝る前に日記をつけていた。
     学校で起こった小さな奇跡。甘酸っぱい恋の行方。
     青春を彩(いろど)るフレーズの数々は、
     この世界に私が存在する たった一つの証だった。
     それなのに ある日。
     私の日記帳は何者かの手によって、消え去ってしまった…

―――実家のリビング(20年後)
◯リビングで父の保と母の淳子が「紅白歌合戦」を見ている
◯コタツに入る希美(34)の胸に弁護士バッジ

希美  あー疲れた
淳子  おかえり希美。
    大晦日にまで仕事があるの?
希美  うん
保   働いてばっかいないで そろそろ結婚のこと考えたらどうだ?
    良い人いないのか?
希美  マリハラ
保   マリハラ? 何だそれは?
希美  マリッジハラスメント。
    未婚の人に対して結婚してない事で 無神経な言動をする行為
保   やれやれ。何でもかんでもハラスメントって
    窮屈な世の中になってしまったな
希美  悪いのは加害者の方でしょ
保   父親にそんな言葉を使うなよ。しかも年の瀬に
淳子  まさか希美が弁護士になるなんてね
保   希美はてっきりピアニストになると思っていたよ
希美  (呟き)ピアノなんて大きらい…
淳子  あ、そういえば20年前に空き巣あったじゃない?
希美  …覚えてない
淳子  そんなわけないでしょ。
    あんた「青春が盗まれた」って 大騒ぎしたんだから
保   そーそー! そのくせ何を泥棒に盗まれたのか
    一切話そうとしないもんだから 警察も困ってたぞ
希美  (呟き)言えるわけないじゃん。
    「日記に何を書いたのか」とか 根掘り葉掘り聞かれたら
    どうするのよ…
淳子  あの犯人、今からでも訴えられないの?
希美  無理だよ。
    『公訴』も『民事』も時効が成立してるんだから
保   公訴? 民事? なんか違うのか?
希美  それは…いいや、めんどくさい。
    どうせ盗まれたのは安物の指輪やネックレス
    今さらどうでも良いでしょ
保   おい、なんてこと言うんだ。
    母さんにとったら命より大事な物だぞ
淳子  あーそうねー…
保   母さん?
    もしかして ワシらの思い出を忘れたのか?
淳子  そ、そんなわけないでしょー
保   (淳子に)…ワシの誕生日 覚えているか?
淳子  あ、当たり前でしょ! テレビ、テレビ。
    赤組 白組 どっちが勝つかなー
保   母さん!? そんなの白に決まってんだろ!
希美  アホくさ
司会者(テレビの声)それでは次は、今年念願のブレイクを果たした
    4人組ロックバンド『アオハル少女ノゾミ』で『ダイアリー』
    どうぞ!
保   ノゾミって、お前と同じ名前だな
希美  『アオハル少女』とか、いかにもイタそうなバンド

◯テレビに映る4人組ビジュアル系バンド

Vo.(歌)「誰よりも早く登校する彼と挨拶を交わすため、朝7時の教室。
     『おはよう』の君の声を窓際の席で待った〜」
希美  んん?
Vo.(歌)「大人になったら、きっとこのありふれた風景を
     思い出すんだろうな〜」
希美  これって…
Vo.(歌)「『長谷川祐樹(はせがわ ゆうき)』と書いた消しゴム。
     小さくなるにつれて、心臓の鼓動が大きく跳ねていく〜」
希美  (大声)犯人いたー!?
淳子  ちょっと希美!? どうしたのよ、いきなり大声だして。
    近所迷惑よ
保   しかもなんだ、犯人って?
希美  あ、うう、ううん…なんでもない
Vo.(歌)「早朝の音楽室。目が合う喜び。
     彼の指揮に合わせて私の指はワルツを舞う〜」
希美  (混乱)ぜ、ぜんぶ私が日記に書いたやつ
    しかも一言一句そのまま
保   …ダサいな
希美  え?
淳子  そうね、ダサいわね
希美  ダサい…の?
保   希美の言う通りイタいバンドだな。
    こんな奴らが紅白に出て良いのか?
希美  (顔が真っ赤)警察…
保   警察?
希美  コイツらが20年前にウチに入った
    空き巣の可能性があるから。今すぐ警察に電話して!
淳子  なんでそんなこと分かるのよ?
希美  それは…
淳子  それに時効が成立してるって、あんたが言ったのよ
希美  そうだけど…(独り言)中学生が書くポエム同然の日記が
    メロディーにのって全国に流れるとか 死ぬ
Vo.(歌)「苦しくて息ができない。彼と視線が交わるたびに〜」
淳子と保「『彼と視線が交わるたびに〜』」
希美  輪唱(りんしょう)しないで!
    ストーカー扱いされて学級裁判にかけられたの!
    それが悔しくて弁護士になったんだから
淳子  学級裁判?
    さっきから何を訳の分からないこと言ってんのよ
希美  だからー…(言えない)
保   鈍いな、母さんはー。推しってやつだよ
淳子  あら、やだ。あんた
    『アオハル少女ノゾミ』の隠れオタだったの?
希美  だったら殺して。
    どこ…リモコンどこ!?
保   ここ(リモコンをマイクに)
希美  リモコンはマイクじゃねー!
Vo.(歌)「神様、お願いだから…」
淳子と保「『お願いだからー』」
希美  待って、確かその続きは…!?
Vo.(歌)「希美のビッグラブを…」
淳子と保「『ビッグラブをー』」
希美  あああああああああああああああああ
Vo.(歌)「どうか、許して、ほしい〜」
淳子と保「『どうか、許して、ほしい〜』」
希美  いやー!!!!!

(了)

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