多腕キャラがピコピコするゲーム風gifを作っていたらインド人の生活の一端を垣間見ました
アニメーションgifを作りました。
大変だった割に誰にも制作意図が伝わらない作品になってしまったので、読んだ人にだけでも意図が伝わればいいなと思って書きました。
反省も含め、以下に制作経緯や考えていたことを書き残しておきます。
なんなのか
まず、これはLSIゲーム(ゲーム&ウォッチとか、たまごっちとか)の表示のされ方や、古いデジタル時計の液晶の感じを出したくて描いたもの。
モチーフとして、キャラクターは多腕で、腕がチカチカ動くようなものが見栄えよいだろうと思ったので、多腕のキャラの元ネタになるようなものを探し、梵天に行き着いた。
梵天とは、雑に説明すると仏教の神様で、仏法の守護神。天界の中でも最高位に存在するらしい。サンスクリット語を漢訳した梵字は、梵天が作ったから梵字。
で、この神様は普通に人の形なのだが、密教においては顔が四つ、腕が二対で表される。これはヒンドゥー教のブラフマー(宇宙万物創造の神)の姿が取り入れられたからだと言われている。
多腕の神様などは他にもいるが、「(宗教の違いから)見た目が異なり腕が2本の場合と4本の場合がある」というのが、腕がチカチカ表示されることとマッチした気がしたので梵天を選んだ。
「顔が4つ」は今回うまく表現できなかったので、一対の目で顔だとして描いた。髪についてる点々が目のデフォルメ。
そして、絵は梵天で決定したが、古いデジタル時計、それも腕時計風の表示の部分はどうしようかなと考え、梵天が梵字を作ったんだから、腕時計の表示も梵字で表したら面白いぞと思って考え始めた。
デジタル梵字で面白くするには
時刻に使う数字部分はすぐに見つかり、梵字に置き換えることができた。また、サンスクリット語の曜日を書いているサイトもすぐに見つかった。
これだけで終わってはつまらないと思い、サンスクリット語で表されるカレンダーを表記させようと思った。これが間違いだった。
ヒンドゥー暦というものがある。現在でも若干形を変えて使われていて、インドの伝統的なお祭りをする際の日付を、ヒンドゥー暦のカレンダーで見るようだ。
この暦はパンチャングと呼ばれる。
当然、西暦とは違う表記になるので、変わってて面白いだろうと思い、これをデジタル腕時計に表示させるという目標で調べ始めた。
デジタル腕時計なら、年月日が表示されていれば相当親切だろう。パンチャングにおいての年月日をデジタルっぽく描いて配置すれば完成じゃん!
そしてここから、絵の作業ではなくパンチャングを調べることになる。
とりあえず作業してるその日で表記してみることにした。
今は7月だから……Mithuna?これをサンスクリット語に直せばいいわけね?
でも隣のĀṣāḍhaってなんだ?季節のGrīṣmaってこれヒンドゥー暦だと必須だったりする?日は数字で表していいのか?
つーか6-7月と7-8月で分かれてんじゃん。そうか、当時のカレンダーを今の暦に直してるんだから同じとはいかないよな……
めんどくさ。なんか一発で変換するサイトとかないの?と思って検索したらあった。
海外の占いのサイト?多分。
???
……専門的なことだから分からないし、適当だけど、自分なりに納得するまで調べました。
Hey,Siri.ヒンドゥー暦で今日は?
「はい。主なヒンドゥー暦はシャカ暦とヴィクラマ暦です。今回はシャカ暦で考えます。
一ヶ月間は「新月から満月」の白分(シュクラ・パクシャ)の期間と、「満月から新月」の黒分(クリシュナ・パクシャ)の期間で分けられます。
「満月から満月」で一ヶ月とする場合はアマーンタ法、「新月から新月」で一ヶ月とするならプールニマーンタ法と呼びます。これは、アマーンタ法を選びます。
一ヶ月間には名前がつけられていて、今回はアマーンタ月の名前を使います。
そして、一日間はアマーンタ月を30等分した時間とされます。この一日間をティティと呼びます。そして、ティティにもそれぞれ名前があります!」
苦しい。こんなことになるとは思ってなかった。想像力が足りなかった。今書いたのも付け焼刃知識だから全然間違ってるかも。こんなのインド人把握してんの?本当に?
参考にしたサイト。ひろちか先生、ありがとうございます。
これを読めば分かりますが、現地では更にややこしいことになっているようです。
あ、あと年にも名前があります。サンヴァツァラと呼ばれ、60年で一周します。
ご丁寧に今年の名前が太字になっていますね。
自分は元号をよく忘れてしまい、「あれ、今年って令和何年だっけ」と思ってググるのですが、インドの方も「あれ、今年のサンヴァツァラなんだっけ」と思ってググってるんでしょうか。
つまりこういうことです……
この日は、シャカ暦でサンヴァツァラはシュバクリタ、アマーンタ月はシュラーヴァナで、ティティはシュクラ・パクシャのドゥウィティヤでした。
この時点で、力尽きていました。
デジタル風の表記は、何年何月何日がいいか迷ったのですが、自分の誕生日にしました。なんとなく。バフダーニャのヴァイサーカーでティティはシュクラ・パクシャでエカダシでした。
該当するサンスクリット語を調べて書き写したときには、もう梵字の存在を忘れていました。というか、憶えていたとしても翻訳は無理だったでしょうけど……
左下に十二宮の白羊宮も入れました。左上は月。30等分で表示されているテイ。
右下には日本時間表記を表すJPN。普通、世界時間に対応してても常に国の名前が表示されてることってないんだけど、もう思いつかなかった。苦し紛れ。いっぱいいっぱい。
梵字ではなく、デーヴァナーガリー(インドの文字)でいくことにしました。
そして表示の枠も考えると、この楕円型の画面は失敗でした。整頓されてるとは言えないレイアウトになってしまったし、基盤を考えるとリアルじゃない。
ヒンドゥー暦が難しかったこと、梵字にしてないから梵天との繋がりが薄くなったこと、そしてとっ散らかった表示にガックリしながらも、LSIゲーム風のチカチカを作るためにレイヤー分けしてaviutlにぶち込んだのです。
おわり
デジタルとはいえ、こういう液晶の表示は1→0でパッといきなりは消えない。少し余韻を残してフワッと消える。aviutl上では、透明度80→100でフワッと消える感を再現した。
表示されたときに光が遮られて液晶に影を落としていることと、表示されてないときも「ここに表示されるんだなー」と分かるシルエットがうっすら見えるのがフェチポイントです。
最後に加工をかけて完成。加工は、VHS風のアセットをいじったもの。助かりました。
加工前の方は「手元にあって、実際に見たらこんな感じ」という色味で描いたけど、加工してみたら液晶の緑が強調されて、なんの絵なのかグッと分かりやすくなった印象でした。
ちょっとゲームボーイ風になってるのでリアルではないけど、まあ元々分かりづらいフェチだし。表現も多少デフォルメされてるぐらいが丁度いいでしょう。
以上が制作の経緯と完成まで、そして反省でした。
キャラクターと通常の時計表示で止めておけばよかったのに、悪い癖でついやりすぎ・難しくしすぎてしまったのが伝わらなくなった敗因です。やりすぎないようにしようね。
多分描いている時間より調べてる時間の方が長かったんじゃないかな……それか同じくらい……それも反省。
また、改めて説明できるように調べなおしてnote書いたからこれにも時間がかかった。このgifのために凄いリソースをつぎ込んだ。贅沢な子だよ。
読んでくださった方だけでも、この作品の面白さの片鱗が伝われば幸いです。
ありがとうございました。